<センチ>七瀬優SS(新生)先行ロードショー(長



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投稿者: 紫苑レイ @ 202.248.232.141 on 97/7/04 19:36:58

In Reply to: <センチ>七瀬優SS(新生)完成しました。

posted by 紫苑レイ @ 202.248.232.141 on 97/7/04 19:34:34

センチメンタルグラフティ
 
<七瀬 優> ショート・ストーリー
  #「星夜−偶然が運命に変わる日」

●七月某日、夜

ふう……。
なんだかもう夜も暑くなっちゃったなぁ。
あっ!?気持ちいい風………。
もう夏なんだ。
アイツが転校していって、もう3年以上も経つのか……。

今、何をしているのだろうか?
私と同じ夜空を見上げ、この星たちを観ているのかな。
それとも……。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
●同日、昼−県立朱之宮高校プールにて

ザッブーン…、涼しげな水しぶきが舞う。

「ねぇ、優?今日帰りにカラオケに行かない?
 本通りのゲーセン横のトコ。 プリクラ撮るついでにサ?
 ね?いいでしょ?」

優子のいつもの勧誘。
別に悪くはないんだけど、こう毎日誘われてもねぇ(汗)
よくもまぁ、飽きないものだわと、つくづく思う。

とりあえず、断ろう。今日は新月だから星観にはもってこい
だし。優子に振り回されるのもゴメンだし…

「ご、ごめん。私ちょっと用事があるから、今回はパス!」

「ええっ!? …ったくぅ、最近つき合いがが悪いゾ!
 ははぁ〜ん?さては<オトコ>だな?ほら、白状なさいっ」

な、なに言い出すのよ!突然!
何でカラオケ断ると<オトコ>になるワケ?

「なになに?七瀬にオトコが出来たってぇ?」

もう、潤子まで!
あなた級長なんだから、他人の戯言に惑わされないでよ。
ホントにもう!

「まぁ、今までいなかった方が不思議よね」

「そうそう、あんた結構かわいいし、スタイルも抜群だし…
 クラスの男子にも結構人気あんのよね……ほら 」

そう優子が指差した先を見てみると、男の子達がこっちを
見ていた。


「なぁ哲哉ぁ、七瀬って<ないすばでぃ>だと思わないか?」

「そうだよなぁ……肌も色白でサ、彼女…着痩せするタイプ
 なのかなぁ?しまった肢体してるし…」


「こらぁ〜っ!男子ぃ!何スケベな目でこっち見てるのよ!」

はぁ…、私をそんな風に見ていたなんて……。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
●同日 昼休憩時間

私は、窓から外を眺めていた。
広島城の堀を白鳥が優雅に泳いでいる。

「これはこれは、黄昏の姫君。何をお悩みで?」

…優子か。今は一人でいたかったのにな。

「ねぇ、優。アンタは進路どうすんの?」

私はその質問にちょっとびっくりした。
まさか、優子の口からその様な言葉が聞けるとなんて、思っても
みなかったから。
そうよね。もう7月だもの。進路を決めないと…。
(優子はやっぱり進学かな?頭イイから)
私はどうなのかしら?何になりたいの?何をしたいの?
ふと、アイツの顔が浮かんできた。

「私…、私は天使になりたい!」

「て、天使ぃ〜っ!?」

優子のすっとんきょうな声がこだまする。
やっぱり、変かな?
天使って、神の代弁者、人を幸せにしてあげるものでしょ?
私は、私を含めて色々な人、皆に幸せになってほしいもの。
それに、その翼で好きな所に自由に飛んで行ける。
アイツの所にも……。

「お〜い、優?聞こえてるぅ?
 アンタ時々ワケわかんない事言うわね。」

あはっ、また自分の世界に入ってたみたい。
でも、ホントになれたらいいなぁ……天使に。

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●同日、夜

私は、夕食を済ませると中央公園へと向かった。

う〜ん、気持ちいいな。
一人きりの夜の公園。
夜空に輝くあの星たちを独り占めにしているカンジ…。
夏の風に吹かれ、あの何百、何千年も前の星の光に照らされていると、
私という存在が<星夜>に溶けていく気がする。

会いたいなぁ…、もう一度アイツに。
会って、この綺麗な星夜を見せてあげたい…。
今、どこで何をしているのかな。
あっ!
流れ星!

「…………………………。」

思わず、もう一度アイツに会いたいってお願いしちゃったけど…。
くすっ。 不純なお願いかな?

さてと………。
そろそろ帰らないと、母さんが心配しちゃうわね。
年頃の娘が、夜遅くまで一人で出歩くものじゃありませんっ!ってね。

あれ?めずらしい……。男の子が一人で夜空を見上げてる。
ふふっ。まるであの時のアイツみたい。
ちょっと、声をかけてみようかしら?

「ねぇ?キミもあの流れ星にお願いをしていたの?」

男の子が振り向く……。それは刹那で永遠の刻。

「!?」

声は出なかった。
懐かしい再会…。
涙が溢れ出てくる。

少年はゆっくりと立ち上がって問いかける。

「君は……。もしかして七瀬…くん?」

それは星夜が叶えた天使の願い。

偶然が運命に変わった瞬間(とき)………。

END