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投稿者:
イ中イ非 @ pppb91c.pppp.ap.so-net.or.jp on 98/1/28 09:22:04
In Reply to: リレー小説土星第26話予告
posted by イ中イ非 @ pppb91c.pppp.ap.so-net.or.jp on 98/1/28 09:18:22
そもそも、私たちがわざわざ月の裏側に来たのは、本当にくだらない理由からだった。
ここにはこの男の不倫相手がいるそうだ。
土星へ出張のついでに、一泊してから土星へ向かうつもりらしい。
私は無性に腹が立った。私たちを利用する大人はもちろん、利用されているにもかかわらず
雪に感動し浮かれていた自分自身に対しても。
ホテルへ向かうタクシーの中、私は男がうそ臭い笑顔で話し掛けてきても
一言も口をきかず、くもりガラスを拭いて、ただ外の移り変わる街の景色を眺めていた。
ホテルへ到着した私たちは、エリーと私、レイと男に分けて部屋をとり
ぎこちない食事を済ませた後、それぞれの部屋に戻り
思い思いの時間を過ごしていた。
エリーと私は、テレビをつけっぱなしにしたまま、軽く雑談したり
手元の本を読みふけったりしているうちに、眠くなり
互いの同意の上、消灯しベッドに入ろうとした。
その時、コンコンと誰かがドアをノックする音が聞こえた。
覗き窓をのぞくと、えんじ色のカーペットの廊下にレイがぽつんと立っている。
私は迷わずドアを開けた。
「どうしたの?」
「あの男は、こっそり女の所へ行ったよ。僕たちも行こうか。」
「何で私たちが、あいつの不倫相手に会いに行かなきゃいけないのよ」
私は怪訝そうにレイを見つめるが、レイは意に介さぬようであっさり答えた。
「違うよ。僕たちが向かうのは地球。」
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