だれかのみたゆめ 第14話



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投稿者: @ pppb853.pppp.ap.so-net.or.jp on 98/3/19 14:13:15


第14話 「二人の死」


「やった〜、ついにアレントに着いたんだ〜!」
美佳は一人で店の中に入っていってしまいました。
「やれやれ...」
カイは店の外でしばらく立っていました。
「遅いな...」
どうやら誰かを待っているようです。
しかし待ち人が来ぬようなので、カイも店で待つ事にしました。
自分の剣が妙に重い気がしましたが、気には留めませんでした。

「これは...」
店に入ったカイは、異様な雰囲気にすぐ気付きました。
客がいません。それはともかく、店員もいる気配がありません。
美佳の姿も見えません。やけに静かです。妙な空気も感じます。
急いで奥の事務室へ入ったカイは、絶句しました。
そこには瑠原が倒れていたのです。
「...!」
カイは瑠原を抱き起こすと、すでに彼の息は尽きていました。
「馬鹿な...そんな馬鹿な...」
ハッとするカイ。
「そうだ...美佳...!」


一面にテレビのような画面がある一番奥の部屋。
そこで、仮面の黒服と長身の男が、激しく戦っています。
美佳は、気絶して部屋の隅に倒れていました。
「私の邪魔をするな」仮面の男が言います。
「うるせえ。テメーこそ人の家族を誘拐するな」
「私はどちらの塔も望まない。」
仮面の黒服は、男をつかむと片手で投げ飛ばしました。
壁に叩き付けられる男。にぶい音がしました。
「じゃーどっか行けよ!」
男はひるまず黒服に向かっていきました。
しかし男の攻撃は、なぜか黒服の体に触れる事ができません。
ガチャ!
部屋のドアが空き、カイが走り込んできました。
「...先輩!?なんでこんな所に!」
「カイか!話は後だ、とにかくこいつぶっ殺そうぜ!」
「用済みの解か...丁度いい、まとめて死ね」黒服はカイを見て言いました。
「先輩、危ない!」カイが黒服に斬りかかります。
...しかし、当然のように弾かれてしまいました。
「カイ、イフの力を使え!」
「...!?」男の言葉に、カイは激しく動揺しています。
「それしか手は無ぇ!」叫ぶ男。
「先輩、そんな...あれだけは...あれだけは...」
そう言うカイの腕は震えていました。間違いなくためらっています。
「バカ野郎!このままじゃ・・・全員・・・!」男は首を絞められています。
「カ・・・イ・・・美佳を・・・助ける・・・ため・・・だ・・・!」
黒服はもう一方の手で男の胸を貫き、男を投げ捨てました。
「先輩...!」
カイはそれを見て逆上したのか、黒服に猛然と斬りかかりました。
「お前たちを見ていると空しくなる」黒服は片手で剣を受け止めます。
「ぬお・・・お・・・!」カイは力を込めました。
「無駄だ。やめておけ」
「くおおおお・・・!」
「そんなに早く死にたいのか?変な奴だな」
黒服は剣を受け止めた手に力を入れました。カイの剣にヒビが入っていきます。
ガキーンッ!という音をたて、剣は崩れていきました。
すると剣から青い液体が吹き出し、カイと黒服はその一部を浴びました。
液体は、次第に女性の姿を構築していきます。
「...!?」カイは何が起きたのか理解できません。
「...ッ!...これは驚いたな」黒服は平生を保っていますが、かなり苦しそうです。

女性の姿が完全に構築されるとそこには、ティクアの姿がありました。

バチッという音とともに、部屋の画面に映像が一斉に映りだしました。
「隊長!しっかりして下さい!」
「私に構わず、逃げるんだっ」
「隊長、自分は隊長を見捨てて逃げる事などできないであります!」
「バカ者ォ!貴様の恋人がプレゼントを待っているのではなかったのかッ!」
「た、隊長〜、自分は...自分は...」
どうやら、映画か何かのワンシーンのようです。

「フ...物語って、こんなのばかりね」
ティクアらしき物はそう言って美佳に近づいていきます。
「そろそろ本当のお話を聞かせてあげましょうよ」
「・・・!」カイは意識を失っていきました。
「ゲノンの力、返してもらうわよ」美佳を抱きかかえるティクア。

「クッ、これだから塔のやつらは嫌なんだ」黒服が立ち上がりました。


つづく



明日は21日の振り替え休日という事でお休みです。
第15話「旅立ち」は、23日にUPされる予定です。