リレー小説土星第26話『snow』



[ このメッセージへの返事 ] [ 返事を書く ] [ home.html ]



投稿者: イ中イ非 @ pppb91c.pppp.ap.so-net.or.jp on 98/1/28 09:19:34

In Reply to: リレー小説土星第26話予告

posted by イ中イ非 @ pppb91c.pppp.ap.so-net.or.jp on 98/1/28 09:18:22

『snow』

私は土星で出会ったあの男の子に会うために
生まれてから今までで一番大きな嘘をついた。
心が病んでいるふりをしたのだ。
「最近熱っぽい」と訴えながら体をふらふらさせ、学校に行くことをかたくなに拒否し
わざとベッドの温度を上げ寝汗をかき、寝言で何度も父親を呼んだ。
生まれて十数年にして、一世一代の大演技だった。
義母は当然心配し、私は何人もの医者に診てもらった。
もちろん仮病なので、病気の原因を見つけることなど出来るはずもなく
義母はさんざん悩んだ末、彼女の友人が紹介してくれた精神カウンセラーに
私を預けることを決心した。
カウンセラーはつまらない大人の男だった。
自分の利益を徹底的に追求するあまり、仕事の質は落ちるばかりで
マニュアル通りに動き、私の心に決して向かい合おうとはしない。
だから、男の出した私への薬はごく単純なもので
「その足で土星へ飛び、直接父親に会い話のひとつでもすれば
私の心は癒され、病も治るのではないか。」というものだった。
土星へ行くこと…それは、私たちにとっても好都合な結論だった。
私たちの本当の目的は、土星の私の父親に会うことではなく、ほかにあったからだ。