読切「午後ティー」



[ このメッセージへの返事 ] [ 返事を書く ] [ home.html ]



投稿者: Honest Roosevelt Kanzaki(爆死) @ prxb2.kyoto-inet.or.jp on 97/12/09 00:54:32

ある晴れた日の昼下がり、銀座、大帝国劇場。
その2階にあるサロンで久しぶりの休みを楽しんでいる男女がいる。

今日は花組の公演も休み。
大神は珍しく雑用から解放されていたし、すみれは稽古もなく暇を持て余していた。
2人共どこかへ出かけるアテもなかったので、劇場内をぶらぶらしていたところ、ばったり出会い、サロンでお茶でもということになった。

「ふー、久しぶりだな、こんなにのんびりするのは。」
「そうですわね。わたくし達はともかく、少尉は公演が休みの日でも
お仕事に追われていらっしゃるから。あ、お砂糖はどうされますの?」
「1つだけもらおうかな。」
「・・・・・・・・・・はい、少尉。」
「ありがとう、すみれ君。・・・・・・じゃあ、頂きます。」
「お味はどうかしら、少尉。今日はいつもと違う趣向をこらしてみたの
ですけれど・・。」
「・・・・・・?この紅茶、いつもと違う香りがするね。
何か、スーッとするような・・。」
「ええ、今日の紅茶にはミントが入っていますの。」
「ミントか・・・・・・。なんかこう、気分がすっきりするね。」
「そう言っていただけると、嬉しいですわ、少尉。最近お疲れだろう
と思いましたので。」
「ありがとうすみれ君。」
「おっほほほ・・・、これくらいのこと、お安い御用ですわよ、少尉」

大神はティーカップをテーブルに置くと、軽く背伸びをした。

「うーん、なんだか眠たくなっちゃったな・・。」
「あら?今気分がすっきりしたとおっしゃったばかりですのに。」
「ははは、でもこんなにのんびりした時間の中にいると、すっかり気が
緩んじゃって・・。」
「そうですわね・・、今日はこのままゆっくりしていましょうか、少尉・・。」
「・・・・・・・・」
「あら?少尉、少尉ったら・・。」

見ると大神はソファーに腰掛けたまま、眠ってしまっていた。

「少尉ったら、よほどお疲れのようですわね・・、このわたくしを放って置いて
居眠りなんて本来は許されません事よ。」
「・・・・・・でも今日は特別に許して差し上げますわ、少尉。」

それからしばらくすみれはぐっすりと眠ってしまった大神の隣で
本を読んだりして時間をつぶしていた。


そんなすみれが肩にのしかかるものを感じたのはしばらく経ってからだった。

「少尉・・?」
と、すみれが大神の方を向こうとすると、大神はそのまますみれの太股の上に
倒れ込み、膝枕をするような格好となった。

「いやですわ、少尉ったら・・。」
すみれは少し恥ずかしかったが、幸せそうに眠る大神の顔を見ると、「仕方ありませんわね。」
と、そのままにしておくことにした。

「少尉ったら、まるで子供のような寝顔ですわね・・。」
すみれは軽く微笑んだ。



久しぶりの二人きりの時間、緩やかな時の流れに身を任せ、二人は、静かな幸せを感じていた。



the end or to be continue?