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投稿者:
Qちゃん @ webgate.yamato.ibm.co.jp on 97/6/06 15:36:13
In Reply to: センチみたいな思い出話(ゲームには直接関係ないよ)
posted by Qちゃん @ webgate.yamato.ibm.co.jp on 97/6/06 15:30:09
僕は時間が出来るたび、彼女の家に遊びに行った。
市田がいるときもあったし、僕一人のときもあった。
「・・・でね、こんな所にも行ったことあるの」
彼女と話していると、とても楽しかった。すぐに夕方になってしまう。
「また明日ね。」 「うん」
いつも次の日がとっても待ちどうしかった。
今日は1学期の終業式の日。そして明日からは、夏休み。
これから毎日、畑野さんの家に遊びに行けると思うと、すごくうれしくなった。
でもそれよりも、もっと待ちどおしいことがあった。
実は明日は僕の誕生日だ。いつもは夏休みだから、
誕生日会とかはやってもらったことはなかったんだけど、
今年はおかあさんにむりやりお願いして、誕生日会をやってもらえることになった。
おかあさんは「今年だけよ」って言ってたけど、僕はそんなことは聞いていなかった。
お誕生日会には彼女だけ誘うわけにもいかなかったので、市田と、畑野さんとそれから
何人かの男の友達も呼んだ。
お誕生会の日、みんなからプレゼントをもらった。ボールとか、図鑑とか、いろいろ。
でも、僕が一番嬉しかったのは、畑野さんからのプレゼントだった。
1冊のちいさいノートと、筆記用具であった。
そのちいさいノートは、たぶん文章は彼女のおばあさんが書いてくれたのだろう、
外国の町の説明などが書いてある、手作りの地理事典だったのだ。
僕の知らないことがいっぱい書いてあって、すごくうれしかった。
そして、楽しいひとときは終り、みんな帰っていった。
「ありがとう、また明日あそぼうね」
僕は畑野さんだけにちいさい声でそういった。彼女も、
「うん」
って言ってくれた。
次の日の午後、僕は畑野さんの家にあそびにいった。でも、ブザーを押してもだれも出てこなかった。
おでかけかな?って思った僕は、せっかくだから、市田の家に遊びにいった。
市田の部屋で、僕は言った。
「今日は畑野さん、いないんだね。どっかにいってるのかなぁ?」
そうしたら、市田がすまなそうな顔をして、僕に言った。
「あのね、みき、また転校したの。本当は終業式の日に出発する
予定だったんだけど、お誕生日会があったから一日のばしたんだって。」
僕は市田のいってることがとっさには理解できなかった。
「うそだ、だってきのうまた明日あそぼうっていったよ!」
「ほんとだもん、みきの家にいってみなよ。だれもいないから」
僕は信じられなくって、泣きながらマンションの玄関まで降りた。
どっちに行ったかも知らないのに、そこからずっと外を見ていた。
しばらくして、市田がきたけど、話なんて聞いてなかった。
でも、そのうち泣き疲れてとぼとぼと家に帰った。自転車を忘れちゃったけど・・。
いま、彼女がどこに住んでいるかなんて知りません。
でもあのノートは今でも持っています。僕の宝物です。
いまだに、行ったことの町のことが書いてあります。
いつかは行ってみたいと思います。
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