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うぉーろっ君 @ tkti015.osk.threewebnet.or.jp on 97/7/09 02:49:47
In Reply to: アイリス、残念だったね……。
posted by VR @ 202.237.42.72 on 97/7/08 12:06:19
――せっかく来たのになぁ……」
昨夜より近い空を見上げながら、俺は呟いた。
昨夜と同じように、アイリスはご機嫌ななめ……いや、それを通り越して
落胆しているのだろう、暗い表情を浮かべている。
「お昼、“オリヒメ”と“ヒコボシ”泣いてたもんね……」
七夕に会えない織姫と彦星は、互いに会えない恋人を想い、流した涙は
雨となる……昨夜、テラスで俺が話したことを、アイリスが口にした。
ちなみに今日は七月八日。二日連続の七夕の特別公演も大盛況の内に終了し、
今、俺とアイリスは浅草十二階――凌雲閣にいる。日課の見回りもすっぽかし、
他のみんなの目を盗んでやってきたのだ、もしばれたら――特にさくらくんと
マリアには――こっぴどく叱られるだろうが、そんなことは覚悟の上だ。
しかし昨夜と同じく夜空は雲に覆われ、天の川も星も何一つ見えやしない。
「少し、青空が見えたときもあったから、ちょっとは期待したんだけど……」
「つまんないの……」
今夜は、凌雲閣での七夕の行事――星の鑑賞会――が、予定通り行われた。
しかし夜空は昨夜と同じ、曇り空。俺と同じく、昼間に少しだけ見えた晴れ間に
期待してきたのだろう客たちも、一人二人と露店のほうに流れていっている。
「……“汝、雲を大地として街を見上げよ。そこには人々が造り出した
星空が広がるだろう”……」
「! お兄ちゃん、それ、昨日……」
「やろうか? 今日も」
「うん!」
俺とアイリスは昨夜帝劇2階のテラスでしたように、手すりに背を向けて
もたれかかり、そのまま視点を後ろにやる。
「!……うわあ……! 凄い! 凄いよお兄ちゃん!」
隣でアイリスがはしゃぐ。確かに、昨夜に同じ事をしたときとは比べ物に
ならない絶景が目に飛び込んでくる。昨夜は2階、今夜は12階だ。
その光景の差は、推して知るべし。アイリスのはしゃぎようも無理はない。
「おいおい、あんまりはしゃいでると落ちるぞ」
そのままの格好で俺が言うと、
「は〜い」
やはりそのままの格好でアイリスは返事をした。それでもやっぱり
アイリスははしゃぐのをやめない。思わず苦笑いが浮かぶのが自分でもわかる。
しかし、俺はその時気付くべきだった。
数こそ減っていたとは言え、ここにはまだ人がいると言うことに。
そして、年端も行かぬ女の子と大の大人が肩を並べてそんなことを
していれば、絶対に目立つと言うことに。
「……やっぱりあの子、そうじゃない? 帝劇の子役の……」
「……そう言や、あの兄ちゃん、劇場で見かけた顔だぜ……」
俺が気付いて顔を上げたときには、俺たちの周りに結構な数の人々が
集まって、遠巻きにして俺たちを見ていた。
やばい。
これ以上騒ぎが大きくなったら、確実に無断外出のことが米田支配人の
耳に入るだろう。いや、それよりも、他のみんなに今夜のことが
ばれたら……。あんまり想像したくない惨劇が待ってるような気がする。
覚悟の上とは言ったが、やっぱし嫌なものは嫌だ。
今なら、まだ人違いでごまかせるだろう。……逃げよう。
……一瞬のうちにそれだけの思考と判断が出来るとは、俺も隊長らしく
なったものだ。
……笑わないように。
「わぁ〜、人がいっぱい」
「逃げるよ、アイリス」
周りの人たちに聞こえないように俺が呟くと、
「なんで?」
案の定、訊ねられた。
「……もし、この中に黒之巣会がいたらどうする? 他の人に迷惑が掛かるし、
出来れば、戦いたくないだろ?」
口から出任せではあるが、嘘ではない。少なくとも、可能性は0ではない。
「……うん、わかった」
「ありがとう……じゃあ」
やおら、俺は空を指さし、声を上げた。
「あっ、星が見えるよ!」
「なに、ホントか!?」
「え! どこどこ?」
作戦成功。みんな、懸命に空を見上げている。
……あ、アイリスまで。
「だから、逃げるんだってば」
アイリスを抱きかかえ、俺は一気に12階を駆け下りた。
「あはっ、楽しかったぁ!」
銀座へと向かう帰路で、まだ俺の腕の中から離れようとしないアイリスが
笑った。
「そう? 俺はもう、へとへとだよ」
12階を駆け下りた後も、人目が付かない場所までアイリスを抱えたまま
駆けてたのだ。疲れて当然だろう。カンナが聞いたら、「だらしがないねぇ」
とか言って、笑うだろうけど。
「アイリス、物語のお姫様みたいだね!」
「じゃ、俺は悪いヤツから姫を助ける王子様、てとこかい?」
「うん! お兄ちゃんは、アイリスだけの王子様!」
良かった、元気が出たみたいだ。星は見れなかったけど、楽しい時間を
過ごさせることは出来たようだ。
ふと気がつけば、アイリスは俺の腕の中で、すやすやと寝息を立てていた。
やはり、公演で疲れていたのだろう。その上、こんな時間だ、無理もない。
「……おやすみ」
こないだと同じように、おでこに口づける。良い夢が見られるための、
おまじない。
なんか、劇の1シーンみたいだな。
そんなことを思った後、昨夜も似たようなことを思っていた自分を思いだし、
思わず声を出して笑った。
――人の人生は、最高の舞台劇――
誰かが言った、そんな言葉を思い出し、また笑った。
「さぁて、と。誰にもばれずに劇場に入る方法は、と……」
「星が見えなくたって、いいことはあるさ」
もう夢の国の住人であろうアイリスと、今日、この空を見ていた全ての人へ。
「……良い夢を」
<了>
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……勝手に続き書いちゃいました。ご免なさい!
おまけに非道い出来です。さらにご免なさい!!
ラストは、意図的に似たような引きにしたんですが、どうでしょうか?
……とか言う以前の問題ですね(^^;;;
> 星が見えんかったよー(それが言いたいだけ)。もう7/8になって
> ますし。全国的にダメだったんでしょうか?
うちの近所でも駄目でしたねー。7/8も。……もう9日ですが。
> 見えた人は何をお願いしましたか?『グランディア・プレリュードがもらえますように』?
もし見えてたら、「借金がなくなるように」と願うつもりでした(T-T)
> 「…明日は星が見えるといいね…。」
> …あのー、何か今日も雨みたいですけど…(T.T)
小雨程度でしたが、降りました(^^;
少し、雲の切れ間から青空が見えたときがあったので、
期待したんですがねぇ……(;-;)
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