投稿者: 天下無敵の落第生 @ ppp078.tokyo.xaxon-net.or.jp on 97/12/08 23:13:59
銀座 とある路地 紅蘭「さー安いで安いでー!!」元気の良い、だが聞き覚えのある声に足を止め、あたりを見渡してみる。 ほどなくして、眼鏡をかけて、髪を三つ編みにしたチャイナ服の少女が視界に入る。 幾多の眼鏡っ子マニアを魅了した猛者(失礼)、いわずと知れた、李紅蘭である。 だが、さくらは一瞬我が目を疑った。 紅蘭は道端に、どこから持ってきたのか『出血大サービス!』や『歳末大売り出し!!』と書かれたのぼりを立て、机を並べ、何やら手ごろな大きさの木の棒を山と積んでいた。どうやらそれを売っているらしい。 さくら「紅蘭、何をやっているの?」 紅蘭「あ!さくらはん。買い物でっか?」 さくら「ええ、ちょっと。紅蘭こそ一体何をやっているの?」 紅蘭「うちは、この新発明『まつあけくん』を売っているんや。」 さくら「...何で?」 そこで紅蘭は、少しまじめな顔になる。 紅蘭「実はな、大きな声じゃ言えへんのやけど、帝撃の財政は火の車なんや。それで、少しでも赤字が解消でけへんかと思って、こうして商売しておるんよ。」 確かに、納得できないことはない。だが、さくらにはどうしても理解できないことがあった。彼女は売り物らしい木の棒を手に取り、まじまじと見てみる。 材質は、松の木のようだ。この時期よく見かけるからそれはすぐに分かったが、どこからどう見ても、何の変哲もない松の棒である。 さくら「...で、これが新発明?」 紅蘭「せや、いやこれを作るのにはえらい苦労したでぇ。まずな、のこぎり持って山の松林へ....」 いつもの調子で話し始める紅蘭の言葉をさえぎり、さくらはいつもとは違う頭痛を感じながら問う。 さくら「...何に使うの?」 紅蘭「火をつけて明かりにするんや。非常のときに役に立つでぇ!!」 にっこりほほ笑みながら、臆面もなく言う紅蘭に、さくらは顔をしかめてこめかみを押さえる。 紅蘭「お!そこのお兄ぃさん! どや、一つ買っていかへんか!?」 零式「ん−? あ!紅蘭だ!!」 さくら「...それって、ただの松明っていわない?」 さくらの苦悩とつぶやきをよそに、商品よりも紅蘭目当てで客は黒山の人だかり。売れ行きは、信じられないし、信じたくもないが好調らしい。 彼女は、なぜだかどっと疲れて何となくあたりを見渡した。と、見覚えのある瓶が目に入った。ラベルを見る。 『銘酒 うぉーロックん』 さくら「紅蘭! このお酒!!」 紅蘭「え? ああ、マリアはんからもろうたんや。いやぁなかなかいけるでぇそれ。あ、はいはい、10本やね、豪気なお客はんやなぁ。」 さくらは、ただ立ち尽くす。 まつあけくん、松明くん、松明、たいまつ、歳末大売り出し。 松明大売り出し帝都の、夜明けは、まだ遠い ========================== さーしょーこりもなくまたやったぞーー!! はーーーーーはっはっは!! もー矢でも鉄砲でも持ってこぉぉぉぉぉい!!!
|