小説『key』第1部・その1



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投稿者: さすらい @ 133.65.41.10 on 97/12/01 15:30:01

k e y



「へー、この町にこんな所があるんだ。」
 年の頃は15、6くらいだろうか。やけに整った顔立ちをした少女が、この小さな町で唯一、
と言われる大きなホールを見上げている。隣には小柄なちょっときつめの顔をした少女が一緒だ。
こちらは何か緊張した面持ちで、同じく会場を見上げている。
 冒頭の感想を言った少女の名は、青梅 白莎(おうめ はくさ)。昔は歌人の家系だったという
せいか名前も心持ちかっこいい。成績も中の上くらいで、特に問題は無し。運動神経は、という
と・・言うこと無しに抜群! 好奇心が旺盛で、気が強すぎるというのが “玉にキズ”という
ところだろう。彼女とその家族は、半年ほど前にこの町に引っ越してきた。父と母、それに弟と
一緒に住んでいる。しっかり者のお姉さんだ。
 隣に立っているのは、白莎がほんの2、3ヵ月前に塾で友達になった、柏木 砂恵(かしわぎ 
さえ)である。彼女たちはいまオーディション会場に来ているのだ。                                    
 実はここに来たのも、砂恵のせい。事は、塾の帰りに砂恵が白莎にいきなり話しかけたことか
ら始まる。
 「ねえ、青梅さんてさぁ、なんか迫力美人って感じよねぇ。最初見た時、はっとしちゃった。
あっそうだ、今度うちン家の近くで、美少女コンテストやるんだって。青梅さん、出てみたら? 
アイドルになるのも夢じゃないかもよ。」
 確かに白莎はよくその手の勧誘受けるし、周りの人にもよくそういうこと言われた。けれども
本人は、そういうことをあまり気にしない性質であり、興味がない。しかし、砂恵自身が行きた
がっている様だったので、しかたなく誘いにのってあげたのだ。
(砂恵も俗に言う、“興味津々なんだけど、1人で行くのは恥ずかしい★”っていう女の子なん
だろうな、御多分に漏れず。)
 白莎はそう思って、この誘いを受け入れたのだ。本人としては付き添い気分なのだが、登録さ
れているのは白莎の方である。

 オーディション会場は、暗くて広かった。靴を手にもって上がったホールには、人がいっぱい
しゃがみこんでいた。
 「青梅、私達の場所って結構前の方にあるみたい。行こっ。」
 砂恵が前に向かって小走りになりながら元気よく言った。
(‘呼び捨てしていい’って言った覚えなんて無い。)
白莎はそう思うと、ちょっと不機嫌になった。しかし砂恵がそういう事に執着の無い子だと分か
っていたので怒る気にもならない。それよりも気になる事が頭の中を占めていたせいかもしれな
い。そう、オーディションだ。はっきり言ってやる気が無かった。だから白莎は格好も普段着の
ままで出てきた。はじめはうるさく言っていた砂恵だが、今となってはそんなことどうでもいい
ようだ。しきりに左右を見回しては、衣装を付けている他の出場者に見とれている。砂恵のそん
な気が変わりやすいという短所も、いまだけは感謝してしまう。
 白莎が砂恵に引っ張られる格好で歩いていると、誰かの足につまずいた。
「あ、ごめん。」
痛い思いをしたのはこっちだし、もとはといえばこんな混んでいる所で引っ張る砂恵が悪い、と
思ったが、礼儀知らずではないので、とにかく謝った。
「いったぁい。どっち見て歩いてるのよ。」
 白莎がちゃんと謝ったのにもかかわらず、足が引っ掛かった女は文句を言ってきた。かまって
いるときりがないことは目に見えていたので、聞き流して通り過ぎようとした。しかし、彼女と
同じ格好をした5〜6人の女たちがそうはさせなかった。小声だが、口々に言ってきたのだ。白
莎に向かっての皮肉を。
「ちょっとー、ミナ大丈夫?」
「困っちゃうわよねー。ああいうお子様ってさぁ。」
「自分がかわいいと思って、いい気になってるんじゃナイのぉー?」
「だっさーい。こけてんのぉ。」
 冒頭の説明で分かるとおり、白莎はここまで言われて黙って立ち去るようなタイプではない。
売られた喧嘩は買ってしまうような子だ。だから彼女はこう言った。
「ちゃらちゃらした格好でうずくまってるのって、史上最悪だわ。」
 なかなかにきつい一言だ。案の定、その女たちはあっさりと白莎の挑発に乗って来た。
 「ちょっとアンタ、今何て言った?」
 「その上耳も遠いらしいね。困るね、砂恵。」
 つっかかりを無視して、白莎は真剣に困った様な顔をした。そして隣に立っている砂恵に話し
掛けた。しかし、どうしたことか砂恵が視界に入らない。隣にいるとばかり思っていた砂恵は、
いつのまにか白莎の後ろに隠れていたのだ。足もちょっぴり震えている。どうやら怖いらしい。
まあ、普通の女の子にとっては相当迫力のあるガンつけ合戦だったという事は確かだが。
 「あら、そっちの子も可愛がって欲しいの?」
 女たちは怖がっている砂恵に目を着け、そっちから崩しにかかった。
(あーあ、仕方ないなぁ)
心の中で溜息をつきつつ、白莎はこの場をどう逃げ切るかを考えはじめた。すると誰かが自分の
前にスッと出た。それは、意外なことに砂恵だった。さっきまでふるえていたのに。
「あの、私達いま忙しいので、戯れ事なら後にしてくれません? ほらっ、行くよ、青梅。」
 砂恵はそういい捨てると、向こうに反論の暇を与えずに白莎を引っ張って行った。前よりも足
早に、そして力強く。やはり少し緊張しているのかも知れない。手からわずかなふるえが伝わっ
てくる。それにしてもかっこよかった。
(実は砂恵って結構いい性格をしているのかも知れない。気を付けておこう、、、、)
白莎は引っ張られながら、そんなことを思った。 
結局2人は、ただ出場者を眺めたり、おしゃべりをすることになった。けれども別に不満がある
わけではない。もともと見たいだけの砂恵と、出る気なんぞこれっぽっちも無い白莎なので、お
互いに不満はないようだ。しばらくは、みんなの服装や選曲についての勝手な批評などをしてい
た。そのうち、砂恵がこんな事を言ってきた。
「でもさっきは驚いちゃった。青梅って怖いもの知らずなの?」
驚いた白莎は砂恵の顔をのぞき込んだ。心底感心している様な表情だった。事情がいまいち飲み
込めない白莎は、きょとんとした顔をして返事をした。
「えーそうでもないよ。だってあんな女どもなんて、、、、」
「えっ、もしかして青梅、知らないの?」
 砂恵がさらにびっくりした顔をする。白莎はますます訳が解らなくなった。
 それを見取って砂恵は言葉を続けた。
 「あの人達ってねぇ、最近売れ出した、‘美少女いっぱい’っていうのがセールスポイントの
バンドなんだよ。‘Roses’っていって、ここら辺でめちゃめちゃ人気のあるグループなんだか
ら」
 最近引っ越してきた白莎にそんな事が分かる筈がない。しかしここでそんな事をいうのもなん
だと思い、適当に合わせる事にした。
 「へぇ、そうなんだ。でもさ、何でそんな売れっ子がこんな所に居るんだろうね。オーディシ
ョンに出るわけでもあるまいし」
 その言葉を聞いて、待ってました、とばかりに砂恵が答える。その手の情報を耳に入れるのが
好きらしい。
 「そりゃあモチロン‘偵察’ってやつよ。将来自分たちのライバルになりそうな子が居ないか
どうか見に来てるのよ。青梅なんかもチェックされてたりなんかしてぇ」
 そう言うと砂恵は冗談半分の視線を白莎に投げかけてきた。
 「ンな事無いって」
 白莎のさめた返事を聞いていたのか、いなかったのか。砂恵は急にぽんっ、と手を打って、満
面の笑みと共に話し始めた。
 「あ、そういえばねぇ、、、、、、」
 砂恵が芸能人の裏話を始めた。話が延々と続きそうだと見て取った白莎は、一人、考え事を始
めた。

 何を考えていたのか。あんまり考えすぎて、最初の方のことなど忘れてしまった。とにかくよ
ほど意識が深みに落ち込んでいたのだろう。何しろ、彼女の声さえも耳に入らなかったのだから。
そう、あの人の声さえも、、、。
 「白莎さ〜ん。大丈夫?」
 「、、、、、っうぇっ!?」
 無論、驚いた。何か聞こえるなー、とは思っていたのだが、どうやら意識下にはなかったらし
い。
 「ちょっと、何て声出してるんですか。」
 やっとショック状態から抜け出して、そろそろと顔を上げる。知った声だった。そして知った
顔だった。
 「あ、梅さん。」 
 そう、梅さん こと 山咲小梅。白莎を必死に呼んでいたのはこの人だったのだ。梅さんは父
の妹に当たる人で、今回の引越もこの人の近くに住む為にしたものだった。いわゆる‘親戚同士
の助け合い’をしていく為だ。彼女は陽気で、大きな声が特徴的な人だった。白莎はすぐにこの
人になついた。それ以来、こうしてお世話になっている。身体があまり丈夫ではない母に替わっ
て、買い物や子供の送り迎え等を請け負ってくれているのだ。
 「『 あ、梅さん』じゃないですよ。さっきからずーっと大声で呼び続けているのに、さっぱ
り気づかないんですもん。まったく、なにしてたんです?」
 はっとして当たりを見回すと、確かに。大勢の観客の視線と、警備員の迷惑そうな顔が目には
いる。つい、耳が真っ赤になっていやしないかと、手を触れてみる。大丈夫の様だ。白莎は一呼
吸してから、声のトーンを落として梅さんに答える。
 「ごめん、ちょっと考え事してたんだ。それにしても何の用でこんな所にまで、、、、、。」
 「弘さんから、あなたに手紙が来てたんですよ。」

そのことばをきいて何かがぴんっと白莎の心の中で張り詰めた。
、、、弘伯父さん。彼の周りを取り囲むミステリアスな雰囲気は、初めて会った瞬間から白莎の
心を捕えて放さなかった。恋心、などというものではない。何か一線通じたものが在ると、本能
的に感じ取ったのだ。彼もそんな視線に気付いていた。彼と会ったのはほんの数回しかない。け
れどもそうした心の通いによって、二人は深くお互いを感じ会っていた。弘は研究者だ。あまり
にも家にいないので、親戚は誰一人として彼の研究内容を知らなかった。ただ、いつもどこかの
研究所に缶詰にされているところを見ると、一般公開できないような仕事に就いていることは確
かだった。そのせいか、彼は一族の中でも最も寡黙で、手紙のやりとりも滅多にしない人だった。
まあ、時たま電報のような手紙が来はするのだが、、、、、。
トクン、白莎の胸は高鳴った。そんな伯父さんが、私に手紙をくれた、、、、。優越感と驚きが
入り交じったような感覚が体中を駆けめぐった。しかし、それと同時に幾ばくかの恐怖をも感じ
た。弘は今ドイツの研究所にいるはずだ。何故わざわざ手紙を書いてよこしたのか。遊びに来て、
というのでもないだろう。
「そ、それで伯父さんは何て、、、、、。」
「あなた宛ですもの、勿論読んじゃいませんよ。」
不安になった白莎は、慌てて梅さんに聞いた。
「そう、、、、よね。それで何処にあるの。」
 梅さんは、やれやれ、と言う顔をして一封の封筒を取り出した。
「ここですよ。でもねえ、なんだかどろどろになっていて気持ち悪いったらありゃしませんよ。」
 「ありがとう。」
 白莎はふるえながらその封筒を手に取った。梅さんの言うとおり、それはかなり汚れていた。
宛名は雨でにじんだように薄れていた。封筒には泥とインクの色が染み込んでいて、ぐしゃぐし
ゃだった。
 白莎は封筒を開けた。
   ピリピリピリ、、、、、、 
 封筒に染み込んでいたインクは、便箋までをも染めていた。中から取り出した便箋は、封筒よ
りもひどい状態だったと言えよう。なにしろ、その用途の8割が消えていたのだから。そう、字
が。そして下にある文こそが、白莎が苦心して読んだ手紙の内容である。

      ひろし 開発       
      ドイツ  日本         
         ドラミ   する 

 白莎はもとよりこういう暗号が好きだった。それに加え、弘からの手紙だということもあって、
この手紙を解読しだした。
「 ひろし、かいはつ、、、、。伯父さんが何か発明したのかしら、、、。それとも何処かの開
発所にいるってことかしら」
 「ねえねえ、どうしたのよ。何だったの?」
 完全に部外者となっている砂恵には何がなんだか分からない。そして困り果てていた所に、頼
みの綱であった白莎が訳の分からない事を呟き出したのである。問い正したくなるのも無理はな
い。しかし完全にシャーロックホームズ化している白莎には聞こえていない。
 「ドイツと日本はそのまんま国名でいいわね。後はっと、、、、ドラミ、する、、、、、」
 「ねえってば、白莎?」
 構ってもらえないのに馴れていないような砂恵はしつこく食い下がった。すると白莎は突然砂
恵の方を向いた。そして、、、。
 「分かった!! 砂恵、解けたよ」
 振り向かないものとばかり思っていた白差がいきなり振り向いたのだからたまらない。砂恵は
思わずしりもちをついてしまった。かなり痛い。
 「、、、、って、あれ砂恵どうしたの? しりもちなんかついて」
 「ん、もうっ」
 さっきの厳めしい表情とは打って替わってとぼけた顔をした白莎に、砂恵は文句をいう気も失
せた様だった。当たり前だ、目の前で大きな目をぱちぱちとさせ、無心の表情で自分の事を気遣
っている人間に悪態などつけるわけがない。
 そんな砂恵の内心の葛藤などにはさっぱり気づかない白莎は言葉を続ける。
 「ま、いいや。じゃあこれから探偵白莎の解読文を発表しまぁす!」
 「はいはい、、、、」
 妙にはしゃいでいる白莎は、自分の事を‘探偵’呼ばわりまでしている。おもわずやけになる
砂恵。そして引き続き白莎が発表した文章は以下のとおりだった。

      ひろしの開発物を受け取れ。       
      ドイツから日本に帰って来ている。              
      場所はドラミが案内する。

 斜めの字の所は、白莎が後から書き足したものである。自分がやってのけた大仕事に感動して
いる白莎に、退屈そうな砂恵の声がかかる。
 「ねぇ、大体の事は分かったんだけどさ」
 「何か問題でも?」
 自分のしたことに手落ちなどなかった筈だと思いながら砂恵に尋ねる白莎。
 「いや、大したことじゃないんだけどね。、、、“ドラミ”って何なの、それとも誰?」
   ずべっ
 白莎は思わずこけてしまった。しかし考えてみれば当たり前。砂恵はドラミに会ったこともお
ろか、私から聞かされた事も無いのだ。ドラミとは、何を隠そう、梅さんの事だ。弘だけが梅乃
の事を、ドラミと呼んでいるのだった。どうやら、ころころと肥っていてしっかり者なのが、こ
の名前の由来のようだ。
 「つまりね、砂恵。完結にいうと”ドラミ”っていうのは梅さんの事なの」
 「へぇ。でもどーして? ねえ、なんで?」
 はあぁー、と白莎は溜め息をついた。どうやら最初から説明をしていかなければいけないよう
だ。

 「ああ、オッケー、オッケー。そういうことね」
 砂恵がこの言葉を発したのは、大分時間が過ぎてからのことだった。ホールには人っ子一人い
ない。オーディションはとっくのとうに終わってしまっていた。今がらんとしたホールに残って
いるのは、砂恵と白莎、それに辛抱強く待っていた梅さん、それと声をかけるにかけられなかっ
た警備員さんだけだった。
 「はー、疲れた」
 今までしゃべり過ぎたせいか、消え入りそうな声で白莎は呟いた。それに比べ、砂恵はあっけ
らかんとしている。
 「さて、話も理解したことだし、これからどうするの? うっ、白莎?」
 どんなに図太い神経を持つ砂恵でも、疲れ切った白莎の睨みには恐れを抱いたようだ。確かに
白莎はすごい顔をしていた。まあそれも無理はない。なにしろ物分かりの悪い砂恵に理解させる
ために、同じ話を幾度となくしたのだから。
 「‘これからどうするの?’ですって? 砂恵ぇ、あんたはぁー、、、」
 「あっ、白莎、落ち着いて。ほ、ほらっ。怒るのは美容に良くないっていうし、、、、」
 「あの、、、」
 気迫に押されてか、じりじりと後退を始めた砂恵。鬼気に迫る表情をしている白莎。突如その
上に、実にのんびりとした、それでいて気の弱そうな声がかかった。
 「あのー、もうとっくに閉館してるんですけどねえ」
 はっと表情を変えて上を見上げる二人。そこに居たのは、先程から辛い思いをして二人の会話
を聞いていた警備員さんだった。
 「すっ、すみません」
 「いますぐ出ていきますから。御苦労さまでした」
 慌てて謝る二人だった。ふと玄関の方を見てみれば、梅さんが帰り支度を済ませて待っている。
(は、早い、、。)
 梅さんとしては、さっさと帰りたかったのだろう。夕飯の買い物もあることだし。

 帰り道。砂恵とはさっき分かれてしまった。隣にいる梅さんをみあげてみると、無表情だ。話
しかけづらい。けれども白莎は、勇気を奮って話しかけた。
 「ねえ、梅さん?」
 「何ですか」
 白莎は少しほっとした。言葉を続ける。
 「弘伯父さんの手紙に、”ドラミが案内する”ってかいてあったけど、何か知ってるの?」
 「ええ、知ってますよ」
 「ひどいじゃない。何も言ってくれないなんて。手紙を渡してくれたときも、、、」
 「聞かれませんでしたから」
 白莎はやや頭に来ていた。人が一生懸命暗号を解いていたときに、梅さんは分かっていたのだ。
たとえ一部だといっても。そのことが白莎を不快にさせた。特に梅さんとは親友のような関係だ
と思っていたから尚更だった。
でもそんなことをいちいち恨んでいるような暗い白莎ではない。それに、今は少しでも情報がほ
しいところだ。あの弘伯父さんに会える可能性があるとなればなおさらだ。
 「そう、それで何を言付かってるの?」
 白莎は内心の葛藤を押し隠して、そろそろと聞いた。
 「私はあんまり教えたくありませんがね」
 「どうして!」
 聞きたくて仕方ないところを抑えて聞いていたのだ。白莎も我知らず、語気が強くなる。
 梅さんは顔色一つ変えずにこう言い放った。
 「あなたを面倒なことに巻き込みたくありませんからね」
 「え、、、、」
 思いがけない言葉に白莎は戸惑った。もっときつい言葉が浴びせられるものとばかり思ってい
たのだ。
 その様子をみて、梅さんは顔をほんの少し外に向けた。赤い顔を見られたくないためだろうか。
 そして落ち着いた声で梅さんは言葉を続けた。
 「それに、私がこの事を教えたということであなたがどうかなったら、姉さんを始めとして親
戚中に合わせる顔がありませんよ」
 「あ、、、、、、」
 そうだ、母が許すはずが無い、そう思うと限りない虚脱感が白莎を襲った。もしここで梅さん
からキーワードを手にしたとしても、弘おじさんに1人で会いに行くことは不可能に等しい。
 その白莎の変化を見て取ったのか、梅さんは小声で付け加えた。
 「まあでも、一応教えてあげますよ」
 「梅さん、、、、」
 驚きを言い募ろうとする白莎の言葉にかぶせるように、梅さんが言葉をつなぐ。
 「家をどう出て行くかはあなたの勝手ですし、あなたの運の強さは私が保証しますよ。十中八
九、私は姉さんに謝らなくていいと思いますしね」
白莎の顔に、みるみる歓喜の色が広がっていく。
 「あ、ありがとう! 梅さん」

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かなり長編になる予定の小説です。
みんなのウケを見て続けるか、こそこそ書くか決めます(笑)
これで全体の27分の1かな・・・・。
いろんなところを書いているので、まとまってお見せできませんが、今だいたい27分の4が仕上がっています(^^;)
では、レス、お待ちしております。