だれかのみたゆめ 第11話



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投稿者:   @ pppb819.pppp.ap.so-net.or.jp on 98/3/16 11:38:58


第11話 「秩序」


「久しぶりだな、カイ。」
「やっぱり瑠原か...お前、なんでウチの制服着てんだ」
「服なんざどーだっていい。この町ではこれが一番なのさ。
 お前こそまだこの制服着てるんだな。昔の方が似合ってたぜ」
「先に言っとくがな、瑠原」
「"もう戻る気は無い"んだろ?
 ヒヒ、まあいい。今日は別の用件で呼んだんだ」
「・・・。」
「お前、例の構図持ってたろ」
「アレはお前に渡した筈だ。」
「とぼけんなよ。あんなデコイつかませやがって...」
「知るか。俺が拾ったものをお前が持ってっただけだろ」
「ま、いい。それは本当の事だろうしな。で、本物の事なんだが...
 メック部の調査によると、市販された本に暗号化されてるそうだ。」
「そんな事、興味ないね。」
「そう言うな。調査が遅れたせいか、その本はもう絶版だ。」
「だから何だ。もったいぶらずに用件を言えよ」
「フン、いいだろう・・・お前の学校、でかい図書館が有るよな。
あそこなら本が置いてあった筈だ。通ってた頃、見覚えがある。」
「・・・。」
「それを取ってきて欲しいだけだ」
「・・・。」
「俺のIDはとっくに抹消されてるから、お前に頼んでるんだがな」
「断れば?」
「さぁな。いざとなればあの人は強引に奪い取るだろう。」
「学校の人たちは関係ないだろう」
「知らねえよ。お前次第、という事だな」
「・・・お前たちは、その本で一体何をするつもりだ?」
「実は、俺も知らん。まぁ、危ない事はしないんじゃないか?
 あの人は無意味な事が嫌いだからな。まあ心配するな。」
「...そうか。ところで、もう一つ聞きたいんだが・・・」
「へへっ、ミクアの事だろ。機密になってる。
 ・・・と言いたいところだが...昔のよしみだ、教えてやろう。」
「まさか...」
「実はな、行方不明になっちまった。例の実験中の事故でな。」
「・・・本当か・・・?」
「嘘じゃねえよ。本当ならこんな事言わない方が有利なんだ。
 けど・・・俺は、あんまりお前を脅したりしたくはないんでな。」
「...で、無事なのか?今はどこに?」
「委細不明、だとさ。メック部も大して約に立たんぜ、ハハッ」
「そうか・・・」
「安心したか?」
「・・・。」

− − −

「・・・。」
カイはたき火を見ながら、数日前の事を思い出していました。
「・・・ねえ」
火のそばで寝ている美佳が口を開きます。
「何だ、眠れないのか。明日はあの町を抜けるんだ。ちゃんと寝ておけ」
「・・・あなたは寝ないの?」
「君の機械を見っていなければならん」
「でも、全然寝てないんでしょう?」
「平気だ」
「なんで?」
「まぁ、俺たちは...訓練されてるからな」
「・・・。」
「...寒くないか?」
「うん、大丈夫」
「そうか。なら早く寝ろ」
「...。」
早く寝てくれ...カイはそう思いましした。うるさくてかなわん、と。
しかし彼はその寝顔に、思わず見入ってしまうのでした。
よく、黙っていれば可愛いのに...などと言うものですが、美佳が正にそれでした。
「(・・・しかし、あいつによく似てるな・・・)」
司令の事、機械の事、塔の事、自分の事...そして、行方不明の想い人の事・・・
今背負っている数々の重荷を一時的に忘れて、見つめました。
美佳の寝顔を見つめているうちに、不思議とカイの心は癒されていきました。
突然、美佳が目を開きます。
「〜っ!!!」
思わずひっくり返るカイ。
「・・・何やってるの?」美佳はキョトンとしています。
「ま、まだ寝てなかったのか!?いいかげん寝ろよ!」
「だって〜気になっちゃうんだもん」
「何がだ」
「今日、なんであの町に行かなかったの?」
「・・・夜の町は危険だからだ。あの町は、特にな」
「ふぅん、そんなもんなの?」
「君を危険にさらすワケにはいかん」
「...! へぇ、あなたでも人を心配する事ってあるんだね」
「勘違いするな。君と機械を無事に届けるのは俺の仕事だ」
「あ、そう...」
「とにかく、いいかげん寝てくれ」
「...ウン、おやすみ・・・」
「...ああ、おやすみ」
その夜美佳は、久々にたくさんの新しい夢を見ました。
懐かしい夢を。

・・・ ・・・ ・・・

起きると、カイがたき火の後始末をしていました。
「これで、いい」
美佳はシャワーが浴びたいな、と思いましたが我慢しました。
寮の生活から、まだ完全には抜けきれていないようです。
「おはよ」
「・・・起きたか」カイが気付きました。早速、二人は町へと向かいます。


二人が町の門を前にした時、美佳が言いました。
「なんだ、けっこう普通の町じゃないの」
「見かけはな」
「で、どこへ行くの?」
「まず箱に乗る。乗るが・・・」
「乗るけど何?」
「少しの間、待っててくれ。ここなら安全だ」
「ち、ちょっと...どこ行くのよっ」
カイは町へ入ると、しばらくして戻ってきました。
それを見た美佳は、大爆笑するのでした。
「わ、笑うなあっ...!」怒るカイ。

一体、どうしたというのでしょう?


つづく



第12話 「塔よりの刺客」は、 17日にUPされる予定です