さよならは言わないで



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投稿者: 年貢 @ pppb7ce.pppp.ap.so-net.or.jp on 98/3/17 19:43:41



アニメ版「あずきちゃん」が、その役割を終えた。
一見ものたりなく思ったが、さわやかなラストだった。

「あずきちゃん」は、あずさを視聴者の感情移入媒体として作られている。
全編を徹して不必要なまでに悪役なヨーコちゃん、甚だ御都合主義な展開、サブキャラの話の時にも関わらずラストで強引にあずさと勇之介が描かれてしまう不条理さ...
まちがいなく、主人公であるあずさを中心に作られた作品と言えよう。
(原作が秋元康という時点でこれは避けられない事なのかも知れない)

だが、他のキャラに全く魅力が無い訳ではない。
誰もが長所と短所を併せ持った素晴らしいキャラクターばかりだ。
(むしろ人格的にはあずさの方が出来ていない場合も多い)
僕は、彼らサブキャラが大好きだった。なぜなら、
"いかにあずさの心的不安が解消されるかをウリとする"あずさ中心の世界において、それでも彼らは精一杯生きていたからだ。彼らの魅力はあずさの世界という呪縛を突き抜けて飛び込んできた。

あずさと勇之介もまた、企画意図による呪縛を受けていた。
単なる性悪女にされてしまったあずさ、理想的男性像の宿命によって理解不能な善人にされてしまった勇之介...
彼らの心は、果たして本当に結ばれたのだろうか。

「あずきちゃん」の魅力は、世界観にあると思う。
美術と音楽が素晴らしい。"そこにある世界"を感じさせてくれる。
スケール膨張式RPGとは別の世界(価値)をきちんと構築している。
「あずきちゃん」を見ていると、なぜだかあたたまる。
おそらくは夢中になって寒さを忘れているせいだろうが...

「あがきちゃん」は、原作とアニメで大きく内容が違う。
原作はもっとドロドロしている。原作ではあずさが中学生になってしまい、ラストも違う。
(原作ではかほるちゃん達など脇役もいいところだ)
テーマ的には全く別の作品と言っても過言ではない。そのくらい違う。しかしきっと、アニメの続きが原作なのだと思う。アニメ版はきっと、「あずきちゃん小学生編」なのだ。

「あずきちゃん」に、僕は何を求めていただろうか。
ノスタルジイであろうか?失敗に満ちた小学生時代を補完する代償行為であろうか?あずさのママに対する思慕であろうか?かおるちゃんに感情移入して涙するためであろうか?
...おそらくはその全てであろう。
しかし一つ確かな事は、「あずきちゃん」は"僕が忘れてしまった何か"を思い出させてくれるような気がした、という事だ。
・・・それが何なのか明確に説明する事はできない。
忘れてしまったのだから。
数値化されていない遠い記憶を完全に復元する事は、できないのだ。
残念ながら。

あずさは、ある意味現実的な性格設定だ。
確かに性格は悪い。だがあのくらいが恋する少女らしいと思う。子供のくせにものわかりがよすぎるとかえって不気味だ。
そして、それが勇之介だ。あんな男、はっきり言っていない。
だが、それでいい。
視聴者に理想を見せる事は、作品が持つ大切な使命の一つなのだ。
そんな宿命を持ちながら明るく生きる「あずきちゃん」のキャラたちが、とっても好きだ。
ラストのケンとヨーコちゃんなんて、めちゃくちゃカッコよかった。そして、あずさと勇之介も好きだ。
無論あずさママも好きだ。
みんな大好きだ。


実を言うと3年間見続けた訳ではないが、
自分としては思い入れのある作品がまた一つ終わってしまった。
彼らの世界の幸福な完結が嬉しくもあり、少し寂しくもある。

さぁ、「あずきちゃん」とはこれでお別れだ。
"忘れてしまった何か"は当然のように僕の横を素通りしていったが、そんなもんだろう。それを垣間見せてくれた「あずきちゃん」に感謝したい。

ありがとう。