だれかのみたゆめ 第5話



[ このメッセージへの返事 ] [ 返事を書く ] [ home.html ]



投稿者: @ pppb81f.pppp.ap.so-net.or.jp on 98/3/06 12:57:13


第5話 「おでかけ」



由紀と芽衣は、一緒に本屋さんで立ち読みしていました。
休みといっても、特にする事などないのでした。

「ねぇ、テスト勉強してる?」
ふいに、由紀が雑誌に目を向けたまま聞きました。
「うーん、私は授業中に終わらせてるから...」
芽衣も雑誌を読みながら答えました。
「そっかー・・・そうだよね」
「由紀は?」
「全然。」
「大丈夫なの?今度のテストで内申決まるんでしょ?」
「まー、平均点くらいは何とか取れるかな」
「呑気ねぇ」
「そっちこそマズイんじゃない?こんな事してて。
 芽衣のお母さんってけっこー厳しいじゃん。」
「うん。昨日もママとケンカしちゃった」
「全く...成績いいのに、不真面目なのよねぇ」
「思うんだけどさぁ...」
「何?」
「このまま進学して、院生から研究員になって
 ...っていうのも・・・なんだかねぇ、と思って」
「何で?出世コースじゃないの?」
「別に私、遺伝子工学に興味無いもん」
「フーン」
「由紀は?将来の事って考えてるの?」
「考えてない。よくわかんない」
「そっか、じゃあの人は?」
「へ?」
「ホラ、隣の学校の人には...もう何かアプローチしたの?」
「あーアレね。」
「どうなの?」
「別に何も。まぁ機会があったら...かな。
 正直言って、誘う勇気なんて無いしその気も無いんだけど」
「ふぅん...」

その本屋に突然、"あの人"がやって来ました。
後から来た同じ制服を着たもう一人の男と何か話しています。

「久しぶりだな、カイ。」
「やっぱり瑠原か...お前、なんでウチの制服着てんだ?」

由紀たちは話を聞き取ろうとしましたが、声が小さくてよく聞こえません。
「(何を話してるのかしら?)」芽衣がひそひそ言いました。
「(...聞こえないね)」
「(私、もう一人の人、知ってる)」
「(えっ...まさか、知り合い?)」
「(ううん。昨日駅前の本屋ですれ違っただけだけど。)」
「(へぇ〜...なんか凄い気になってきたわねぇ)」
「(うんうん)」

しばらく"あの人"ともう一人の男は話し込んでいましたが、そのうち出て行きました。
好奇心を爆発させた由紀と芽衣は、コッソリ男たちの後をつけていきました。


一方その頃、美佳は箱の中で寝ていました。
おやおや...あんまり寝過ぎて、降りる駅を乗り越しても寝ていますよ。
しかし哀しい夢を見ているのか、彼女の目には涙が浮かんでいました。

つづく



第6話「奇跡の足止め」は9日にUPされる予定です