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投稿者: 広谷田 舞香 @ ppp-y083.peanet.ne.jp on 98/1/29 18:20:09

In Reply to: 「第7回メッセージ文コンクール」

posted by 高山 比呂 @ ppp-y077.peanet.ne.jp on 98/1/29 07:02:16

 もう終わりだと思う。

 それはお互い感じてる。

 好きな人ができたとか、嫌いになったとか、そんなんじゃないけど、もうどこにも一緒にいる理由がないんだと思う。実際私はそう思ってる。

 でも、お互いに振りほどく強さも、そんな冷たさも持ってないから、今日もまた、キスをして、抱き合っている。

 だから、私は誰かを好きになろうと思う。恋はしようと思ってするものじゃないのかもしれないけど、それでも誰かを好きになりたい。それが、今まで付き合ってきたあなたへの優しさだと思ったから。

 月曜日、同期入社の堀内さんを夕食に誘ってみた。彼は仕事はできない方じゃないし、おしゃべりも面白くて、女子社員の中では結構人気のある存在だし、男子社員にも結構慕われているらしい。でも、あんまり噂話は好きな方じゃないから、良くは聞かなかったんだけど、先週、優貴が別に男をつくって一方的に振られたらしくて、それで最近、彼を狙っていた女子社員が順番に彼を誘ってて、彼も優貴のことを早く忘れたいからなのかわからないけど、その誘いを受けているっていう状況で、今日、奈津が休んだから、代わりに私が誘えるってことになって、それで今、2人で歩いてるんだけど、やっぱり彼は面白い人で、隣にいて楽しいし、飽きさせてくれない。でも、時折見せる悲しそうな表情というか、瞳孔の動きみたいなものを見ると、彼の明るさはどこか無理をしているようで、それが母性本能をくすぐるっていうか、慰めてあげたいっていうか、気になるっていうか、もうなんとも言えない気持ちになって、彼なら好きになれそうな気がする。その後、結局サイゼリヤで食事をとっただけで、手も繋いでないし、キスもしてないし、次の約束もせずに、駅で別れちゃったんだけど、それでも別に私に興味がなかったってわけじゃないと思うし、また誘えばまた一緒に食事してくれると思う。

 火曜日、上司の穂村係長補佐を誘ってみた。彼は、ナイスミドルっていうのを実体化したみたいな感じの人で、女子社員に好かれてるし、男子社員にも頼りにされてる。でも、もう奥さんも子供も2人いて、子ぼんのうで通ってるから、絶対に誘いにはのらないと思って声をかけたら、なんだか嬉しそうに受けてくれて、今、一緒のタクシーに乗ってるっていうのが、まだ信じられないでいる。本当は、不倫とかいいとは思わないし、家族に申し訳なくて、したくはないんだけど、彼を傷つけないためには、私が最低な女になって、それで別れるしかないって思ったから、誘ったんだけど、係長補佐はそんなことわかってなくて、なんだか勘違いして、私の手を握ってくるし、肩に手を回してくるし、なんだか普段の課長補佐じゃないみたいに、積極的で、下品で、なんだか嫌だなとも思ってたんだけど、優しいところはいつもと同じだし、女の子の弱い言葉とか態度を知り尽くしてるみたいに、素敵なことをたくさんしてくれて、不倫とかなんとかいう考えが頭の中から消えていってしまうような妖しさを秘めている男性だと思う。

 水曜日、後輩の飯井君を誘ってみた。彼は顔はいいんだけど、すっごく背が低くて、私と同じくらいしかないから、女子社員の中ではあんまり人気はないし、男子社員たちにいつも馬鹿にされてる。でも、一部のそういった女子社員には人気があるらしくて、たまに、昼食の時、女子社員に囲まれて食べてる姿を見かける。私はそういう趣味もないし、どっちかといえば背の高い男の方が好きなんだけど、人間外見より中身だっていうから、一応、今、食事をしているところなんだけど、彼、小柄の割には沢山食べる方で、ちょっとびっくりしたけど、一生懸命食べている彼の様子見てると、すっごく可愛らしくて、弟みたいな感覚になってきちゃって、思わず抱きしめたくなるっていうのかな、そんな気持ちになっちゃって、箸を止めて、ほおずえをついて、じっと見つめちゃった。しかも、ついつい私、食事代おごってあげちゃって、帰りのタクシー代も、彼の家、私の家の通り道にあったから、お金とらないで降ろしてあげちゃって、なんだか彼って、不思議な魅力があるな。

 木曜日、先輩の峪野さんを誘ってみた。彼をありきたりな表現で言うと、“スポーツ馬鹿”だとか、“脳みそも筋肉でできてる”だとか、ともかくそんな感じの人で、社内運動会とか、クラブ活動では活躍するけど、普段の仕事はまるで駄目。でも、根が体育会系だから、気さくな面があるし、芯がしっかりしてるし、飲み会の席では盛り上げ役に徹してくれたりするから、男子社員の間では結構リーダー的な感じで扱われてるらしいけど、女子社員にはあんまり、というか全く人気はなくて、誰も彼の話題はしてない。で、いざ2人っきりになってみると、普段の彼とは全く違って、無口で、態度もなんかおどおどしていて、一緒に歩いてるのに1メートルくらい間隔とっちゃったりして、ともかくすっごい緊張してるみたいで、そのあまりの純情さがなんだか面白いくらいだった。でも、終始その態度を取らてれると、なんかだんだん冷めてきちゃって、どうかなと思ってたんだけど、お酒が回ってきたら、普段の彼に戻って、楽しませてくれたし、細かいところまで気遣ってくれたし、なんか頼れるお兄さんみたいな感じがして、とっても好感が持てたし、男子社員のリーダー的存在になってるのもわかるような気がした。

 金曜日、同期入社の岸山さんを誘ってみた。本当は、裄蔭さんを誘いたかったんだけど、どうしても抜けられない接待があるって言うから、しょうがなく、隣にいた彼にしたんだけど、仕事もできないし、太っててかっこ悪いし、根暗だし、飲み会とかにも参加しないし、なんでこの会社にいるのか、いられるのかよくわからない人で、男子社員も女子社員も誰も相手にしてなてないような、どうしようもない人で、実際、一緒に歩いてても、食事をしていても、話しかけても、ちょっと勘違いしてるような目で見つめてくるだけで、何にも言ってくれなくて、本当につまらなかった。唯一、驚いたのは、体形の割には小食であるということぐらいかな。でも、食事が終わって、駅へ向かう途中に、いきなり「前から、あなたのことが好きでした」みたいなことを、何度も詰まりながら、大声で叫び始めちゃって、しかも「また会ってください」とかも言われちゃって、最初はちょっと嫌だななんて思ったけど、あんまりにも真剣だから、お互いの駅に別れる間際に、ほんのちょっとだけだけど、ドキっとした。

 土曜日、中学の同級生の高岡を誘ってみた。いつ会っても相変わらずな男で、お互い制服を着てないのが、おかしいように感じてしまう。本当は2人きりで会いたかったんだけど、彼が他の同級生も呼んであって、なんだか同窓会みたいになっちゃってて、楽しかったことは楽しかったけど、当初の目的ができないのでは、と思ってたけど、帰りに車で送ってくれる時、2人きりになれて、それで助手席に乗ってたんだけど、なんか隣で運転してる姿見てたら、家族、夫婦みたいな感じがして、すっごいドキドキしたって言うか、不思議な感覚に襲われて、なにを話してても上の空って感じで、家に着いても、まだその気持ちを引きずってしまった。

 日曜日、一週間ぶりに彼に会った。ここ一週間、いろんな男の人と食事したりしてたから、少しは彼のこと新鮮に見えるかなとか思ってたんだけど、やっぱりいつも通りで、でも、なんだかそのいつも通りって感覚が、マンネリを通り越して、心地いいっていうか、落ち着くっていうか、よくわかんないんだけど、ともかく彼といると気をつかうってことはしないし、会話がなくても成立するような独特な雰囲気を持っているような気がする。それに、今日はとしまえんに来て、普段よりも会話が弾んだし、表面的にはとっても楽しむことができた。でも、内面的にはいろいろ考えちゃってて、寂しそうな堀内さんを好きになって彼と別れるのか、魅力的な穂村係長補佐を好きになって彼と別れるのか、弟みたいな飯井君を好きになって彼と別れるのか、お兄さんみたいな峪野さんを好きになって彼と別れるのか、私を密かに想っててくれた岸山さんを好きになって彼と別れるのか、相変わらずな高岡を好きになって彼と別れるのか、それとも、今までずっと一緒だった彼と付き合い続けるのか。帰るまでには答えを出さなくてはいけないと心に誓って過ごしてきて、今、もう私の家の前まで来ている。あとは、送ってきてくれた彼が帰るだけ。答えはもうでている。あとは彼に言うだけ。「さよなら」と右手を上げて立ち去ろうとした彼の右肩を軽く叩いて、「え、なに?」と振り向いた彼の目を見つめて、

「あのね、私ね・・・」

 日曜日、家族4人でピクニックに来てます。今はちょうどお昼の時間で、おざしきをひいて、朝5時から作ったサンドイッチをみんなで仲良く食べてます。2人の子供と、主人に囲まれて、私は、やっぱりこの人を選んでよかったと心から思っています。「あ、隆司、きゅうり残しちゃだめでしょ」