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投稿者:
MASTER T featuring KZ @ ppp191.angel.ne.jp on 98/2/26 23:27:16
In Reply to: 「第8回メッセージ文コンクール」
posted by 高山 比呂 @ ppp-y065.peanet.ne.jp on 98/2/26 07:07:10
忘れもしない夏のある日。家になかったのです。
炊飯器の中、冷蔵庫の中、棚の中、どこにも、
何も食糧がなかったのです。
どこかに買いに行けばいいのですが、あいにく疲れていて
そんな気力はありません。空腹のためのたうちまわっていると、
どこからか声が聞こえました。レンジの方からでした。
中を開けると、エビピラフなどというものが入っていいたんです。
そして、喜びに酔いしれながら、私はその御方の恩恵を
受けたのでした・・・。
思えばあの時こそが、本当の意味でのエビピラフとの出会い
だったのだろう。もしあの偶然がなければあるいはその魅力に
気づいてなかったかもしれない。
目の前にエビピラフを出された時、まずその輝きに心
を奪われる。神々しいほどのそのツヤに。
それはただの油ではないか、いやいや、それはもはや
油ではなく、まぎれもないエビピラフの輝きなのである。
エビピラフはここから始まる。
それから、始めて個々に目を向ける。上品に小さくまとまった、
それでいて食欲をかきたてる赤いニンジン。
緩んだ気持ちをシャキッと引き締めるような緑のピーマン。
鮮やかな薄紅色で魅了して、心を捕えて離さない主役的立場
のエビ。(エビのないエビピラフなど、気の抜けたコーラと一緒だ。
何のはりあいもない。)それらを見事に調和させる白いライス。
そして、飾りとして端にあるだけなのに、異常なまでの存在感、
パセリ。熱い、熱い奴らだ。これがエビピラフの真実なのだ。
(これらの他に何か入っているのは邪道である。)
さて、見た目を確認したのち、ようやく手を動かす。
スプーンを持ち、すくい上げる。湯気と同時に漂う香り。
香ばしい香りは口に入る直前まで続く。
そしていよいよ口に入れ、噛みしめた時、香り以上のものが
はじけ出す。見た目からは想像できないような甘さが広がる。
一方にが過ぎもせず、かといって味がしないわけでもない、
ほど良いにがさが甘さとからみ合う。
さらに別のところでは海の香りを漂わせたもっとも香ばしい
エビが柔らか過ぎず固過ぎず、絶妙な感触を表している。
そしてそれらを受け入れるかのように、ほのかにバターの味を
させて、常に口の中をライスがうるおしている。
一噛みするごとに味がしみ出し、バターの香ばしさに乗って
どこまでも漂う。その味は、皿に残っているエビピラフに顔を
うずめて、もっと味わいたいと思ってしまうほどである。
それを我慢して、一口、また一口と食べていくのである。
ゆっくりゆっくりと食べていくのである。
そして、ほんの少しの空腹感を残して、
最後の一口を終えるのである。空腹感?そうなのである。
これがあるからこそ、「よし、また次も食べるぞ!」という
意欲が湧いてくるのである。(満腹の状態ではこんなことを
思いはしない。)これこそがエビピラフの、とっておきの最後
の魅力である。それでも「お腹が減ってどうしてもたくさん
食べたい!」と言う人。お皿にあふれんばかりに大盛りにする。
やってはいけないことである。ほどよく盛っているのが、
エビピラフの美学であって、お皿に目一杯あるものなど
エビピラフにあらず。ではどうするのか。心配には及ばない。
エビピラフには仲間がいるのではないか。
この世で最も愛称のいいコンソメスープ、
水々しくさわやかなサラダが。
エビピラフに抜かりはないのである。
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