【私小説】李紅蘭的四方山話 その2(長文&再掲載)



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投稿者: 雪組隊長 @ gw.jpo-miti.go.jp on 98/3/02 12:13:49

その2

「紅蘭、まだ外にいるのかい? 春とはいってもまだ風が冷たい。体に毒だよ。中に入ろう。」
 帝劇の制服に着替えた大神は、テラスの手すりに頬杖を付いている紅蘭の後ろ姿に声をかけた。
「了解や!」
 振り向きざまに直立不動の姿勢をとり、ぱっと敬礼のまねをしておどけた紅蘭は、大神が開けたテラスのドアから二階ホールに飛び込んだ。
「やっぱり、大神はんはそのモギリの格好がええわ。あははっ」
「はははっ ずいぶんだなぁ..。でも、本当のことをいうと俺もこの方が楽だよ。士官学校の頃は軍服を着ていることが当たり前だと思っていたのに、今日久しぶりに着たら、肩が凝って肩が凝って。帝国海軍少尉もずっこけたもんだな。はははははっ」
 二人は談笑しながら、サロンまで行くと、奥のソファに腰を掛けた。
「なぁ大神はん、さっき帝撃の連絡会議がどうとか言ってはったなぁ? 何ですのん、それ?」
「うん、俺も今日が初めてだったんだけど、紅蘭も知っての通り帝撃には、俺達花組の他に風組、月組、雪組といった部隊があるだろ? 俺達花組はこの銀座本部に常駐しているけど、その他の部隊は各地で独立した行動を行っている。その各部隊間の連携を保つために、定期的に各部隊の隊長が集まって話し合いをしているらしいんだ。でも、一昨年俺がここに来てからは、ちょうど黒の巣会の行動が激しくなってきていて、各部隊とも忙しくて開かれなかったらしいんだ。それが戦いが一段落した今、いつ現れるかも知れない新たな敵に備えて、帝国華撃団の建て直しを図るために再開されたってわけさ。」
 (説明せりふをありがとうな 大神はん)←作者心の声
「ふ〜ん、治において乱を忘れずっちゅうわけやな?」
「ああ、米田長官の口癖だからね。」
「それが、なぜ軍服なんや?」
「一応帝撃は秘密部隊だからね。表向きの職業での私的な会合ってことになっているらしいんだけど、花小路伯爵のお屋敷でやるモンだから、まさかこのモギリの格好というわけにもいかなくてさ。」
「あははっ な〜るほどな」
「俺は、今日初めて花組のみんなや、長官やあやめさん以外の帝撃の人ってのを見たよ。」
「うちは、花やしき支部におったからな。あそこは風組の基地やったし。」
「そうらしいね。あやめさんが風組の司令だったそうだ..」
「そうや。花やしき支部長やった...」
 いまは降魔 殺女となって叉丹の元に去ってしまった藤枝あやめ中尉を思いだしたのか、ふと遠くを見る目をする大神と紅蘭であった。大神はその場に現れた短い沈黙を払うように続けた。
「それから、雪組の隊長って人にも会ったよ。」
「熊はんやな!」
「くま・・・ぶぶっ あっはははははは まったくだ!紅蘭うまいぞ!!」
 大神は、腹を抱えて笑い出した。その脳裏には先ほど出会った雪組隊長の、「熊」と言われれば全くその通りというしかない髭面が浮かんでいた。
「はははははっ・・・は〜っ は〜っ ああ苦しい!」
「大神はん..そら笑いすぎやで..ぷっ あははははっ」
 大笑いする大神に、知り合いを笑われたせいか眉をひそめて注意しようとした紅蘭であったが、途中で自分も何かを思いだしたかのように笑い出してしまった。
「紅蘭だって笑ってるじゃないか。」
 涙を拭いながら大神が言い返す。
「そういえば、紅蘭によろしくって言ってたけど、知り合いかい?」
「うん!うちが帝都に来てすぐのこっちゃ。花やしき支部におったときに知り合うたんや。」
「あれはなぁ、うちがあやめはんに連れられて、アイリスの船で神戸から帝都に着いたときや。・・・・」
 (あれっ!? 紅蘭にしては珍しく昔語りをするなぁ...)←大神心の声
「ちょっと!大神はん!! 人の話きいてはる?」
「えっ? あっ..ああ、き、聞いてるよ!!」(ああ、びっくりした。(^^;)
「それでな・・・」
   続く