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投稿者: 倭寇三勇士 @ tpro2.tky.threewebnet.or.jp on 97/9/28 07:31:36

In Reply to: サターンの金さん 第25回 朝の部

posted by 倭寇三勇士 @ tpro2.tky.threewebnet.or.jp on 97/9/28 07:30:22

第25回

−相模の国、霊峰大山−
 人里を離れ、木々が鬱蒼と茂る山の中腹辺りに、小さな薬師堂が建立されている。かつては修験者達が霊峰を訪れる際に寝泊まりする場所であったようだが、今では訪れる人もなく寂れている。茅葺きの屋根は傾き、入り口の障子戸はボロボロに破れ、人が住んでいる気配はない。いや、むしろ人の目を避けるかのような有様といった方がいいだろうか。
日がとっぷりと暮れると、月のない夜には、そのあばら屋のあたりは一面漆黒の闇となる。回りは静まり返り、時々聞こえるのは、梟の鳴き声ぐらいのものだ。
そんな寂しいあばら屋に、一人の武士らしき男が近づいてくる。松明で明かりをとっているが、お供の者は居ないようだ。中には入れそうもないあばら屋まで来ると、その侍は突然地面を掘りはじめた。すると、地面から隠し扉が現れたではないか。その侍は、回りに人の気配がないことを確認すると、扉を開け中に入っていった。
 中には地下に続く階段があった。その階段は薄暗いうえに、狭く長い。ようやく階段を下り終えると、あばら屋の外見からは想像もつかない強大な空間が出現した。そして、その中にひとりの山伏と思しき男が、強大な数珠を手に、ごうごうと焚かれる火の前でなにやら呻きながら、一心不乱に祈りを捧げている。年のくらいなら五十前後であろうか。
「申し訳ございません。私の力及ばず、砂東は入閣に失敗いたしました。」その侍は詫びた。
「ああ、わかっている。問題はない、所詮あの男には大した期待をしていない。ただ少しでも時間稼ぎをしてくれればそれでよいのだ。」山伏はそう言うと、再びお祈りをはじめた。
「かつての同志達も集結しつつあります。そろそろ頃合いでは?」
「急いては事をし損じる。あせるでない。」
「わかりました。」その侍はあっさりと引き下がった。
「我らの野望のためにはどうしても3つのギヤマンの鐘が必要だ。今より300年の昔、宣教師ペドロが自分の発明したモノの威力に驚き、それを封印するため秘密を3つの鐘に納め、日本のどこかに隠したと言われる代物だ。そのうち既にムーの鐘は、我が手中にある。残るヒュペルボレアの鐘、レムリアの鐘を探し出すことが先決ではないのか。」
「はっ、我が手の者の報告に寄れば、その鐘の所在を知る男が、今、長崎におるとのことでございます。」
「うむ、早速、その男を捕まえ、在処を吐かせるのだ。」
「承知いたしました。」