投稿者: @ pppb819.pppp.ap.so-net.or.jp on 98/3/16 11:38:58
「久しぶりだな、カイ。」 「やっぱり瑠原か...お前、なんでウチの制服着てんだ」 「服なんざどーだっていい。この町ではこれが一番なのさ。 お前こそまだこの制服着てるんだな。昔の方が似合ってたぜ」 「先に言っとくがな、瑠原」 「"もう戻る気は無い"んだろ? ヒヒ、まあいい。今日は別の用件で呼んだんだ」 「・・・。」 「お前、例の構図持ってたろ」 「アレはお前に渡した筈だ。」 「とぼけんなよ。あんなデコイつかませやがって...」 「知るか。俺が拾ったものをお前が持ってっただけだろ」 「ま、いい。それは本当の事だろうしな。で、本物の事なんだが... メック部の調査によると、市販された本に暗号化されてるそうだ。」 「そんな事、興味ないね。」 「そう言うな。調査が遅れたせいか、その本はもう絶版だ。」 「だから何だ。もったいぶらずに用件を言えよ」 「フン、いいだろう・・・お前の学校、でかい図書館が有るよな。 あそこなら本が置いてあった筈だ。通ってた頃、見覚えがある。」 「・・・。」 「それを取ってきて欲しいだけだ」 「・・・。」 「俺のIDはとっくに抹消されてるから、お前に頼んでるんだがな」 「断れば?」 「さぁな。いざとなればあの人は強引に奪い取るだろう。」 「学校の人たちは関係ないだろう」 「知らねえよ。お前次第、という事だな」 「・・・お前たちは、その本で一体何をするつもりだ?」 「実は、俺も知らん。まぁ、危ない事はしないんじゃないか? あの人は無意味な事が嫌いだからな。まあ心配するな。」 「...そうか。ところで、もう一つ聞きたいんだが・・・」 「へへっ、ミクアの事だろ。機密になってる。 ・・・と言いたいところだが...昔のよしみだ、教えてやろう。」 「まさか...」 「実はな、行方不明になっちまった。例の実験中の事故でな。」 「・・・本当か・・・?」 「嘘じゃねえよ。本当ならこんな事言わない方が有利なんだ。 けど・・・俺は、あんまりお前を脅したりしたくはないんでな。」 「...で、無事なのか?今はどこに?」 「委細不明、だとさ。メック部も大して約に立たんぜ、ハハッ」 「そうか・・・」 「安心したか?」 「・・・。」 − − − 「・・・。」 カイはたき火を見ながら、数日前の事を思い出していました。 「・・・ねえ」 火のそばで寝ている美佳が口を開きます。 「何だ、眠れないのか。明日はあの町を抜けるんだ。ちゃんと寝ておけ」 「・・・あなたは寝ないの?」 「君の機械を見っていなければならん」 「でも、全然寝てないんでしょう?」 「平気だ」 「なんで?」 「まぁ、俺たちは...訓練されてるからな」 「・・・。」 「...寒くないか?」 「うん、大丈夫」 「そうか。なら早く寝ろ」 「...。」 早く寝てくれ...カイはそう思いましした。うるさくてかなわん、と。 しかし彼はその寝顔に、思わず見入ってしまうのでした。 よく、黙っていれば可愛いのに...などと言うものですが、美佳が正にそれでした。 「(・・・しかし、あいつによく似てるな・・・)」 司令の事、機械の事、塔の事、自分の事...そして、行方不明の想い人の事・・・ 今背負っている数々の重荷を一時的に忘れて、見つめました。 美佳の寝顔を見つめているうちに、不思議とカイの心は癒されていきました。 突然、美佳が目を開きます。 「〜っ!!!」 思わずひっくり返るカイ。 「・・・何やってるの?」美佳はキョトンとしています。 「ま、まだ寝てなかったのか!?いいかげん寝ろよ!」 「だって〜気になっちゃうんだもん」 「何がだ」 「今日、なんであの町に行かなかったの?」 「・・・夜の町は危険だからだ。あの町は、特にな」 「ふぅん、そんなもんなの?」 「君を危険にさらすワケにはいかん」 「...! へぇ、あなたでも人を心配する事ってあるんだね」 「勘違いするな。君と機械を無事に届けるのは俺の仕事だ」 「あ、そう...」 「とにかく、いいかげん寝てくれ」 「...ウン、おやすみ・・・」 「...ああ、おやすみ」 その夜美佳は、久々にたくさんの新しい夢を見ました。 懐かしい夢を。 ・・・ ・・・ ・・・ 起きると、カイがたき火の後始末をしていました。 「これで、いい」 美佳はシャワーが浴びたいな、と思いましたが我慢しました。 寮の生活から、まだ完全には抜けきれていないようです。 「おはよ」 「・・・起きたか」カイが気付きました。早速、二人は町へと向かいます。 二人が町の門を前にした時、美佳が言いました。 「なんだ、けっこう普通の町じゃないの」 「見かけはな」 「で、どこへ行くの?」 「まず箱に乗る。乗るが・・・」 「乗るけど何?」 「少しの間、待っててくれ。ここなら安全だ」 「ち、ちょっと...どこ行くのよっ」 カイは町へ入ると、しばらくして戻ってきました。 それを見た美佳は、大爆笑するのでした。 「わ、笑うなあっ...!」怒るカイ。 一体、どうしたというのでしょう? 第12話 「塔よりの刺客」は、 17日にUPされる予定です
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