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投稿者:
うぉーろっ君 @ tkti007.osk.3web.ne.jp on 98/1/10 06:34:16
紫の蒸気甲冑は苦悩する。
『何故、殺した』
違うだろ。
『何故、こんな事になったのだろう』
と。
最初は、黒之巣会の遺産(元を正せば徳川の遺産だが)とも言うべき
魔操機兵・甲型(通称:足軽)をベースに造られたはずの自分の身体。
それが今では改造に改造を施され、今や一人(?)前の蒸気霊子甲冑。
おそらく、花組の光武レベルの機体なら、充分に互角以上の戦いが出来るはず。
……いや、強くなったことが不満な訳じゃない。何よりも大事な、そして、
誰よりも愛しい女性(ひと)である神崎すみれを守ることこそ、自分が
このような姿で生まれ変わることを選んだ、最大の理由なのだから。
不満は、もっと別のところにあるのだ。
その不満とは……。
『だんだん人間離れした身体になっていくでしゅぅぅぅぅ!!!』
もともと人間じゃねーだろ。
『このままじゃ、すみれ様と結婚して幸せな家庭を築くという僕の夢が
消え失せてしまうでしゅぅぅぅ!!!』
無茶ゆーな。
『でも、強くならなきゃすみれ様を守れないでしゅ。でも、強くなる道を選べば
だんだん僕は人間からかけ離れた存在になる……ああっアンビバレンツで
しゅぅぅ!!!』
地面にしゃがみ込み、甲冑は頭を抱える。
悩みの論点が根本からずれてるよーな気がするのだが、本人は至って真剣な
顔だ。あ、甲冑に表情は無いけど、まぁ、ニュアンスでわかった、と言うことで
ご勘弁願いたい。
『ああっ他人には理解できない悩みに苦しむ僕って……やっぱり僕って人間
なんでしゅねぇ……かっこいいでしゅ☆彡』
なんだコイツ。己の不幸に酔いしれてやがる(笑)。
『……ん? これはなんでしゅか?』
悩みつつ、その「悩んでる自分」に酔ってる甲冑の足元に、なにやら球形の
物体が転がってきた。よく見ると、動物の目玉に見える。
『DNA鑑定、スタート!』
早速手に取り、手持ちのデータに該当する人物がいないか検索する。
え? こんな時代にDNA鑑定なんてあったのかって?
あると思えばあるんですよ! ほら、ここって「太正」時代だし。
……便利な言葉やなぁ(笑)。
『鑑定終了。データ検索開始…………Match.
帝撃花組隊長、大神一郎の目玉と断定』
『大神一郎……でしゅか。僕の恋のライバルでしゅね』
思いっきし片思いのライバルだけどね。片思いの嵐だね(笑)。
『でも、なんであいつの目ん玉がこんなトコに?』
周りを見渡すと、少し離れたところで野郎二人組が「ぐはぁ」「ぐはぁ」と
血を吐いて倒れ伏してる姿が見えた。どうやらあそこから転がってきたらしい。
『正月早々、変な奴らがいるでしゅね』
彼らも、きみには言われたくないだろうな(笑)。
『……あ、いいこと思いついたでしゅ☆彡 この目玉のDNAを僕の身体に
組み込めば、たぶん人間に近い身体になれるでしゅよ☆彡 うにゅ☆彡
我ながら名案でしゅね☆彡』
他人のDNAを自分の身体のデータとして取り込める事自体、もはや“人間”
でも“機械”でもない異質なもの、という気がしないでもないが。
『待ってて下さいでしゅすみれ様☆彡 次にお会いするときは人間として
あなたの前に馳せ参じますでしゅぅぅぅ☆彡』
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