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投稿者:
編隊飛行 @ sisetu-45.jimut.kyutech.ac.jp on 97/11/06 17:37:51
「ハロウィン大戦・外伝 第1話〜オオカミと6匹の子やぎ」
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「大神さん。早くぬいぐるみを着てください!!」
衣装部屋へ飛び込んできた大神に、黒子の格好をした椿ちゃんが茶色い固ま
りを投げつけるように手渡した。
今日はハロウィン。子供達を慰問するために帝国歌劇団・花組は栃木県へ地
方公演に来ていた。本来は子供達だけを無料招待する予定であったが、帝都の
花形歌劇団を見られる機会などそうあったものではないと、栃木一の大会場で
一般有料客も交えての公演となったのだ。演題は「オオカミと6匹の子やぎ」。
マリアの書いた原案をミュージカル風にアレンジしたものである。
(人使いが荒いよなぁ・・・。出番寸前までもぎりをさせるんだから・・・)
開演ぎりぎりまで入り口で切符をもぎっていた大神は、たった今楽屋へやっ
てきたばかりだ。今回の大神の役は「オオカミ」。前回の王子様とは全く逆の
悪役だ。しかも、小学校の体育館で行われる予定がいつのまにやら大会場
へ変更になっている。演劇に関してはど素人の大神にとってはかなりのプレッ
シャーであった。
(まぁ、6匹の女の子を食べちゃうんだから、おいしい役ではあるけどなぁ)
「さっさと着替えてください!!もう舞台は始まっているんですから。」
椿の叱咤する声が、大神の妄想をさえぎった。すでに開幕から5分を経過し
ている。そろそろお母さんやぎ役のかすみが、子供達を置いてお出かけする場
面だろう。急がなければいけない。
「わかってるよ。椿ちゃん。」
「きゃぁっ!!私だってうら若き乙女なんですからね!」
「えっ??」
さっさとズボンを脱ぎ始めていた大神が椿の方を振り向くと、真っ赤な顔を
した椿が大神の方を見ないように視線をそらして横を向いていた。
(かわいいなぁ。椿ちゃん。声までうわずっちゃって。まだまだ子供だとおも
っていたけど・・・乙女かぁ)
か細い肩が上下するのが、少女が本当に恥ずかしがっていることを物語って
いる。
「もう大丈夫だよ。ちゃんと着替え終わったからね」
大神が声を掛けても、まだ不安そうに
「ほんとですかぁ?」
数拍の間をおいてから椿はやっと大神の方をみる。
「わぁ。とっても似合ってますよ!!」
「そっ、そうかなぁ?へへっ・・」
かわいい女の子から誉められるのは、どんな男でもうれしいものだ。
(しかし、オオカミのぬいぐるみが似合うといわれるのもなぁ・・。喜んだ方
がいいのだろうか・・・・。まぁいいか。誉められてるのだし)
・・・単純な大神。
「さぁ、舞台袖に行きましょう!出番はすぐですから!!」
舞台袖。黒子装束の由里とかすみが、舞台の方を見ている。
「あれ?かすみ君・・・黒子?」
「なに言ってるんですか。かすみさんの出番は最初だけ。本当の母親やぎは、
大神さんの一人二役なんですよ。今回の公演は大神さんの早変わりも目玉の一
つなんですから。」
ナレーションと黒子を務める由里が解説してくれた。
(そうだった。最初だけはもぎりの仕事が忙しい俺の代わりに、かすみさんが
務めてくれるんだった・・・)
(まてよ?ということは、もしかして・・・・)
「ねぇ、母親やぎの衣装は、かすみさんが着たのを・・・俺が・・・」
「残念でした。身長差がありすぎますから、ちゃんと大神さんのも別に用意し
てます。」
「なにを考えているのやら・・・まぁ、新しい噂話が加わっていいけど。」
「おいおい、由里ちゃん。さくらさん達には内緒にしておいてくれ!!」
(ちょっと残念だったなぁ。かすみさんの残り香・・・・)
舞台では、お留守番をしている子やぎ達が仲良く歌い踊っていた。ぴったり
と脚に貼りついた白いタイツに、プリーツのたくさん入った短い純白のスカー
ト。長袖の白いシャツと、色違いではあるがそろいのデザインのベスト。頭に
は耳と小さな角がついており、童話の中からそのままでてきたかわいい子やぎ
の妖精たちという趣だ。
(かわいいなぁ。4匹の・・・・・4匹ぃ???。残りの2匹は・・・)
大神が目で追うと、ソファーの陰に客席に背を向けて座ったままの2匹の姿
が見えた。1匹は黒。もう1匹は真っ白な姿だ。やはり、前の4匹とは違う衣
装のようだ。
(黒い方のやぎ・・・。マリアだな。一番恥ずかしがっていたからなぁ。やは
りひらひらのミニスカートははいていないようだ。全身黒ずくめで「黒やぎ」
になっているのか。)
(ん?ソファーのテーブルの上で何かやってるぞ・・・。げっ!銃の分解掃除
・・・。)
「ねぇ?マリア〜〜、お母さんのいうとおりオオカミさんが襲ってきたらどう
するのぉ?」
歌い終わったアイリスがマリアの背に飛びつきなが尋ねた。
「危ないわよ、アイリス。」
−−−カシャ、カシャ、カチッ、・・・・・・−−−
「この私の愛銃、エンフィールド・改が火を噴くだけよ」
観客席へ銃口を向け、ゆっくりとマリアが振り向く。短く切られた金色の髪
がさらさらと揺れる。観客席からはどこともなくため息。そして大歓声!!
「へへぇ〜い。あたいのことも忘れちゃ困るぜ!」
静まりつつある観客席に向かい、もう一匹ソファーに腰掛けていたやぎが立ち
上がり、いきなりソファーを飛び越えて観客席の方へ進み出た。
(げっ!白い衣装と思ったら、空手着じゃないか!!??)
いつのまにか黒子の三人娘が、カンナの前に瓦を積み上げている。
「あたいの全てをここに・・・・・。でぃぇぇぇぇ〜〜〜ぃ!!!」
気合いと共に、腰だめから一気にカンナの手が瓦に向かって突き下ろされる。
−−−−−がっ!!−−−−−
鈍い音だけが、舞台の一点から会場へと響いた。静まり返る観衆。見た目に
は瓦の姿は変わっていない。と・・・
−−−−ぱきっ、ぱきっ・・・・・・ぐしゃっ!!−−−−−−
一気に瓦の山が、中央に向かって崩れ落ちた。その数20枚。すべて、刀で切
ったように真っ二つに折れていた。静から騒へ、観客席が一瞬にして沸き返る。
「てへへへぇ。」
ちょっと照れたように鼻の頭を掻く仕草は、いつもの帝国華撃団一の武闘派で
知られるカンナそのものだ。
「私たちだって負けてはおりませんわ!!」
珍しく二人で息をそろえて、さくらとすみれが叫ぶと、手にはそれぞれ長刀
と霊剣・荒鷹が握られており、互いに背中を合わせて一撃必殺の構えを取る。
可愛らしい衣装を身に纏った彼女たちの姿は、まるで戦争の女神か天使・・
・・いや、ハルマゲドンをつげるラッパを吹くという、神の御使いのようでさ
えあった。
「うちかて、ちゃぁんと用意してるよって!!」
負けじと紅蘭が舞台中央へとしゃしゃり出てくる。手にはいくつかのボタン
とアンテナが突き出た四角い箱を持っている。ボタンの一つを押すと舞台の床
が一部開き、台車に乗った長さ2〜3mほどの円筒がせり上がってきた。
「こんなこともあろうかと密かに作っておいた、対オオカミ用地対地ミサイル。
その名も・・・[赤ずきんちゃん]や。」
大喝采の観衆を片手で制し沈黙を促すと、軽くめがねを刷りあげて続きを話
し出す。
「射程距離は3000m。装着弾数は残念ながら1発やけどな。まぁそのかわ
りっちゅうたらなんやけど、[蒸気演算機連動照準装置]と[けん気君改造型
自動追尾装置]を付けとるから100発100中や。オオカミなんかこわくな
いでぇ!!」
「アイリスにだって、ジャンポールがついてるもん!!」
突然、空中に熊のぬいぐるみが出現し、アイリスの目の前でくるくると回り
出す。
「さぁ、悪いオオカミ。どこからでもかかってらっしゃい!!」
6人の美少女が横一列に並んで、それぞれの決めポーズで観客席に向かって叫
んだ。
「ウォーォォォォァァァァ〜〜〜〜!!!!!!」
地鳴りのような観客の声。劇はまだまだ序盤だというのに大変な盛り上がりよ
うであった。
(俺、あんな中に出て行かなきゃいけないのか?死ぬかも・・・いや、絶対に
殺される!)
「さぁ、大神さん。出番ですよ。」
「いってらっしゃい!!がんばってください。」
由里と椿に後ろから突き飛ばされ、転がるように舞台へ飛び出していく大神。
素手で6匹の武装した子やぎ達に勝てるのか??
さて、次回
「ハロウィン大戦・外伝 第2話〜泣くなオオカミ。主役は君だ!!」
に、こうご期待!!
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って、誰も期待してないって(笑)
やっぱり、こういった話の方が簡単に書けるなぁ(^^;
昨日書いた話があまりにも恥ずかしかったので、いろいろ張っていた伏線の一
つを文章化しているだけだけど・・・。さっさと気持ちを切り替えないと背中
がむずがゆい(*^^*)
この話の続き??まだあらすじしかできてない。作者の感情によって大きく
左右されるけどね(笑)
ではでは。読んでいただいた方ありがとうございました。
できれば、かわりに続編を書いてください(爆)
さぁ。明日は更新だ!!木を育てようかな(迷惑なヤツめ(^^;;;)
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