ユーロロック紹介(英国編)part5: Pink Floyd



[ このメッセージへの返事 ] [ 返事を書く ] [ home.html ]



投稿者: 虚無僧三郎太 @ tpro2.tky.threewebnet.or.jp on 97/7/05 02:08:11

ユーロロック紹介(英国編)part5: Pink Floyd

 67年〜69年までのPink Floydを、個人的に第一期フロイドと呼んでいる。
 この時期には4枚のアルバムを出しているが、曲はほとんどBritish PopsかPsychedelic
な実験作である。当時のリーダーは、既に神格化?された感のあるシド・バレット、ただし彼は途中で発狂し前の2作で脱退している、その後音楽的な中心はロジャー・ウォータースに移っていく。なお、2作目よりデイブ・ギルモアが加入している。
 割と有名な逸話であるが、S.キューブリックの名作「2001年宇宙の旅」の音楽は当初Pink Floydが担当する予定だった。しかし、シドの発狂により、結果的にはキャンセルとなったが、もしも予定通りサントラを彼らが作っていたら、あの有名な「ツァラツストラはかく語りき」は使われてはいなかったのか。
 70年〜83年までのR・ウォータース主導の時期が、第二期。ここからは各アルバム毎に歴史を追っていこう。

「Atom Heart Mother」
 小作4曲は、それなりにまとまりよく仕上がっているが、やはり25分近くに及ぶ大作・原子心母の前にはかすんでしまっている。しかし、この作品で一番注目すべきは当時の日本盤ジャケットの帯にかかれた文字だった。そこには次のように書かれていた。

ピンク・フロイドの道はプログレッシブ・ロックの道なり!

何を注目すべきかというと、"プログレッシブ・ロック"と言う言葉は、実はここで初めて使われたということなのだ。本作が発売されたのは、1970年10月10日だった、そして「In the court of the Crimson King」の発売は1969年10月10日のこと、奇しくもちょうど1年後にあたる。しかし、実はこれが悲劇の始まりだった。クリムゾンとフロイドの音楽はまったくと言っていいほど異なる。なのに同じプログレの範疇に入れられてしまったことから、プログレの概念について混乱が生じてしまったのだ、と私は考えている。結局我々は広義のプログレだの狭義のプログレだのといって苦し紛れに説明をする羽目になってしまった。先人たちを責めているわけではないが、プログレの定義の混乱・曖昧の原因はこのアルバムの帯から生じたものなのだ。

「Meddle」
 原始心母との間にほんとは「Relics」という作品が発売されているが、これは第一期フロイドのベストアルバムなので割愛する。
 さて本作には、エコーズが収録されている。この曲は20分を超える長さを誇る曲であるが、間延びした部分が多く、圧縮すれば5分程度の曲なのだ。しかし、その冗長的な部分が逆に、時間と空間の雄大さを感じさせるという摩訶不思議な魅力を持つ作品。聴いてみると20分という長さは感じさせないのだ。
 本作にはもう一曲、稀代の名曲One of these daysも収録されている。邦題「吹けよ風、呼べよ嵐」といえば誰もが聞いたことのある題名だと思う。いまでもライブでは一番盛り上がる曲だ。
 この前後にPink Floyd in Pompeii のフィルムも公開されている。ビデオでも見ることは出来るが、かつての日本版はクソでしかなかった。音はモノラルだし、「狂気」のリハーサル部分は全て割愛という愚行がなされている。

「The dark side of the moon」
 本作の前に「Obscured by clouds」を発表しているが、映画のサントラ盤なので割愛する。
 さて本作・邦題「狂気」はプログレ史上最も商業的に成功したアルバムとなった。ビルボード誌上に570週連続チャートインし、その後もたびたび顔を出していたので、現在では通算800週以上になっている。売上枚数は集計不能。効果音をふんだんに使い、計算尽くで作られた曲の数々には圧倒されるばかりだ。ラストのEclipseを聴いた後は、声も出ない位になっているという不朽の名作。

「Wish you were here」
 タイトルのyouは、シド.バレットのことであると言われている。A面を大作1曲で使い果たし、B面には小曲を数曲という、フロイドお得意のパターンであるが、何故かA面の大作「狂ったダイアモンド」とB面のギャップが大きい。後で聞いた話では、これはウォータースとギルモアの確執によるものだとのこと。他のプログレグループと違いメンバー変遷がほとんどなかったフロイドにも徐々に亀裂が生じ始めていたようだ。

「Animals」
 モチーフは、「動物農場」より。しかし、この作品に収録されている、Dog、Sheepは実は新作ではなく、前作「Wish you were here」の「狂ったダイアモンド」と同時期に作られ、ギルモアのアイデアではこの3曲で一枚のアルバムを作る予定だったもの。お蔵入り予定が日の目を見たと言うところだろう。曲は圧倒されると言うか、難解と言うべきか。フロイドのコンサートが静寂の嵐と言われたのはこの頃。ステージ上で豚が飛ぶようになったのもこの頃。

「The Wall」
 2枚組となった本作は、ウォータースの総決算というべき作品。全米だけで1200万枚。全世界では1900万枚のセールスは、現在でもそうそう記録できるものではない。それでも「The dark side of the moon」の売上には及ばないと言われている。
 全26曲が、主人公ピンクの内面を描いた物語を構成している。映画にもなっているので、そちらをみると少しはストーリーが解るようになるかも知れない。
 さて、このころのフロイドのステージは壮大である。とにかく莫大な金をかけステージに壁を作り最後に破壊するというもので、一回の演奏で数百万ドルの赤字が出ていたそうだ。「ステージは道楽だから」と彼らはよく口にしていた。アルバムがこれだけ売れると、多少の赤字は痛くもかゆくもないらしい。

「Final Cut」
 前作「The Wall」は、実は3枚組であり、残る1枚が本作にあたるそうだ。前作と音楽性は似ても似つかないのだが。セールスとしては非常に寂しい結果となった本作は、筋金入りのフロイドファンは、狂喜乱舞しているそうだ。とある音楽評論家は「本作を凡作というひとは見る目がないと言ったそうだが、そうすると私は見る目のない人間ということになるな(苦笑)。
 なお、本作でR.ウォータースが抜け、第2期が終わる。

 第三期は、87年以降。D.ギルモア主導の時代である。
「A momentary lapse of reason」が87年
「The division bell」が94年に発売されている。2作とも全盛期を過ぎた感があるが、よく言えば安心できる作りといえようか。なぜか、良いとか悪いとかという評価をする気を起こさせない。
 あれは88年のこと、初めてフロイドのライブを体験できた。日本の会場が狭いことと消防法によりあまり火を使えなかったのは残念だったが、その迫力は充分すぎるくらいだった。初来日時の71年の箱根アフロディーテのコンサートも日本で初めてライトショウを行った事で知られている。とにかく伝統的にフロイドのコンサートは大規模で有名なのだ。最新のライブビデオの「Pulse」を見ると、またさらに一段とスケールが大きくなっている。メンバーがもう50才になり、あまり大した演奏が出来ないので、演出でごまかしているのだという輩もいるが、光溢れるステージはまさに圧巻そのものだ。
 幾多くのプログレグループが時代の波にのれずに消えていったのにくらべると、本当に良い意味で時代をのりきっているフロイド。願わくばもう一度日本に来て、そのステージを見せてほしいものだ。

 次回は、英国編part6: Genesis。