【私小説】李紅蘭的四方山話 その6(長いっす)



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投稿者: 雪組隊長 @ gw.jpo-miti.go.jp on 98/3/02 12:04:27

その6

 (場面は再び回想シーンに変わる。)作者駐

『ええかっ!この次までにちゃんとしたモンになっとらんのやったら、おどれらぁ、タダでは済まさんからな。そのどたまカチ割ったるでぇ!!覚悟しとけ!!』
「ひゃあぁぁ。なんともすごい声やなぁ。耳がじんじんするわ。このドア、シルスウス鋼で出来とるんやろ?ビリビリいっとるでぇ。」
ドンッ!!ゴツッ
「あ痛っっ!!」
 勢いよく開いたドアに、したたか顔を打ち付けた紅蘭は、一瞬気が遠くなった。
「うち、今日はよく目ぇ回す日ぃやなぁ..厄日やろか...」
 薄れてゆく意識で、そんなことを考えていると、頭がしびれるような大声で我に返った。
『おいっ!大丈夫かっ!!』
「うっ 今うちの心臓一瞬止まったでぇ...」
『なんやぁ、まぁたお前かい。よく目ぇ回すやっちゃなぁ。しっかりしいや。あらら、でっかいタンコブ出来てるやないか!いま医務室連れてったるからな。』
 雪組の隊長である薩摩中尉は、ひょいと紅蘭を抱え上げて、医務室の方向に歩き出しながら、今出てきた部屋に向かって、
『何笑っとるんや!阿呆どもがっ』と怒鳴った。
そして、抱えた紅蘭の重さなど感じないかのように廊下をすたすたと歩きながら、
『まったくここの奴らは気に入らん奴らばっかりやで!人の話はまともに聞かんは、あれこれ屁理屈こねるは..人が怪我しても笑うとるとは、なんちゅう奴らやねん・・』
と一人ブツブツ文句を言っている。
 抱えられた紅蘭は、またボォッとしてきた意識の下で、頬に当たる風を感じていた。
「頭を打ったせいやろか・・身体がふわふわしとるで..空を飛ぶっちゅうのんはこんな感じなんやろか..?」
 こんな、不思議な想いが頭の中を駆けめぐっていた。
 その一方で、彼の話す関西弁の文句が妙にはっきりと聞こえているのだった。
「せやせや!もっと言ったりぃ!!」
 半分意識がない紅蘭の口から、そんな言葉が飛び出した。
 帝都に来てからは、紅蘭がとんと口にしたことがないような軽口であった。
 意識が混濁していることがそうさせるのか、人見知りの用心深さなど少しも感じさせない、明るい口調だった。
『なんや、聞いとったっんか? ん?お前も関西モンか?中国人みたいな格好しとるさかい、わからんかったで!』
「うちはれっきとした中国人や、おっさん!中国人が関西弁喋ったらあかんのか?そら偏見ちゅうもんやで!」
『頭にタンコブこさえとる割に元気なやっちゃな!それだけ元気やったら一人で歩きぃ!』
「い・や・や! いったい誰のせいでこんなモンがうちのおつむにあるんやろなぁ?責任取ってもらおか?」
『わっはっは!!』
「あはははっ」
 けが人とは思えない紅蘭の楽しそうな声が、あたりに響いていた。
  続く