土星 第25話 その4



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投稿者: Qちゃん @ webgate.yamato.ibm.co.jp on 98/1/23 11:08:09

In Reply to: リレー小説土星 第25話 予告

posted by Qちゃん @ webgate.yamato.ibm.co.jp on 98/1/23 10:51:47

「大体わかったわ、あなた達の状況と、このお嬢さん・・・」
「アリスでございます。」
「あぁそうそう、アリスの正体もね。」

そして今、マサキ達はベネットと呼ばれた老婆の家のリビングルームの中にいた。
しかし、さきほどの老婆はそこにはおらず、そのかわりに、背中の真ん中くらいまである
美しい黒髪が特徴的な若くて背の高い女性(といっても男性と比べればそれほどではない)が
マサキの話を聞いている間中、使っていた端末から振り向いてそう話した。
眼鏡の奥の薄いブラウンの瞳は、ずっとモニターを見ていたせいか少し潤んで見えた。


ベネットはマサキの通う学校に併設されている、大学の研究室の学生である。
実際の年齢はほかの学生と比べると若いように見えるが、ベネットに年齢の話すると、
「女性に歳の話をするのは失礼よ」
と笑ってはぐらかされてしまうため、本当の所はよくわからないのである。
ずいぶん前に、図書室で熱心に宇宙船の構造についての本(データ)を読んでいたとき、
(当時マサキは自分で宇宙船を建造して、月に行こうと思っていた)
彼女から声を掛けられてのがきっかけであった。

ベネットの部屋は彼女の外見とは全く似つかわしくないほど、散らかっており、
特にコンピュータと宇宙技術に関する書物(データ)は、学校の図書館などとは
比べ物にならないくらい、沢山の物があった。

「わたしは、こっち方面では結構権威なのよ。」

というのが彼女の自慢であった。その時はどういう事かが理解できなかったが、
マサキは自分がこういう状況に置かれた今、頼れる人は彼女しかいないと思い、
家に帰らずに、そのままベネットの所に向かったのである。