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投稿者:
雪組隊長 @ gw.jpo-miti.go.jp on 98/3/02 12:02:29
その7
二人が医務室まで来ると、風組司令藤枝あやめ中尉はまだそこにいた。
『あら、薩摩さん!どうなさったんです?ずいぶんと楽しそうですけど?』
『ああ、藤枝司令、実はこのお嬢さんが..』
「やっほー!あやめは〜ん。うち、どうもせんでぇ!! いややなぁ、この熊はんは! お嬢さんやて 照れるやないかぁ。うち、そんなん言われたの初めてやぁ。きゃはははは」
『まぁ、紅蘭!いったいどうしたの?』
『ははっ お前は、おもろい娘ぉやなぁ。いや、実は・・・・・』
薩摩は、あやめに先ほどの研究室での顛末を手短に話した。
『まぁ 大変!紅蘭!紅蘭!しっかりしなさい!!』
びっくりしたように紅蘭の頬を軽くたたきはじめたあやめを見て、薩摩は怪訝そうに、
『意識はしっかりしとるようですよ。わしらここまで来る道々話しとりましたから。』
と言った。
『それがおかしいのよ!この子は人見知りで、知らない男性とあんな風に話す子じゃないの!!』
『はぁ..そうですか?!』
「痛っ 痛いでぇ あやめはん!何しますのん? うち、どこもおかしくなんかないでぇ!! ちょっとぉ、熊はんからもなんか言うたってや!!」
『く.熊はん・・??』
『ぷっ』
『藤枝司令..何です?その「ぷっ」ちゅうのは?』
『ご、ご免なさいっ..ちょっと失礼するわねっ!すぐ戻るから..ぷぷっ』
あやめは、口を押さえるようにして、医務室から飛び出していった。
開けたままのドアから、大笑いするあやめの声が聞こえてきた。
『???どうしたんや、藤枝司令は?』
「さぁなぁ?なんぞおもろいことでもあったんやないの?」
『ふ〜ん..?!』
「おっさん、ええ性格しとるわ!鏡見たことないんかい。」
『お前には負けるわい!だいたい見ず知らずの人間をとっ捕まえて、熊やのおっさんやのはないんやないか?』
「あははっ そうやったか? すんまへんなぁ、熊はん。」
『おいおい、かなわんなぁ。 わっはっは』
「ところで、さっきは何怒ってはったん?」
『ん?あれか?しょうもないとこ聞かれてもうたなぁ..でもな、・・・』
薩摩は、装備の欠陥のこと、そしてそれがどんな結果をもたらしたのかを紅蘭に話して聞かせた。
そのころには、さっき部屋を飛び出していったあやめも戻ってきていた。
『俺たち雪組は、炎の中や酷寒の土地ちゅう極限状態の場所で戦うための部隊や。そのための訓練も受けとる。けどな、わしら、やっぱり人間や。限界なんてたかが知れとる。人なんて弱いモンやで。それが極限状態になればなるほど現れてくる。そういうときに、自分の装備に不安があったら、やってられんで!』
「うんうん、よく分かるでぇ。」
『それで、俺が、何とかそいつを改善してもらおうとここに来たちゅうわけや。具合の悪いところはよ〜く分かっとるしな。』
「そりゃ もっともや。」
『ところがや、さっきの奴らときたら、理屈ばっかりこねおって何にもしてくれん。な〜にが最新の霊子理論に基づいた〜や!理論はそうかもしれんけどな、実際使えんモンは使えんのや!使えんモンしか出来ん理論なんちゅうのは、間違っとるんや!それが分かっとらん!!』
「まったくや! よっしゃ!うちが何とかしたろ!!」
『ああっ?お前がか?』
「なんや!しっつれいなおっさんやなぁ!!うち、こう見えても機械いじりにはちょ〜っとばかし自信があるんやで!!大体、うちは「お前」やないど!李紅蘭っちゅう立派な名前があるんや。帝国華撃団・花組 李紅蘭ちゅうたら、うちのこっちゃ!どや!驚いたか?」
『ほぉっ!お前、花組か?あそこは実戦部隊と聞いとったが、こんなちっこいのが黒の巣会の奴らと戦えるんかいな? お前ホンマに花組かぁ?』
「李・紅・蘭や! ムッキ〜!人の気にしとることをぬけぬけと・・ますます失礼な熊はんやな!こんなこと嘘ついてどうすんねんな。うち、嘘と納豆は大っ嫌いや!信じられんのやったら、あやめはんに聞いてみたらええで。」
『わはは 分かった分かった! 紅蘭君..でいいかな? わしも嘘と納豆は大嫌いやしな。』
「こ、紅蘭君?! ..なんかこそばゆいなぁ。 紅蘭でええわ。」
『じゃ紅蘭。 でも何で花組のモンがこんな所におるんや?ここは風組の本拠地やろ? 花組は確か銀座本部と聞いていたんやけどな。』
「熊はん「光武」て知っとるか?」
『うん? 今度、紅蘭たち花組が使うことになる最新型の霊子甲冑のことやろ?確か虎型霊子甲冑・・とかいうたなぁ。』
「せや!それが今ここで作られとるんや。うちはその手伝いに来たちゅう訳や。この天才科学者・李紅蘭をなめたらあかんでぇ!」
『そいつはすごいなぁ。紅蘭! お前タダモンやなかったんやなぁ。』
「見直したか? ほめられると気分ええなぁ。 もっと言うたって!」
『どういう性格や?藤枝司令は人見知りとか言うとったようやったけど..』
「とにかく、明日開発室に来てや!約束やで熊はん。」
『わかった。ほな明日な。』
あやめは、そんな二人の掛け合いを、黙ってニコニコしながら眺めていた。
続く
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