【私小説】李紅蘭的四方山話 その5



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投稿者: 雪組隊長 @ gw.jpo-miti.go.jp on 98/3/02 12:06:25

その5

 その話を聞いて、うち、謝りに行こう思てな、あやめはんに言うたんや。
 そしたら、あやめはんが「雪組の隊長はんは気むずかしいお人やから気を付けなさい。」てなこと言うんや。
 なんでも、気に入らない人間は上官だろうが女だろうがどつき回したことがあるっちゅうやないか。おまけに米田長官にも平気で文句を言うて、帝撃では有名人やっちゅう話でな。
 うち真剣に悩んだでぇ。ただ、やってもうたことは取り返しがつかんからな。
 とにかく、どつかれようが何されようが謝ろう!て決めて、会いに行ったんや。
 それで、開発室のそばまで行ったらな、部屋の外まで雪組の隊長はんの声が轟いとんねん。

 (以下、場面は紅蘭の話からの回想シーンに変わる。)作者駐

 紅蘭は、雪組の隊長を捜して、工場の方から兵器開発室のある研究棟の方へ歩いていた。
 開発室へ向かう廊下の角を曲がり、部屋のドアに手をかけようとしたその時であった、
『おどれらぁぁぁっ!雁首そろえてなにしてけつかる!!なんやぁこれは!!こないなしょうもないモンばっかりつくりくさって、ええかげんにせぇよぉぉっ!!』
 窓のガラスはいうにおよばず、頑丈なシルスウス鋼製のドアまでがビリビリいうような大音声があたりに轟いた。
 ビクッと身を固くした紅蘭は、思わずノブにのばした手を引っ込めて、その場に立ちすくんだ。
 その間にも、部屋の中からは、絶え間なく大声が響いてきていた。
「なんやぁ?びっくりしたなぁ..かみなりさんかと思うたで・・・」
 紅蘭は、胸の中ではね回っている心臓を何とか鎮めようと努力した。
「今日は、うちのエンジン働かせすぎやなぁ。バルブ飛んでまうで...」
 少し落ち着いたところで、さっきからの大声が、聞き覚えのある声であることに気が付いた。
「この声は、さっきの熊はんやな? まったくよう驚かしてくれるやないの。でもなんやろ?えらい怒ってはるような...」
 紅蘭の脳裏に、ついさっき医務室で聞いたあやめの話がよみがえってきていた。
「あちゃ〜。えらいときに来てもうたなぁ..」
 聞くとはなしに聞こえる(聞くなというほうが難しい..)話は、どうやら花やしき支部で作った装備品が欠陥品だったらしく、それについての苦情のようであった。
 しかも思わしくない回答にイライラしいてるらしく、だんだん声が大きくなってきているのであった。
「けけっ 開発の連中困っとるな。ええ気味やで。せや!面白そうやからちょこっと聞いてたろ。」
 以前ひどいことを言われたことを思いだした紅蘭は、ドアの前で耳をそばだてた。

 (場面は、帝撃サロンに転換される。)作者駐

『紅蘭!悪い癖だぞ。盗み聞きは。』
『そうよ、紅蘭』
 ハイハイすんまへんな、大神はん、マリアはん。
『そうですわ。レディがそのようなことをするものではありませんわ。ねぇ少尉?』
 あんたに言われたくないでぇ、すみれはん! なぁカンナはん。
『えっ?あはっ..あはっ..あはははは...』
『アイリスもさくらと盗み聞きしたよぉ〜。』
『ああ、俺がここに来たときだね?』
『あっ、あの時は、アイリスが聞こうって言うから...』
『ぶ〜っ あれは、さくらが聞こうって言ったんだよぉ、お兄ちゃん! アイリス悪くないモン!!』
 まぁまぁアイリス、それくらいにしたりや。じゃ話を続けるで。
『アイリス 何か納得いかないなぁ...ブツブツ』
  続く