だれかのみたゆめ 第13話



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投稿者: @ pppb7ca.pppp.ap.so-net.or.jp on 98/3/18 13:28:45


第13話 「二つの塔」



その女性は、ゆっくり歩み寄ってきました。
「それ以上近づけば、斬るが。」カイが静止します。
「お久しぶりね、カイ・・・だったかしら?"今は"。」
「?...あいにく俺はアンタと初対面なんだが」
「そう。覚えてないのね」
「こんにちは、お姉さん」美佳が挨拶しました。
「おい、挨拶してる場合か」つっこむカイ。
「こんにちは、"今は"何て名前なの?」
「美佳です。よろしく」
「そう。随分適当な名前ね。そのままだわ」
彼女はそう言ってクスクス笑っています。
「私はティクア、どうぞよろしく」
美佳は、また変なのが出てきたなぁ...と思っていました。

「で、何の用だ?」カイがティクアに剣を突きつけました。
「ちょっと、危ないじゃない。何するのよ!」美佳が怒ります。
「黙ってろ。」
「・・・。」ティクアは全く動じません。
「おい、ティクアとか言ったな。ゲノンの幹部が俺達に何のようだ」
「決まってるわ。構図と媒体を返してもらうのよ。」
「させると思うか?」
「思わないけれど」
突然、ティクアはカイの剣にくちづけしました。血...でしょうか?
彼女の唇から青い液体が流れ、カイの剣を伝っていきます。
瞬間、カイは跳躍し、既にティクアの頭上高くにいました。
「死ね」ティクアの脳天めがけて剣を振り下ろします。
「ダメッ、やめなさい!」美佳が止めます。
「さようなら。」
・・・とティクアは言いました。

「...見ろ」
ティクアを斬った後、カイが言います。
真っ二つになった筈の彼女の体が、うにょうにょ変化していきました。
やがて螺旋をえがくと、その姿は消滅してしまいました。
「何アレ、すごーい。お化けだったのねぇ...なるほど〜...」
「奴らは化け物みたいな物だ。しかし...君は気持ち悪くないのか?」
「別に?平気だけど?」
「そ、そうか・・・凄いな...じゃ、先を急ごう。
 危ないから箱にはもう乗れんが、もうすぐの筈だ」

二人は、住居の密集した土地に出ました。
立て札には、"ニコニコタウン"と書かれています。
「確か、この地区の近くの筈だが...」カイは町の地図を見ています。
美佳は、あたりを見回してみました。
公園には老夫婦が散歩しています。
本屋では学生たちが立ち読みしています。
そばのベンチには営業の人が寝ています。
道を子供たちがキャーキャー騒ぎながら走っています。
ドン!
小さな女の子が美佳にぶつかりました。
「おねーちゃんだいじょーぶ?」女の子が謝ります。
「うん平気。気を付けてね」
女の子はパタパタと子供たちの輪に戻ります。
「こんどは俺が勇者の役な!」
「じゃ、あたしソニア!」
「俺、ルバラ!」
「じゃ僕、またシンの役なの?...やだな...」
「もう!私がセリアの役やってあげるから、我慢しなさいよ」
「トージはさっき竜の役だったから、次は何がいい?」
「そやなぁ...木村の役でええか?」
「いいけど・・・変な役が好きなんだなぁ」
「じゃ、さっきの続きからね!」
「おう、はやく行こーぜ!」
子供たちはまたキャーキャー言って走っていきました。

「...レンタルサービスA RENT...これか。おい、あったぞ。」
「ね、ここって活気のあるいい町ね」美佳は、町を見渡して言いました。
「・・・そう思うか」カイは、なんだか寂しそうです。
「ま、実際...昔に比べるとずっと住みやすい街になったのかも知れんがな」
「?・・・で、お店の場所は解ったの?」
「ああ、大体な」
二人は、いよいよ目的地に到着するようです。
「(色々あったけどそれなりに楽しかったな〜・・・そうそう!
 おつかいが済んでウチに帰ったら、お兄ちゃんのノート見せてもらわなきゃ!)」
美佳はこの短い旅の終わりが近づき、うきうきしているようです。

「・・・あれだな。」
「ワーイ!行こう行こう!」
「ち、ちょっと待て・・・!」
一人で店の中に走って行く美佳。カイは「やれやれ...」と思いながらついていきます。


つづく



第14話「二人の死」は、19日にUPされる予定です