だれかのみたゆめ 第15話



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投稿者: @ pppb797.pppp.ap.so-net.or.jp on 98/3/23 14:47:11


第15話 「旅立ち」



美佳は気が付くと、見知らぬ部屋にいました。
壁一面に妙な模様が描かれています。
不思議な装置の中で寝ていたようです。
美佳は何も着ていませんでした。時計もありません。
頭がぼーっとします。何があったのかよく思い出せません。
「・・・」
置いてあった服を着て、部屋を出る美佳。
一瞬、その服が妙に懐かしく感じましたが、気のせいでしょう。
そこは薄暗い廊下で、模様はまだ続いていました。
「・・・(ここ、どこなんだろう?)」
美佳が歩き出した時、
「こっちよ」
突然、廊下の向こうから声が聞こえました。
「あなたは...」それは美佳が聞き覚えのある声でした。
声に誘導されるまま美佳は大きな扉の前に出ました。
ルルル...静かな音と共に扉が開きます。

そこには、大きな筒状の物がいくつも並んでいました。
筒は生きているのか、ウネウネと脈打っています。
中には液体が入っていて、ポコポコと泡が浮かんでいます。
「・・・きゃっ!」
美佳は驚きました。筒の中に人が眠っていたのです。全裸でした。
両手で自分の目を隠し、指の間からそ〜っと顔を見ます。
「(この人、見た事あるわ・・・)」眠っていたのは瑠原でした。
「あっ」隣の筒には、カイが裸で眠っていました。
「この人たち、裸が好きなのかしら...もしかして...変態?」
美佳はその隣の筒を覗くと、びっくりしました。
「...お兄ちゃん!・・・お兄ちゃんまで変態だったの・・・?」
しかし美佳は、隣の筒の中にもっととんでもないものを見つけました。
「・・・なっ・・・!?」
なんと、そこにもカイが裸で眠っていたのです。
「ど、どういう事...?」
美佳は既に、カイの裸には全く動じませんでした。
まさかこの筒の中にはカイが沢山入ってるのかしら...
そう思った美佳は、他の筒を次々に見てまわりました。
...が、他はどれも空っぽでした。

「ミクア、久しぶりね...」
後ろから声がして振り向くと、そこにはティクアが立っていました。
「あ・・・あの・・・あなたが助けてくれたんですか?」
「そうよ。けど、そんな事はどうでもいいの」
「・・・えっ?」
「あなたに協力して欲しいのよ」
「?」
「この構図・・・」と言ってティクアは美佳の時計を取り出します。
「あっ・・・(良かった、落としたんじゃなかったんだ)」
「これ、どうも使い方がわからないわ。
 ...と言うより、私じゃ使えないみたいなのよ」
「?」
「同じ酵素で出来ている私なら大丈夫かと思ったけど...
 やっぱり媒体であるあなたしか使えないみたいね。」
「その時計、使い方そんなに難しいですか?」
「時計じゃないわ。構図よ」
「・・・あのー」
「何?何だか色々知りたそうな顔ね」
「...はい。お兄ちゃんの電話があってから不思議な事ばかり起きるんです。
 それも私が関係してるみたいなの。でも私、何にも知らないのに...
 私、早くお兄ちゃんに会いたいな・・・」
美佳はなんだか寂しくなって泣きそうでした。
「可哀相に・・・」ティクアは美佳を抱きしめ、頭をなでてあげました。
「教えて下さい!お姉さんは何か知らないの?
 カイは優しかったけど、何にも話してくれないんだもん」
ティクアは美佳を優しく抱き上げ、そのまま別の部屋へ連れて行きました。
そこには不思議な円が描かれていて、壁の奥には螺旋が建っています。
「ここにいて...」ティクアは美佳を円の中心に座らせます。
「お姉さん、構図って...?」
「そのうちわかるわよ」そう言ってティクアは螺旋へと姿を変えました。
「うわっすごい」
彼女は部屋の奥の螺旋と一つになり、二重の螺旋は回転し始めました。
「さぁ、構図を使って。」
「でも、使うっていっても・・・私、よく知らないんだけど・・・」
「...その機械に手を当てていて」
「こうかな」機械を両手で握る美佳。すると、
円の淵から螺旋型の触手が伸びてきて、美佳と機械を包みました。
「うっ・・・」
触手は美佳と機械に接触してつながろうとしました。
「あははははははははははははははははははははははははは」
大笑いする美佳。
「ちょっとミクア、動かないで!」ティクアの声がしました。
「お姉さん、くすぐったーい!」美佳は笑っています。
「ちょっと我慢しててよ」
「あ、足の裏はやめてー!あははははははは!」
しばらくして...
「はぁ...はぁ...はぁ...」美佳は笑いすぎて泣いていました。
「これで終了ね」ティクアが部屋の奥から出てきて言いました。
「お姉さん、今のは何だったの?」
「ちょっとあなたと構図の情報をいただいただけよ」
「ふぅん・・・よくわからないけど、変なの」
美佳が立ち上がろうとしたその時、小さな地震が起きました。
「・・・ウッ・・・!」
同時に、ティクアが突然倒れました。とても苦しそうです。
「お姉さん?どうしたの!?」美佳はさっぱりワケがわかりません。
「まさか・・こんな筈・・・!」
ティクアは螺旋の形に戻ろうとしました。しかしうまくいかないようです。
「ミクア、教えて・・・」苦しそうな表情で彼女は言いました。
「お姉さん、しっかりして!」
「あなたは一体、誰なの...?」
「えっ、何言ってるの!?」
「私は平気。だから答えて...あなたは誰...」
「誰って言われても・・・困るなぁ」
「・・・そう、覚えてないのね」
「うーん。覚えていないというか、よくわからないんですけど...」
ティクアはしばらく考えて、言いました。
「私が消えれば、この世界も見えなくなるわ」
「へ?」
「あるいは見えるかも知れない。けれど見え方は変わるでしょうね」
「???」
「これが成り行きなら、私も何か別のものが見ている存在だったのかもね」
「あ、あの〜...」あっけにとられる美佳。
「あなたは、二つの塔に向かいなさい。そこで全てを知るでしょう」
「うーん、でも学校があるしなぁ...」
「見え方が変わっても、戸惑ったりしなくていいのよ。
 あなたの見ている世界はたくさんの世界の一つなのだから...」
「はぁ、そうなんですかー」
「じゃあ、私はもう輪に帰るわ・・・」
「?」
ティクアは完全に動かなくなりました。
「大変!お医者さんを呼ばなきゃ!」

「その必要は無い」
声がして振り向くと、カイが黒い服を来て立っていました。
「...あなた誰?」
「ほう、解るか」
「あなた、カイに似ているけど...ちょっと違う気がしたから」
「ま、どーでもいい事だ」
「あなたたち、さっき裸で寝ていたでしょう...変態だわ!」
「バ、バカ言うな!あれはだな...」
「言い訳はいいわよ。・・・カイや兄さんたちはどこなの?」
「・・・まだ寝てるよ。回復しきってないんだろう」
「あなたが傷つけたのね」
「...なぜそう思う?」
「だってあなた、アレントで私を気絶させた仮面の人でしょう?」


つづく



第16話「温泉へ行こう」は、24日にUPされる予定です