Re: 精一杯好意的に観るとこうなります。



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投稿者: 黒い板 @ 133.97.169.161 on 98/3/26 04:44:35

In Reply to: タイタニックのラストについて

posted by hobo @ a022241.ap.avexnet.or.jp on 98/3/25 18:59:50

冒頭における主人公は、上流階級のお嬢様(危機的状況だが)で、自分の運命に
対して受け身であるしかなかった。不満を抱きながら何もしない、何もできない
お嬢様である。

それがタイタニック号での出来事により、活動的で自由な人間に生まれ変った。
その生きてきた証は富でも名誉でもなく、写真による“記録(記憶)”だけである。
(ラストの写真立てより)

そして現代の彼女(老女)に至っているわけだが、彼女の手には彼女の人生が
大きく変わった瞬間の“記録”が無く、代わりにダイヤという精算されるべき
彼女の“遺物”が残されていた。

この作品に於いて彼女は絵に描かれた“記録”を獲得し、ラストで“遺物”を
葬り去ることで、過去を清算し価値付けが出来たのである。

そう、彼女にとっての『タイタニック号からの生還』は残酷で陰惨なものではなく、
まさに“輝ける人生の第一ページ目”という事を表現したのがあのシーンなのだ。

ゴージャスさは直接的意味ではなく、沈没したタイタニック号=変身以前の彼女
に、対となる表現であり、絵描きの姿はその変身の重要なカギであったということ
で描かれていると考えられる。


この作品は、世間でバカで幼稚な悲恋部分が強調されすぎで、ホラー狂日記さんが
指摘されているように(微妙に見解がズレてますが、“好意的”に観ると上記の
ようになるというだけ)、現代の主人公(老女)を中心として観なければ、この
素晴らしい現在と過去を繋ぐ編集も意味が無くなり、それこそただの蛇足。

僕がこの作品で良いと思えるのは、タイタニック号の見事な姿と、沈没後のドラマ
(二人のバカな会話は除く)、そして現在のシーンだけである。