正月大戦「炎の記憶・後編」(長文)



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投稿者: じぇねらる @ proxy.kcn.or.jp on 98/1/29 17:18:51

In Reply to: 正月大戦「炎の記憶・中編」(長文)

posted by じぇねらる @ proxy.kcn.or.jp on 98/1/29 16:50:16

ノックの音がする。また誰かが見舞いに来てくれたのだろう。

紅蘭「あいとるでぇ。病気やないんやから、ええかげんにしてや!」

投げやりな気分になって声を荒くする。しかし、入ってきたのは意外な人物だった。

紅蘭「お・・・大神はん?どないしたん?」

大神「来月から戻ってくることになってね、少し早いけど帰ってきちゃったんだ。」

紅蘭「ははぁん、さくらはんやな、知らせたんは。どうせまた大げさに電報でも打ったんやろう。」

紅蘭は笑おうとした。確かに笑おうとしたハズだった。しかし、その瞳からは大粒の涙が溢れていた。

紅蘭「あれ?おかしいな?大神はんに会えて嬉しいハズやのに・・・あれ?」

大神の手がゆっくりと紅蘭の肩を抱いた。
紅蘭は驚いたが、驚きよりも安堵感が心を覆う。(昔、どこかで・・・)

紅蘭「大神はん・・・・・・・?」

大神は優しい目で紅蘭を見た。

大神「紅蘭、これから俺の言うことをよく聞くんだ。」

紅蘭「え?」

大神「強くなくてもかまわない。弱音をはいたっていい。泣きたいときは泣けばいい。」

紅蘭「大神はん・・・・・・?」

大神「君達と守り抜いた平和な時間を一緒に過ごすために、俺は帰ってきたんだから。」

紅蘭はすべてを思い出した。それは、父の最後の言葉とはまったく逆の言葉。炎の街で、繰り返し唱えた呪文。これから一人で生きていかねばならない紅蘭のためを思いつづられた言葉とはまったく逆の言葉。

大神「紅蘭、君は一人じゃない。」

紅蘭は泣いた。子供のように、大神にしがみついて泣いた。こわかったのだ。あの悲劇が繰り返されるのが・・・また一人ぼっちになるのが。
紅蘭は大神のもとで泣くことによって、すべての恐怖が消えていくのを自覚した。そして、この平和な時間がいつまでも続くことを願った。

紅蘭の願いもむなしく、花組に再び戦闘部隊としての任が下るのは、この2ヶ月後である。しかし、その時の紅蘭は、いつもの紅蘭であった。