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かとおおお @ 202.228.225.73 on 98/1/30 22:37:43
In Reply to: 3、を選んだ方へ
posted by かとおおお @ 202.228.225.73 on 98/1/30 22:23:12
「このままここで待っていたら、今日中に東京へ帰れませんよね。列車を降りて歩きませんか? 関ケ原さえ抜ければ雪はもうたいしたことでしょうし」
「そうね、そうするしかないわね。じゃ、車掌さんに頼んで降ろしてもらいましょうか」
ところが、一歩外に出ればそこは猛吹雪の世界。大神たちはたちまち道に迷ってしまった。「あっ、あやめさん! あそこ!」
「明かり?……家があるみたいね。泊めてもらえるかしら」
「行きましょう! 俺が頼んでみます」
「こんばんわ、こんばんわ!」
「はいはい。どなたじゃ?」
「旅の者ですが道に迷ってしまいました。どうか一晩泊めていただけませんか?」
「ひっひっひ。それは大変なことじゃて……。まあ、入りなされ。外にいると凍え死んでしまうでの」
「ひっひっひ。この部屋を使いなされ。布団は押し入れの中にあるでの」
「どうも、ありがとうございます。おばあさん」
「ああ、それからひとつ言い忘れておったが……」
「なんですか?」
「決して奥の部屋を覗いてはならぬぞ。よいかな。ひっひっひ……」
「あやめさん……。眠れないんですか?」
「大神くん。あのおばあさん、何かおかしいとおもわない?」
「あの『ひっひっひ』という笑い方ですか?」
「そうじゃなくて……この家、まるで生活の匂いがしないわ。あのおばあさん、何をして食べているのかしら……」
「それもそうですね……よし、ひとつ探ってみましょう。あの覗いてはいけない部屋ってのも気にかかりますし」
「待って、わたしも行くわ。このロウソクを持って行きましょ」
「この部屋だな。カギは…かかっているか。でも、こんな錠前はずすのは簡単だ。この『あいかぎくん』で…」
「大神くん、変なもの持ってるのね」
「ほら、開きましたよ。中へ入りましょう」
「うわ〜、へんな臭い。家具は何も……あれ、何か厨子みたいなのがあるなあ。中は…またカギだ。『あいかぎくん』で……よし開いたぞ! ん…? 変な紙きれが入っているだけだ」
「大神くん、こっち! 地下への入り口があるわ!」
「怪しいですね。行ってみましょう!」
「ここが突き当たりのようですね。扉があります。カギは…かかってない! 開けますか。あやめさん?」
「しっ、何か変な音が聞こえない?」
しゃ〜こ、しゃ〜こ、しゃ〜こ、しゃ〜こ……
「何だろう、この音?」
「そっと覗いてみるわよ」
そこには、髪を振り乱して包丁を研いでいる山姥の姿があった。
山姥は不意にこちらを振り向いた。その顔には耳まで裂けた口が!
「うわっ!」
「きゃっ!」
「おのれェ〜、よくも見たなァァァ〜!」
山姥は恐ろしい形相で二人を追いかけて来た。
「待てェェェェェェェ!!」
「待てェェェェっ! わしを見たからには生かして帰さんぞ!」
「あやめさん! 早く!」
「だめよ。このままじゃ追いつかれるわ! 何かないの!?」
「え〜と、さっきの部屋で拾った紙きれなら…」
「紙きれなんかじゃ……大神くん! それは破邪のお札よ! 使えるわ」
「えー、なになに? 『悪しき者来たりし時、この札を投げ願いを唱えよ。さすればたちまち願いかなうべし』……」
「待てェェェェェェっ!」
「大神くん! なんでもいいから奴を足止めするのよ!」
「よーし! 大きな川、出ろ出ろっ!」
大神が札を後ろに投げると、たちまち流れ渦巻く一本の大河が現れた。
「ようし、これでもう追って来れまい」
「なんのこれしきィィィィ!」
山姥はザブンと飛び込むと青山綾里さながらの見事なフォームで泳ぎ始めた。
「だめだわ。大神くん、次を投げて!」
「よーし! 大きな山、出ろ出ろっ!」
今度は雲突くばかりの高い山が現れた。
「むだじゃァァァァァっ!」
山姥はすごいスピードで駆け上がると、転がるように山を下り始めた。
「最後の一枚ね……よく考えて!」
「よーし、これならどうだ! 出ろ出ろっ、霊子甲冑・光武!!」
大神が最後の札を投げると、白く輝く大きな機体が現れた。
「ようし、行くぞ山姥! 狼虎滅却・快刀乱麻ーーーーーっ!!」
「ぎゃあああああああっ!!」
長い長い一夜が明けた。
「あやめさん。なんだか大変な正月になっちゃいましたね」
「そうね……」
「でも、山姥も退治できたし、後は東京へ帰るだけ。めでたしめでたし、ですね!」
「そうよね。でも、大神くん。一体どうするの、これ?」
あやめが指さすその先には、昨夜のままの霊子甲冑・光武が立っていた……。
(完)

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