![]() ![]() 投稿者: HRK @ prxc1.kyoto-inet.or.jp on 98/1/14 23:14:49
Grid.1=”http://www.sega.co.jp/sega/p_cafe/BBS/bbs8/vol180/180_100.html” 「あんた、なかなか、ええセンスしとるやんか。」 不意に背後からかけられたその声は、女性のものだった。 大神は振り向いてその女性を見てみたが、覚えのない顔だった。 「あのテンエイトは君の車かい?」 大神は尋ねた。 「そや!ウチの自慢の愛車、一零八改『韋駄天君7号』や! 外見(そとみ)の派手さ見ても分かるやろうけど、 中もえげつないチューニングしてるんやでー。 エンジンのボアアップ等の排気量アップは勿論のこと、 総アルミで軽量化もバッチリやし、 それになウチの「韋駄天君」にはとっておきが…」 「で、今日はどうしたんだい?君の車はこんな峠を走るような車じゃないと思うんだけど。」 大神は、長くなりそうな彼女の話をさえぎって、そう尋ねた。 彼女は、まだまだ続く愛車自慢を中断されて、不機嫌そうな顔をしたがすぐに気を取り直した。 「どや!ウチと勝負してみぃひんか?」 「俺と君が勝負する理由がない。」 「何や、ツレないなぁ…。はるばる、こんな山奥まで来たっちゅうのに…。 そや!わかった!ウチに勝つ自信がないんやろう?」 彼女は意地悪そうな笑みを浮かべる。 「そんな下手な挑発には乗らないよ。」 「うーん、やっぱあかんかぁ・・。」 「ほら、分かったら帰った、帰った。」 「ほな、握手だけしてくれへん?それくらいやったらええやろ?」 「は?…まあ構わないけど…。」 そう言って、大神は彼女の方へ手を差し伸べた。 「素直に受けへんあんたが悪いんやで。」 「?」 彼女は差し伸べられた大神の手を掴むや否や、自分の胸へと押し当て、 大声を張り上げた。 「きゃぁぁぁっ!何するんやぁっ!この変態ッ!」 その大声に驚いて、周りにいた連中が大神達の方を振り向く。 「お、おい!何するんだよ!や、止めろって。」 慌てて大神はその手を離そうとするが、しっかり捕まれていて 振りほどくことができない。 「どや?ウチと勝負する気になったか?」 「な、何で俺が…。」 「そうか!まだそんなことゆうんか、ほな…。」 彼女は、また大声を張り上げるために、大きく息を吸った。 「分かった、分かったって、勝負するよ。だから…。」 「ほんまに?」 「ああ、ほんま、ほんま。」 大神はあまりの事態に頬に冷や汗が流れるのを感じた。 「やったぁ!おおきに、大神はん!」 彼女は本当に嬉しいのか、顔一杯に笑みを浮かべた。 そのあまりの愛らしい笑みに、一瞬、大神はドキッとしたが、慌てて取りつくろった。 「じゃ、じゃあこの展望台前からふもとの点滅信号まで、1セット勝負でいいな?」 「それは構わへんのやけど……、いつまで触っとるん?」 彼女はとっくに手を離していたのだが、大神の手はまだそのままだった。 「あ!あ、あの……その……ごめん。」 慌てて手を放し、大神がそう言うと、彼女はまた、あの意地悪い笑みを浮かべてこういった。 「ほんまは触りたかったんちゃうの?。」 「な、何を馬鹿なことを…。」 そして、その場を逃れようと大神は、まだこちらを見ているの仲間の一人に向かって叫んだ。 「おい!沢田!これから、ダウンヒルで彼女と勝負する、準備を頼む!」 沢田は不思議そうな顔をしていたが、大神の声を聞いてさっそく準備に取りかかった。 ふと、大神が彼女の方を振り向くと、彼女はクスクスと笑っていた。 「な、なんだよ。」 「そんな必死になってごまかそうとせんでも…、あんた意外とウブなんやねぇ。」 彼女は、慌てふためく大神がそんなにおかしいのか笑いをこらえながらそう言った。 「全く、もう勘弁してくれよ…、あれ?そう言えば君の名前は?」 「あ、そう言えば自己紹介がまだやったね。ウチ、李紅蘭ゆうねん!よろしゅう! これでも湾岸最速なんやで。」 そう言った彼女の笑顔は、あの意地悪い笑みから、先ほどの愛らしい笑みに戻っていた。 ![]()
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