ユーロロック紹介(英国編)part6: Genesis
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投稿者:
虚無僧三郎太 @ tproxy.tky.threewebnet.or.jp on 97/7/05 23:11:31
ユーロロック紹介(英国編)part6: Genesis
今でこそプログレ5大バンドに挙げられるGenesisだが、そう評価されるようになったのは80年代になってからのことであり、もうPOPS色に染まりきった頃であった。プログレをやっていた70年代前半には、イタリアやフランスでは評価が高かったが、本国イギリスではほとんど見向きもされず、70年代後半他のプログレバンドが衰退してきた頃になってようやく脚光を浴びるようになった。
80年代のGenesis & P.コリンズ、P.ガブリエルの活躍はまさにめざましいものだったが、すでにプログレの音は奏でてはいなかった。人気POPSバンドがかつてはバリバリのプログレバンドだった、ということへの好奇心や懐古趣味が70年代前半のGenesisの作品群を発掘したと言えるかもしれない。しかしその影響力は強く、80年代において新たにプログレバンドとしてデビューしたグループのうちほとんどが、Genesisのパクリとも言われている。例えばMarillion(何回か後でやります)などは、Genesisのコピーバンドと酷評されているが、80年代当時はそのようなバンドがゴロゴロいたのだ。一般にこれらのバンドはGenesis childrenと呼ばれている。
「From genesis to revelation」(邦題:創世紀)
当時のメンバーは、P.ガブリエル、T.バンクス、M.ラザフォード、A.フィリップス。69年の作品でデビュー作なのだが、評価すべきところがほとんどない駄作。P.ガブリエルは、これを汚点と感じ、隠滅をたくらんでいるという噂も(笑)。しかし実際に、真のデビュー作は次の「Trespass」だと言っているそうだ。
「Trespass」(邦題:侵入)
熱狂的なGenesisファンの間でも、こちらがデビュー作とされている。確かにGenesisの基本形はこのアルバムで確立されたようだ。しかし、A.フィリップスの12弦アコーステックギターだけが目立っているように聞こえる。Genesisのメンバーは比較的大人しい性格の者が多く、それが曲調にもあらわれているようで、曲の大半がのどかで牧歌的。The Knifeは名曲だが、めずらしく攻撃的な曲のため浮いてしまっている。
「Nursery Cryme」(邦題:怪奇骨董音楽箱)
このジャケットはヤバイんでないの?特に今は! というくらいの気味の悪いジャケット。クリケットをする少女を描いたものだが、そんなもんを球にするな!
さて本作より、P.コリンズとS.ハケットが加入し、全盛期メンバーがでそろうことになる(A.フィリップスはサヨウナラ)。
タイトルのcrymeは辞書を引いても見あたらない。おそらくNursery Rhymeのもじりであろうと言われている。Nursery Rhymeというのは"童謡、子守歌"という意味だが、オープニング曲のMusical Boxは、まさにこのアルバムのタイトルを象徴しているかのようだ。この曲のモチーフはマザーグースからであるが、民話や童謡といったものは本来はかなり怪奇でおどろおどろしいもの、P.ガブリエルはまさにそれをこの曲で表現している。なにはともあれ必聴!といえる名曲。
「Foxtrot」(邦題:あれ、あったっけ?)
名曲Supper's readyを収録している。しかし、この頃は名曲が次から次へと出ていた。
この辺からP.ガブリエルのステージでの奇行?が目に付くようになってきた。派手なメイクをほどこし、変な被りものを付けた彼のパフォーマンスは、確かに曲調とあいまって、さらなる幻想的効果を創出していた。が、それがためにSirの称号を剥奪されたとか、されないとか。
「Genesis Live」
73年2月の英国でのツアーを収録。話によると、Genesis本人は出したくなかったのだが、営業政策によりリリースが強行されたとのこと。実はあまりお薦めではない。というのは、ちょうどこの頃のライブを収録したブートレッグがいくつかあり、そちらの方が出来がよいからなのだ。
「Selling England by the pound」(邦題:月影の騎士)
これまた名曲のFirth of Fifthを収録。シンセサイザーの大幅導入により、Instrumental
パートが充実。メロディーラインもより一層美しくなっている。
「The lamb lies down on Broadway」(邦題:幻惑のブロードウェイ)
ファンの中でも評価の分かれる大問題作。主人公のプエルトリカン・レエルという青年が、兄弟を捜してニューヨークを彷徨うという物語が綴られているが、実は自分の心の中を彷徨っているのであり、最後には自分自身を見いだすというものだそうだが、10回程度聴いた位ではまったくわからないと思う(実は私もまだよくわからない)。とにもかくにもGenesisにおけるP.ガブリエルの役目はこれで幕を閉じる。
その後のGenesisはというと、P.コリンズがヴォーカルにおさまり、S.ハケットが抜けて3人体制になった後は、怒濤の快進撃を続ける。80年代における全米No.1シングルの数は、M.ジャクソンよりGenesis & P.コリンズの方が多いのではとさえも言われている。しかし、明らかに曲調はかつてのものと隔世の感があり、プログレグループとしてのGenesisは、あくまでP.ガブリエルと共にあったと私は考えている。
次回は、英国編part7: Canterbury Music。
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