第二幕



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投稿者: ditto @ ykha079.tky.3web.ne.jp on 98/2/28 23:49:16

In Reply to: サターンの金さん 第50回

posted by 金さん製作委員会 @ ykha079.tky.3web.ne.jp on 98/2/28 23:45:28

(第二幕)
―お白洲の後で―

「どうした脇坂、不満か?」
「いや、そのようなことはございませぬが、ちと甘すぎる裁きではと思いますが。」
「なんだ、しっかと不満を言っておるではないか。」
「あの者は、常習犯でございますぞ。最後に改心したというのも、きっと演技にちがいありません。それが証拠に、お白洲の始めではおめおめと御奉行を犯人に仕立て上げようとしていたではありませぬか?」
「あの者が、お涙頂戴の演技をしていたかどうかは、この際大した問題ではない。」
「? と申されますと?」

「今回の騒動をもう一度振り返ってみよ。」
「ええと、まずあの虎吉がサターン広場において、こともあろうに他機種万歳のような書き込みをした。
 それを見つけて長屋の住人が、虎吉を問いつめた。
虎吉は悪びれもせずに、開き直った。まあ、盗人猛々しいというやつでございますな。
そして大乱闘。
報せを受けた奉行所が駆けつけて御用。
で、今日のお白洲でございますな。
これが何か?」
「騒動の原因は、どこにあったと思う?」
「妙なことを訊かれますな。御奉行らしくもない。それはもちろん、虎吉の悪意有る書き込みに決まっております。で、虎吉が居直った為、火に油を注ぐ結果となった。」
「しかし虎吉は悪意は無かったと言っておる。」
「それは奴がシラを切っているだけでございます。」

「では問いを変えよう。もし、虎吉ではない者が、同様の書き込みを行ったらどうなっていたであろうかな?」
「それは書いた者にもよると思われますが、まあ多少の苦情はでるものの今回ほどの大騒動には発展しないでしょうな。」
「ところが、その書いた者に悪意があったとしたら?」
「!?」
「悪意がない書き込みが大騒動に発展し、実は悪意のある書き込みが簡単に聞き流されてしまう。この両者を分けているものは一体何か?」
「そ、それは長屋の者の受け止め方の差であると...」
「もう気付いたであろう。今回の騒動の原因は一体何だ?」
「...虎吉の書き込みを悪意有る書き込みと決めつけてしまった長屋の住人の思い込みでございます。」
「そうだ。これは悪意のある書き込みだと捉えてしまった長屋の住人の心の中にこそ、本当の悪意があるのだ。
もし虎吉を咎めるのであれば、儂は長屋の住人全員を咎めねばならぬ。」
「で、では、それ故御奉行は虎吉に何の咎めもせず放免と...」
「儂はただ甘いだけの裁きをしているわけではないのだ。」
「お、恐れ入りましてございます。」



−遠山家屋敷−

「しかし、悲しいのう。いつから長屋の住人は、そのようなすさんだ心の持ち主になってしまったのであろうか?」
妻・奈津(以下)「確かに寛容さがなくなりつつありますわね。」
「いや、寛容さということではない。」
「と言われますのは?」
「寛容さとは、相手の悪意を感じつつも許容できる心の広さということだが、儂が望んでいるのは相手の悪意の不在を信じるという心の純粋さなのだ。」
「それは世間で言うところの鈍感というやつなのではございませぬ?」
「鈍感か...お前の言うとおり、そうかも知れぬな。しかし、その鈍感さがどれほどの悪意を吸収してきたことか...。」
「はい。」

ある者は、他機種の書き込みをする。
  ある者は、サターン批評をする。
  また、ある者は、書き込みの度にハンドルを変える。
  さらに、...

でも、その書き込みの真意は、本当に悪意からなのか?
悪意だと思っているのは、ただの自分の思い込みではないのか?
本当の悪意を持っているのは、書き込みから悪意を感じ取った自分ではないのか?
相手の書き込みは、純粋な善意の産物ではないだろうか?
結局は悪意を生み出したのは自分なのだ!



このことをもう一度、皆が問い直せば、争い事のほとんどはなくなるのであろうにな。

ふっ、しかしこれは儂の馬鹿げた理想社会かもしれんがな。」
「あなた...、いつかそう言う日がやってきますわ。」
「そうかな...、いやそうでありたいものだ。」
「信じましょう。人の本性は善であることを。」
「ああ、儂も信じる。多少、道を踏み外すことがあっても、人は再び正しき道を進んでいくものだということをな。」
「ええ。」
「なんだか、今日はとても気分がいいな。おい、もう一杯お酒をついでくれないか?」
「はい。今日はとことん付き合いましょう。うふ...。」

最後にBBSの平和がいつまでも続くことを願って、もう一度ご唱和下さい。

これにて一件落着!

長らくのご愛読ありがとうございましたm(_)m
金さん製作委員会一同

そしてこれからもよろしく(^^

(注)この作品はフィクションであり。登場する個人・団体名は、実在のものとは何ら関係ありません。