ネタバレ感想文「グッド・ウィル・ハンティング旅立ち



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投稿者: 黒い板(最近新作映画ロクなモノがないなぁ) @ 133.97.169.161 on 98/3/21 02:52:20

!!!!!!!!!!!!!!!!注意!!!!!!!!!!!!!!!!!!
この作品を御覧になっていない方はお読ににならないで下さい。また、御覧になられたが、
感動の涙を流してしまったという方もお読みにならないことをお勧めします。気分を
害される危険性があります。それでも読みたいという方、上記以外の方はお読み下さい
!!!!!!!!!!!!!!!!注意!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

この作品、なんか薄味。ハリウッド・メジャーだからしかたないんだけど。

粗筋は『心に問題のある“天才”がある人との交流によって心の扉を開き、本当に大切な
モノを見つける。』というものである(たぶん)。で、それなりに感動的であり、それな
りに楽しめる作りになっているのだが、何か物足りない。なぜか?

それは、主人公が数学の“天才”であるところではないか。この主人公は大きく二つの問
題を突きつけられている、(1)「人とどう向き合い、どう生きてゆくのか。」(2)「己の
才能とどうつきあっていくのか。あるいは関係なく生きるのか。」である。

(1)のほうはロビン・ウィリアムス演じる教授によって解決される(と、描写されてい
る。この点については後で)。(1)を解決し主人公が必要とする、あるいは主人公を必
要とする人のもとへと、ハイ・ウェイを進むスタッフロールからは希望に満ちた未来を予
感させる。“彼女との関係、さらに今後の人生における様々な人間関係において、人並み
に上手くやってゆけるであろう”と、観客に想像させる。

しかし、このエンディングからは主人公が己の才能とのつき合い方は全く見えない。
友人に『朝迎えに行って、出てこないスリルが・・・(略)』『才能を無駄にするな(に近
い内容)』と諭されるというシーンがある(非常に感動的)。
この主人公の友人は【主人公が街を出てゆくとき(旅立ち)】=【才能を生かすとき】と
言っているのだが、この作品のラストの【旅立ち】は【オンナを追っかけて行った】だけ
である。

上記のシーンのおかげで『主人公を迎えに行った友人』と『旅立つ主人公』を交互に見せ
るラストにおいて、観客に(2)が解決したかのように感じさせている。

さらにこのシーンでは主人公が“就職を蹴って”オンナを追っかけるというまさかのどん
でん返しと、ロビン・ウィリアムス演じる教授との対面なき別れの感動によって、観客を
ごまかしている。
あぁ、なんと上手い脚本、なんと上手い演出であろうか。映画の“魔術”は恐ろしい。

こんな風に誤魔化すなら初めから主人公の“天才”という設定を捨てればいいのに。ある
いは“天才”であるが故の苦しみに絞るなり(「フェノミナン」みたいに)、“天才”のま
わりの人間を主人公にした物語にしたほうがよかった(「アマデウス」みたいに)。あま
り描かれてないがランボー教授と助手は主人公やロビン・ウィリアムス演じる教授なんか
より、ずっと人間らしさが描かれていてよかったんだけどなぁ。惜しい。

“距離をおかないと人間とつきあえない”という主人公だが実際に作品の中に描かれてい
るものは過去に似たテーマの作品と比べると平凡すぎる。ウディ・アレンの作品群やエド
ワード・ヤンの「恋愛時代」のほうがより鋭く、より深く描かれている。トラウマという
モノを持ってくること自体が安易だし、トラウマとして幼少の頃の虐待を選ぶというのも
安易だな。一番わかりやすいから使ったんだろうけど、観客をナメてるとしか思えん。『君
は悪くない!君は悪くない!君は悪くない!・・・・・』というのも宗教か催眠術程度だ
し。自ら悟るようにしなければ。このあたりが、この作品を薄味と感じてしまった原因で
ある。
でもこのシーン、力技で感動させられるからスゴイよこの映画。

以上より、僕にとっては平凡な作品という結論に達した。