だれかのみたゆめ 第10話



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投稿者: @ pppb7c6.pppp.ap.so-net.or.jp on 98/3/13 11:34:40


第10話 「背徳の町」



わがままな美佳と、無愛想なカイ。
二人の仲はすでに最悪でした。

「え〜っ」あからさまに不満げな美佳。
「早くしろ。夜までにこの渓谷地帯をぬけるぞ」
「なんでわざわざ徒歩で行くの?車か何か用意しなさいよ」
「車で崖は登れん。それに、こっちにもいろいろ事情があってな」
「・・・ま、いいけどね」

渓谷は深い霧に包まれていました。
「ねぇ、まだ着かないの?アタシ疲れた。視界も悪いし...」
美佳がまた不満を言います。
「まだ半分も来ていない。急げ。この霧が晴れるとまずい」
「そりゃ〜アンタは野蛮な男だからいいでしょうけどね。
 私はか弱い乙女なのよっ。一緒にしないで欲しいわ...」
「愚痴を言う元気があれば十分だ、さぁ急げ」

すると、崖に囲まれた場所に出ました。
「こ、ここを登るの・・・?」
「そうだ。怖いか?」
「なっ何言ってんのよ。そんな訳ないでしょ」
美佳はムッとして、一人で崖を登ろうとしました。
「危ないぞ、まず俺が登るから同じ足場を踏んで付いてこい。」
「平気よ、このくらい」
カイが止めましたが、美佳は聞き入れません。
「気を付けてくれよ...君に怪我されると俺の責任になるんだからな」
 カイは、美佳に続いて崖を登りはじめました。

二人が崖の真ん中、地上5.6m位の地点にきた時...
「ねぇ」
美佳がカイを見下ろして言いました。
「しゃべるな。手足に神経を集中させろ」
「いいから聞いてよっ」
「・・・何だ?」
「いい?...絶対、絶対に上を見ないでよっ!」
「どうしてだ?」
「どうしても!」
「俺は構わんが...大体、よそ見する余裕はないしな」
「そっそんな事言っておいて見る気でしょう。騙されないわよ」
「なぜだ?上を見ると何かあるのか?」
カイは気になって上を見てみました。
すると、美佳のスカートの中のクマさんパンツが見えました。
「ギャー!信じられない!ヘンタイ〜!見るな〜」
「あのなぁ・・・」
カイはため息をついて、呆れ顔で言いました。
「なんで俺が君みたいなガキの下着を見て喜ばなきゃいけないんだ?」
「ガ...ガキですって!?レディに大して失礼よっ」
「ガキだろ。中学生にもなってそんな下着、履くか普通?」
「アンタしっかりと見てんじゃないわよっ変態!それに私は高1ですっ!」
「高1...君、高校生だったのか!・・・全然そうは見えんぞ。」
「...!(ぐさっ)」
「なら、なおさらガキという訳だな...フフッ」
「わわわわ、笑うな〜」
美佳はおこって、カイを蹴り落とそうとしました。
「わっバカやめろ、足を離すなっ」
「この変態〜っ、落ちろ〜っ」げしげしげしげしっ...!
「バカっやめろっ」
そのうち、美佳は大きく体勢を崩してしまいました。
「きゃ・・・っ!」
美佳の足場が崩れ、彼女は落下していきます。
「!」
カイが咄嗟にそれを受け止め、二人は墜落しました。

どすーーーーーーん!

気が付くと、美佳はカイの顔の上に座っていました。
「た、助かったのね」
「苦しい・・・早くどいてくれ・・・」
「...はっ!」
美佳たちは立ち上がります。
「フー、怪我は無いか?」
「・・・ウン」
「イヤわからん、ちょっと全身に力を入れてみろ」
「だ、大丈夫よ」
「いいからいうとおりにしろ!」
突然、冷静なカイが叫びました。
「な、何よムキになって...」美佳は体に力を入れてみます。
「ウッ...!」
右足がズキンと痛みました。うずくまる美佳。
「ほら見ろ」
「い、痛くなんか...ないわ...」その顔には汗がにじんでいました。
「足を出せ」
「ほ、ほっといてよ」
「そうはいかん」
カイはそう言うと、上半身ハダカになりました。
「なっなっ何のつもり...!?」
カイは、自分のシャツをビリビリと裂いて、美佳の右足を縛り上げます。
「これじゃ足が使えないわ」
「当たり前だ。動かないように固定したんだ」コートを羽織るカイ。
「どうやって崖を登れって言うの?」
「こうやって、だ」
するとカイは美佳を持ち上げて、背負いました。
「ち、ちょっと...!」
「しっかり捕まってろ」そう言うが早いか、
カイはもの凄いスピードで一気に崖を登ってしまいました。

崖を上がると、カイが言いました。
「すまない」
「...え?」
「さっき落ちた時、ケガさせてしまってすまない。
 君の、頭と腰をカバーするので精一杯だった...ま、言い訳だがな」
「・・・・・・いいよ、別に」
「それと、もう一つ...」
「何?」
「君は、甘くて高カロリーのものが好きだろう」
「うん、ケーキとか大好きだけど」
「そういうものばかり食べるのは良くない。少しは控えてくれ」
「何で?」
「・・・いいのか?言って」
「何なの?気になるよ」
「君、少し重いぞ...君の身長から見るとベスト体重は...」
「失礼ね!」
美佳はつかまっているカイの首を強く絞めあげました。
「ぐぇっ!チ、チョークは汚いぞ...わ、わかっ...た......やめてくれ...」
「わかればよろしい...」美佳は腕を緩めて、言いました。
「ねぇ、さっきから聞こうと思ってたんだけどさ・・・」
「...なぜ空を飛んでいかないか、だろ?」
「えっ・・・・・・・・・・・・う、うん、そう。」
「この辺は濃い霧で視界が悪い。いつ晴れるか決まっていないしな」
「・・・。」
「だが、それだけじゃない」

歩いているうち、遠くに町の影が見えてきました。

「あの町に行けば、わかるさ・・・」


つづく



第11話「秩序」は、16日にUPされる予定です