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天下無敵の無一文 @ es3cwww.cc.u-tokai.ac.jp on 97/7/30 18:04:09
In Reply to: 花火大戦1〜帝劇偏〜
posted by 天下無敵の無一文 @ es3cwww.cc.u-tokai.ac.jp on 97/7/30 17:07:28
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> むらさきのゆかたに、きいろい帯を締めたすみれが
> 少し嫉妬の混じった口調で訪ねた。
>
> ゆかたの色はいつの服と同だが、今日は肩をはだけて
> いない。それだけで新鮮に感じるから不思議である。
大神「アイリスが転ばないように、気をつけてくれってさ。」
すみれ「あら、そうでしたの。それより少尉、このゆかた、
似合いますかしら?急なお話でしたので、
こんなものしかなかったんですけれど...。」
そう言えば、てっきりものすごいゆかたを着てくるかと
思っていたが、以外とおとなしい服装だ。
大神「いや、そんなことはないよ。とてもきれいだよ、すみれ君」
すみれ「いやですわ、そんな当たり前のことを。」
などと言いつつも、まんざらでもなさそうに高笑いをあげる。
カンナ「なんでぇなんでぇ、そんな妖怪蛇おんなとばっかり
しゃべってねぇで、こっちきなよ、きれいだぜ〜。」
なんと、カンナは男物のあおいゆかたを着ていた。
多分、サイズが合うのがなかったのだろうが、
なかなかどうして、いいおんなぶりである。
すみれ「なんですってぇ〜、この山猿!」
かんな「なんだとぉ〜。」
紅蘭「なんや、またはじめとんのか、あのふたり。」
お約束の喧嘩を始めたふたりを見て、あきれたように
紅蘭がつぶやいた。
椿「喧嘩するほど仲がいいっていいますし、
結構楽しんでるんじゃないですか?」
こちらは焦げ茶のような、濃い赤色の無地のゆかたに、
黄色い帯を締めた椿が言った。
紅蘭「ま、そうかもしれへんな。」
アイリス「お兄ちゃんおそーい。早く来ないと終わっちゃうよ!」
大神「まだ始まったばかりだから、そんなことはないよ。」
アイリス「ねぇねぇお兄ちゃん、花火ってすごーくきれい
なんだね。アイリス初めて見たよ。」
きいろいゆかたにあかい帯、見事なブロンドといい、
黄色ずくめになってしまったが、アイリスには一番
似合っているかも知れない。しかし、こんな時でも
一緒にいるジャンポールが、残念ながら完全に浮いている。
マリア「私も、初めてです。
...きれいですね。」
夜空に咲く大輪の花に、心を奪われたようにつぶやくマリア。
ひゅ〜〜どど〜ん
ぱらぱらぱら
由里「あ、あれしだれざくらっていうのよ!きれいねぇ。」
かすみ「由里さん、詳しいですね。」
由里「まあね。あ、あれはね...」
少し離れたところでは、由里がかすみに花火の解説をして
いた。
由里は白地にあかいアサガオが咲いている柄のゆかた。
かすみは淡い緑色の、わりとシンプルなゆかたに、赤い帯
を締めていた。
せつなの明かりに照らされて、ふたりとも、放っておくのは
男性失格って位に美しい。
さくら「...大神さん?」
それまで、じいっと花火を見上げていたさくらが、
不意に声をかけてきた。
大神「なんだい?さくらくん。」
花火を見上げたままで続けるさくら。
さくら「私、いま一番幸せです。カンナさんもマリアさんも、
すみれさんもアイリスも紅蘭も、
大帝国劇場に来て、こんなに沢山の、すばらしい人
たちに出会えました。そして...」
ひゅぅ〜〜どど〜ど〜ん ひゅぅ〜〜どっどどっ
ひゅぅ〜〜どど〜どん ひゅぅ〜〜どどど〜ん
ひゅひゅぅ〜〜どど〜ど〜ん ひゅぅどど〜ど〜ん
大神「お!すごいなぁ」
さくらの口からこぼれた言葉は、ものすごい歓声と、
花火の音で、大神の耳には届かなかった。
しかし、
大神「すごいね、さくらく..」
ふと、さくらの方を見た大神は、思わず息をのんだ。
ほんのりと、頬を染めて空を見上げるさくらの姿は
真っ赤にもえた、夜空のひかりの洪水の照り返しを受けて、
いままでに見たこともないような、
神秘的な美しさに満ちていた。
思わず、我を忘れてさくらに見とれてしまう。
さくら「どうしかしましたか?大神さん。」
そんな大神の様子に気がついたのか、いつもと変わらぬ
様子で問いかけた。
大神「い、いや、君が、いや、その、花火が、
きれいだったから...。」
あわてて、空を見上げる大神。
さくら「ふふ、へんな大神さん。」
さくらは、何も気付かずに(それとも、全て分かっているのか)
ほほえんで空を見上げる。
ひゅぅ〜〜〜どど〜〜〜ん
ひときわ大きな花火が揚がり、会場中から歓声がわき起こる。
若者達の、それぞれの思いや心を知ってか知らずか、
今年も帝都の夜空を彩る大輪の花達は、
地上の小さな花達に、短いながらも、
美しいひかりを惜しげもなく投げかけるのだった。

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