小説フルハウス―発動編―(NHK教育のとは無関係)



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投稿者: 高山 比呂 @ ppp-y050.peanet.ne.jp on 97/9/20 16:55:12

まずは宣伝

第3回メッセージ文コンクール
9月25日(木):作品募集
9月26日(金):投票
9月27日(土):結果発表
作品のジャンルは何でもいいです。小説、評論、読書感想文、詩、手紙、ダジャレ他どんなものでもいいです。文量も全然関係ありません。中に何も書かないでタイトルに「これが僕の心です。」とかいうのもありです。どんどん参加して下さい。

また、今回から部門賞を設けました。
1.お笑い賞
2.感動賞
3.総合賞
1か2を狙うってのもありだし、全部門制覇っていうのもありです。投票時には一人三票って事になります。

緊急募集!!
25日(木)に「第3回メッセージ文コンークル」のタイトルメッセージを書いてくれる方募集です。俺は午前中からずっと忙しくて、夜になるまでここにこれません。ですから、どなたか出品者用に作っといていただけませんか?虫がいい話をするなと言われそうですが、そこをなんとかお願いします。

作品は↓こんなのでもいいです

ここから本編が始まります。

 その日の夜、「細井尚子」と名乗った女は新宿でタクシーを30分以上待ち続けていた。
(っもう、いつ来るの?)
 遠くに、頭にプレートを乗せている車が見えた。
(はあ、やっと来た)
 女はおもむろに右手を上げた。
 しかし、タクシーは女の50メートル位手前で止まった。
 ガラスの建物から飛び出してきた男が、手を上げて止めてしまったのだ。
(なによ、あいつ。私のが先だったんだからね)
 男を乗せたタクシーは、走り出すとすぐに、女の前に止まった。
(え、なに?)
「あの、何処まで行くんですか?」
 後部座席のドアが開くと、中から男の声が聞こえてきた。
「え、あ、目黒までです」
「目黒ですか、じゃあ俺と同じ方向だ。よかったら相乗りしていきません?君の方が先に待っていたようだし」
「あ、でも・・・」
「え、目黒ってお客さん?」
 タクシーの運転手が男に、女に聞こえないくらい小声で話し掛けてきた。
「いいんだ、・・・それで、ついでに話合わせていただけません?釣りは要りませんから・・・」
 男も同じような声量でこう返した。
「お客さん、乗っちゃった方がいいと思いますよ。この時間帯、捕まりにくいですから」
 タクシーの運転手は、男に協力的だった。
「そ、そうですか?」
「そうなんですよ、それに相乗りにした方が料金安くつきますよ。普段なら収入減るから絶対やらねえけど、あんたみたいなかわいい嬢ちゃんなら、喜んで乗せますよ」
「じゃ、じゃあ、お言葉に甘えさせていただきます」
 そう言ってタクシーに乗りこむ女、だが男の顔を見た瞬間、外に飛び出した。
「どうしたの?」
「あなた、昼間の・・・」
「え、何のこと?」
「“何のこと?”じゃないわよ。あなた昼間トイレの中で、私相手に、お見合い始めためたでしょ!!」
 男の顔は昼間、鏡越しに目をあわせた顔そのものだったのだ。
「そんなことしてないよ、第一、初対面じゃない」
「初対面?」
「そ、初対面」
「ふざけないでよ、人にあんな事しといて顔も覚えてないって言うの?」
「あんな事とか言われても、知らないもんは知らないよ」
「名前は思い出せないけど、・・・確か、あなたの名字“日高”でしょ」
「え、何で知ってんの?俺ってそんなに有名人だったっけ?・・・あ、わかった。君、俺のファンでしょ?」
「ちがうわよ、あなたが昼間私に自己紹介したんでしょ」
「そんなのしてないって、本当に」
「もお〜、いいです!!」
 そう言って女はタクシーの進行方向と同じ方向に歩き出した。
「ねえ運転手さん、あの女の後つけてくれません?」
「兄ちゃん、すきもんだねぇ〜」
 タクシーは、女の横を歩きの速度にあわせて並走した。運ちゃん半クラ大変そう。
「ねえ、乗ってかないの?」
「あなたとは一緒に乗りません」
「そんなこといわないでさ〜」
「嫌ったら嫌です」
「昼間の事ってやつ、多分なんかの誤解だよ」
「誤解じゃありません。あなたでした」
「あ、そうそうよく言うじゃない、世の中には自分と同じ顔の奴が3人いるって。多分君は、そのうちの一人とあったんだよ」
「それでも同じ顔で同じ名字って事があるもんですか」
「じゃ、そいつが俺の名前語ったんだろ」
「そんなはずないでしょ」
「いや、たぶんそうだよ。なんかで俺の事知って、同じ顔だから、こいつの名前使っちゃえっていって使ったんだよ」
「じゃ、本当にあなたじゃないっていうのね」
「そうだよ」
「う〜ん、いまいち信じられないけど・・・。ま、いいわ、わたしもタクシー乗るわ」
 女は歩くのをやめた。
 タクシーは走るのをやめた。
「ただし、条件が二つあるわ」
「え?」
「まずひとつ、私が運転手に言う、行き先を絶対に聞かないこと」
「ま、そのくらいのことなら・・・」
「ふたつ、目隠しをすること」
「え、め、目隠し?」
「そう目隠し」
「な、なんで目隠しなんかしなくちゃならないんだ?」
「だって、私の家覚えられて、ストーカーされるのなんて嫌だもの」
「そ、そんなことしないよ。それに、それなら行き先聞かないだけでいいじゃないの?」
「だめです。行き先わからなくても、道で覚える可能性があるでしょ」
「そりゃそうだけど、俺・・・」
 女は男が全て言い終わる前に、さっき止まった時に開いた後部座席のドアからタクシーに乗りこんだ。
「運転手さん、ちょっと待っててね」
 女はその手に持っていたバックの中から睡眠用のアイマスクを取り出した。
「じゃ、これ付けてくれる?」
「あ、ああ」
 男は女に従いそれを付けた。この時点から男の目は、黒以外何も見えていない。
「じゃ、見えてないかどうかのテスト。わたしが右手の指を何本立ててるか言ってみて」
 女はOKサインをしていた。
「わからないよ」
「いいから答えなさい」
「じゃ、3本」
(わかんないからこれでいいや)
「正解よ。あなた、見えてるのね」
(え、当たっちゃったの?)
「いや、見えてないって。偶然だよ、偶然」
「じゃ、もういっかいやるわよ。これ何本?」
「に、2本かな?」
(当たらないでくれよお願いだから)
 女はチョキをした。
「やっぱり見えてる。・・・それじゃあ」
「今度も偶然だって、偶然」
(ちくしょ〜、なんで俺こんな時に運がいいんだよ)
 女はバックの中から手ぬぐいを取り出し、横に二つ折りして、アイマスクの上からきつく締め上げた。
「い、いたいよ」
「じゃ、気を取り直してもう一回やるわよ、何本?」
「1本〜♪」
(3度目の正直だ。もう当たらないだろ)
 女は中指を一本立てていた。
「あなた完璧に見えてるのね。調子に乗っちゃって。・・・それなら」
「全然見えてないってば」
(また当たっちゃったの?二度ある事は三度あるってやつかよ)
 女はバックの中からガムテープを出して、アイマスク、手ぬぐいの上からきつくきつく何重にもまわした。髪の毛も当然張り付いてしまっている。
「い、いたいって」
(この野郎、美人だからってやりたいほうだいかよ)
「これが最後よ、もし当たったらわたし降りるわ、じゃこれ何本?」
「れ、れ、0本」
(さすがに一本も上げないなんてことないだろ)
 女のげんこつが男の顔にヒットした。
「もういいです」
 女はドアノブに手をかけた。
「いって〜。ちょっと待ってよ。ほんと偶然だって偶然。だって6/1の確率だろ。そりゃ当たるよ。・・・そうだ、今度両手でやってくんない?」
「わかったわ、ただし一回だけよ。これ何本?」
「六本木、な〜んちゃって」
 女が立てた指の数は・・・
 左手4本。
 右手2本。
 計6本
「あなた、わたしのこと馬鹿にしてるんでしょ」
 女はドアを開けた。
「え〜、また当たっちゃったの〜。もうどうなってるんだよ俺は!!」
(ここまでしたのに、女に帰られるのかよ)
「嬢ちゃん乗ってきなよ。ここまでしといて乗らないんじゃ、この兄ちゃんかわいそうだろ」
 運転手はドアを閉めた。
 女は冷静になって男の方を見た。
(人質みたい)
「わかったわ、乗ってくわ」
「やり〜」
(この女GETだぜ)
「いい、絶対聞かないでよ。運転手さん耳貸して・・・」
「はい、わかりました」
 タクシーを走らせる運転手。メーターはもう基本料金を超えていた。
「ねえ、君名前なんて言うの?」
「・・・」
「ねえってば」
「・・・」
「恥ずかしがらないでいいからさ」
「あの、私に話しかけないで下さい」
「は〜い、わっかりました〜」
 静寂のままタクシーは女の家に着いた。
「お金どうします?」
「じゃ、今メーターに出てるのの半分でいいよ」
 女は男にお金を渡した。
「それじゃ、またね〜」
 男は金を持ってない方の手を振った。
「運転手さん、この人の家に着くまで目隠しはがさせないで下さいね」
「はい、かしこまりました・・・じゃ、兄ちゃん、川越でいいんですよね?」
「おい、それ言うなって」
「え、川越?」
「気にしないで、それじゃっね〜」
 タクシーは走り去っていった。
(川越っていったら、反対方向じゃないそれなのにあの人、わざわざわたしのために・・・)
「ねえ、運転手さん。ここどこですか?」
「え、ここかい?この紙に書いといたからあとで読みな」
「どうも・・・あ、それとさっきの川越って台詞よかったですよ」
「そうか?いや〜、なんだかんだ言っても女は押しに弱いからな。わざわざわたしのために・・・って思わせればこっちのもんだろ」
「そうですよ、その通りですよ。だから俺こんな格好にさせられても文句いわなかったんですよ」
「やっぱりな、そうだと思ったよ。兄ちゃん、男だね」
「そういう運転手さんこそ、男の中の男ですよ」
「いや〜照れるじゃねえか、・・・そういや行き先は品川でいいんだよな」
「はい、そうです」
 女は部屋で一人、男のことを思っていた。
「日高さん、か。・・・また逢えるかな?」

―この二人また逢えたと思います?俺は知ってます―

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作者の独り言
これ本当はコンクール用だったんですけどもう載せちゃいます。新作がありますから。それにしても今回のはちょっと失敗かな?それに千葉県人だから東京の地名全然わからないし・・・。ま、次は頑張りますってことで。
それでは、また。SeeYa!