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編隊飛行 @ sisetu-45.jimut.kyutech.ac.jp on 97/11/12 20:19:46
In Reply to: 夜にしかアクセスできない方々へ(陳謝)
posted by 編隊飛行 @ sisetu-45.jimut.kyutech.ac.jp on 97/11/12 20:10:35
「大神さん。いったいどういう事ですの!!わたくしが書いた脚本を使わないですって!」
「まぁ、まぁ、落ち着いて。すみれ君。やはり、ハロウィンには、そのぉ、ふさわしい話
というものもあるし・・・」
「あら?私の書いた話がハロウィンにはふさわしくないっておっしゃりたいの?」
「いや、そんなことは。あはははは・・・・はぁ・・・・」
ここは、銀座・帝撃学園の生徒会室。
毎年恒例の初等部向け「ハロウィン演劇」の脚本をめぐり、生徒会長の大神一郎と、理
事長の娘 神崎すみれは言い争いをしていた。
「真宮寺さくらさんの書いた脚本が採用されたらしいですわね。内容は、一代で財を築い
たケチな成金が、3人の幽霊に出会って改心する話ですって?」
「あぁ、確かにそんな話だけど・・・・」
「まるで、神崎財閥がケチな成金で、さっさと更正していただきたい!!って言ってるよ
うなお話ではなくて?えっ?生徒会長?」
「そんなぁ。被害妄想だよ。すみれ君」
「おじいさまが一代限りで築き上げられたこの神崎財閥を愚弄するなんて・・・。
おじいさまがお許しになっても、孫娘であるこのわたくしが許しませんわ!!」
「いぃ・・・。いや、妹のアイリスもその話は喜んでいるし・・・。」
「妹ですって?生徒会長の立場を私的に利用していらっしゃるのではなくて?
そんなことはこの民主主義の世界では許されませんわ!!」
「そ、そんなぁ・・・」
(立場を利用してるのは、理事長の娘のすみれさんのほうじゃないか。)
「さぁ、私の脚本を、採用していただけますの?さぁ、さぁ、さぁ」
(とほほほほっ。あの台本ではなぁ・・・・)
「採用していただけないのなら、来月からの生徒会予算は大幅に削減させていただきますわ。」
「そ、そんなぁ・・・・すみれさ〜〜ん!!」
(やっぱり、どケチじゃないか。とほほほほっ・・・)
帝撃学園生徒会長・大神一郎、またの名を「学園のおもちゃ」。
彼の苦労はまだまだ続くのであった。
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神崎すみれ作 〜 夕鶴
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♪〜か〜ごめ、かごめ・・・・〜♪
夕焼けの中、子供たちが遊んでいる声が響く。
「今日は、反物が高値で売れた。やっぱり、すみれ君織ってくれる反物の出来は素晴
らしい。」
数日前、一郎が一羽の罠に掛かった鶴を助けたところ、その夜にやってきた一人のう
ら若き、そして美しき女性。名前はすみれ。
そのすみれが夜な夜な織った反物を、彼女に言われたとおりに町に売りに行った一郎
は、多額の現金を手に入れ満足そうに帰宅する途中であった。
「反物10本で50万円かぁ。これもすみれのおかげだ」
〜がらがらがら〜
「ただいまぁ」
「お帰りなさいませ。一郎様。反物は売れまして??」
「あぁ。このとおり。さぁ、お願いだからもう少し反物を織ってもらえるかな?」
「はい。でも、約束してください。私が織っている姿は決して見ないと・・・。」
「あぁ、約束するよ。絶対だ。」
「では、本当に見ないでくださいね。でないと、私はここを出ていかなければなりませ
ん。」
〜がらがらがら〜
隣室へと消えて行くすみれを見送る一郎。
〜とんとん。がっしゃん。とんとん。がっしゃん〜
〜はっ。は〜ぁん。あっ・・・・〜
〜はぁ〜ん。あっ・・・・・・〜
時折聞こえるすみれのあえぎ声。一郎の心は揺れる。
(見たい・・・。でも約束だし・・・。でも見たい。でも・・・)
(ちょっとなら良いだろう。こっそりと覗けば・・・)
〜そぉ〜〜っと〜
障子をそっと開けて、隣を覗く一郎。
「ひぃっ!!」
「見てしまいましたわね!!」
うっすらと汗をかき、上気した頬を赤く染めたすみれが立っていた。その姿は、なん
とも色っぽいレオタード。隣室は、最新マシンが整然と並ぶ一大フィットネスセンター
と化していた。
「私、この美しい形姿を保つために、毎夜ここでトレーニングに励んでおりましたの。
でも、このように努力をしているところを見られるのは、この神崎すみれの恥。わたくし
はなにもしなくても美しいものだと、殿方には思われていたかった・・・・・・。
この事実を知られたからには、わたくし、今すぐここを出て行かなければばなりません。」
「しかし、すみれ。君は反物を織っていたのでは・・・」
「反物を織るですって?そんなことは下賎な女がやることですわ」
「えっ??」
〜トルゥゥゥゥゥ。トルゥゥゥゥゥゥ・・・・・〜
突如、鳴り響く電話の音。
「はい。神崎すみれですわ。」
(もしもし。毎度お世話になっております。四越デパートの外商部ですが・・・。)
「ちょうどよかったわ。先ほど、注文したばかりの反物50本ですけど、キャンセルしてくださいな。」
(えっ?キャンセルでございますか?)
「そう。それから、前回納入していただいた西陣の最高級の反物10本の請求ですけど。」
(はい。1本200万円の反物10本でございましたね。)
「請求書は、こちらの大神一郎の方へ廻しておいていただけます?わたくしは、取り次ぎ
をしたまでのこと。おわかりですわね?」
(はいはい。承知いたしております。では、請求書は大神様の方へ。いつものとおり紹介料
は、すみれ様の口座へお振り込みさせていただきます。)
「では、よろしくお願いね。」
〜ぷつっ〜
「一郎様。迎えのヘリが参ったようですわ。わたくしはこれで。あっ、この部屋の荷物は明日、家
のものが取りに参りますのでご心配なく。では、失礼。」
ヘリから垂らされた縄ばしごに捕まり、夜空へと消えていくすみれ。
「お〜〜ほほほほほほほほっっ・・・・・・・・・(高笑いが消えていく)」
「すみれさ〜〜〜ん!!」
後日、大神一郎の元へ、「二千万円の請求書」が届いたことは言うまでもない。
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