リレー小説土星第26話『snow』3



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投稿者: イ中イ非 @ pppb91c.pppp.ap.so-net.or.jp on 98/1/28 09:23:13

In Reply to: リレー小説土星第26話予告

posted by イ中イ非 @ pppb91c.pppp.ap.so-net.or.jp on 98/1/28 09:18:22

私とエリーは、大きめのストライドで姿勢良く歩くレイの後ろを
素直について、ホテルを出た。雪は全く止む気配を見せない。
すっかり乾ききっていたコートに、また白が散りばめられていく。
レイは、さらに見知らぬ街の中をぐいぐい進んだ。
「いいのかなあ。こういうの」
エリーが白い息を吐きながら、不安げに私に話しかける。
「いいのよ。仕事に私情を持ち込む方が悪いのよ。自業自得ね」
「でも…」
「だいたい保護者としての責任を軽く見過ぎてるわ」
私は愉快で仕方なかった。あの男がホテルに戻って
誰もいない客室を見たら、いったいどんな顔をするだろう。
そう考えると笑いをこらえ切れなかった。
タクシーで来た道を30分ほどかけて歩き、私たちは
空港のロビーまで戻ってきた。
「最終の便には、間に合いそうだね」
レイが歩きながら振り返り、安堵の微笑をした。
「でも、地球に向かう飛行機なんてあるの?」
「いるんだよね。いつの時代にも危険な観光ツアー組む旅行会社と
喜んで参加する連中が」
「あなた、いつのまにそんなツアーの予約とってたの?」
「ちょっと君たち」
その時、私たちはすれ違った空港職員の男性に呼び止められた。
「お父さんとお母さんは、どこかな?」
子供だけでこんな時間うろついているのだから不思議はない。
私とエリーは答えに困り思わず目を伏せた。
レイは自信に満ちた顔で言った。
「大佐は後から来るよ」
その瞬間、職員は顔を真っ青にして
「し、失礼しました!」
の声とともに慌てた様子で去っていった。
「大佐って…」
エリーがぼそりとつぶやいた。
「いやな予感がする…」
私も誰に言うでもなく言った。