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投稿者:
敏 @ PPP16091.win.or.jp on 97/7/30 09:46:06
(前ページ、天下無敵の無一文さんの発言を受けて)
・・・では、僭越ながら、
「花火大戦〜紅蘭篇〜」を書かせていただきます。
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〜7月某日 東京・銀座〜
真夜中、というほど遅くもなく、
さりとて夜、というには少し更け過ぎている、そんな時間。
大神は、特に理由もなく、寝つけずにいた。
秋の夜長、という言葉がある。
確かに夏の夜は短い。しかしそれでも、悠久なる時の流れを実感させるには余りある。
チク、タク、と正確に時を刻む時計の音は、却ってその長さを克明にする。
夜空に皓々と輝きわたる満月は、永遠なる夜を連想させるのに十分な説得力を持つ。
煌びやかな満天の星空も、冗長な時間を紛らわすほどには魅力的ではない。
大神は、ベッドに横たわり、手持ち無沙汰にそんなことを考えていた。
・・・要するに、何もする事がなくて退屈だった。
そんな大神の部屋に、闇に紛れつつ忍び寄る人影が一つ・・・
チャイナドレスに身を包み、髪を三つ編みにまとめたその人影は、
慎重に周囲を伺いつつドアに近づき、可能な限り小さな音でノックする。
・・・コンコン・・・
「おおがみはーん・・・起きてはる・・・?」
屋外から聞こえる虫の音よりもかすかに、室内へ呼びかける。
大神にはすぐにその声の主を同定できた。
(紅蘭だ・・・こんな時間に何だろう?)
ガチャ・・・
「紅蘭、どうしたんだい、こんな時間に?」
当然の疑問を投げ掛ける大神の口を、紅蘭は慌てて手のひらで塞ぐと、
もう一方の手の人差し指を自分の唇に押し当て、静かに、のジェスチャーをした。
「大神はん!静かに!みんなが起きてしまうやないか!」
語気は荒く、声はあくまでも低く大神をたしなめる。
「ご、ごめん・・・それで、どうしたんだい?」
しどろもどろな大神に、紅蘭は悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「ま、ええから、ええから。ちょっとついてきてや。」
そう言って大神の腕を引く。
大神はなぜだかすごく嫌な予感がした。
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パチパチパチパチ・・・
「うわあ・・・」
小気味良い音を立てて舞い散る色とりどりの炎に、大神は思わず感嘆のため息を洩らす。
風呂敷包みに一杯の花火を詰めて、紅蘭は大神を近くの公園へ引っぱり出した。
紅蘭の目的は花火だった。
いや、花火を口実に大神と二人っきりになること、と言った方が真実に近いかもしれない。
「ほら、大神はん、綺麗やろ?」
体を寄せ合うように、一本の線香花火を見つめる大神と紅蘭。
「うん、凄く綺麗だ・・・」
もう少し気の利く男なら、キザったらしく
「君の方が綺麗だよ・・・」とか何とか言ったかもしれない。
しかし、紅蘭は、大神のその純朴さがたまらなく好きだった。
一方、自分に発せられた言葉ではないと知りつつも、
「綺麗だ」と聞いただけで胸の高鳴りを押さえられない紅蘭もまた、愛らしい乙女であった。
花火の織りなす幻想的な空間に陶酔する紅蘭。
シンデレラもかくや、といった夢心地であった。
(大神はんと、いつまでもこうしていたい・・・)
紅蘭は永遠なる幸せを願った。
しかし、シンデレラには、魔法の解ける時間が訪れるものだ。
「そろそろ帰らなきゃ・・・明日も公演あるんだろ?」
紅蘭は、時の経つののなんと早いことかを痛感した。
いっそこのまま時が止まってくれたら、と思った。
しかし、所詮、かなわぬ願い・・・
そう割り切れるところもまた、彼女の長所である。
「そやね。そろそろ帰ろか。」
パタパタと裾の砂ぼこりをはたきながら、手荷物の風呂敷包みを探る。
「よっしゃ、それじゃ、最後に一発派手にやってしめよか!」
そう言って取り出したのは、特大級の打ち上げ式花火だった。
「へえ・・・どこで売ってたんだい?そんなの?」
大神が感心したように訊ねる。
「売ってた・・・?違うで、大神はん。これは、ウチの発明や!は・つ・め・い!」
大神は絶句した。
冷や汗が額を伝うのが、自分でもハッキリと分かる。
「待て!やめるんだ、紅蘭!」
「いっくでえぇ〜!」
・・・ドカーン
「うわあぁ〜」
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〜7月某日〜
深夜、と言うのも今更だが、
未明、と言うにはいまいち実感がない、そんな時間。
静寂な都会に、満月がひときわ映える。
満天の星空は人々の明日を導いているのだろうか。
銀座で起きた謎の爆発事故を除いては、帝都はすこぶる平和である。
天下太平、事も無し。
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後書き
いやあ・・・感性のおもむくままに書いてみました・・・
つまらん上にやたら量だけはあって、非常に心苦しいですが、
とりあえず投稿します。
では。
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敏(とし)norio@super.win.or.jp
サクラ大戦HP「帝國華撃団・目黒遊撃隊」
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