夢見屋綺譚 第一話『夢ハ始マル』



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投稿者: 柏木耕一(旧・日光) @ ppp98c7.pppp.ap.so-net.or.jp on 98/1/05 23:03:50

 薄暗い路地を一人で歩いていると、街を歩いていたときよりも強い寒さを感じる。道の両脇に立つ、もう百年も昔からあるような古ぼけた木板が、路地の奥の暗がりまで延々と続いているのを見ると、その寒さはより一層ひどいものになった。

 僕──武藤聡志という人間は、元来寒さには強い方だ。北海道の奥も奥で生まれ、幼少時代を過ごしたせいもあるだろうが、暑いのよりは寒い方が我慢し易い。他人が普通寒い寒いと口にするようなときでも、一人Tシャツ一枚でぶらついたりすることもあるほどだ(もっともこれは、もとから僕がちゃらっ鉢な人間だということにも関与しているのだが)。

 そんな僕が唯一心の底から寒いと感じる場所、それがこの路地だった。ここの寒さは、何枚衣服を重ね着しようと防ぐことが出来ない。背中やうなじを、冷たい手で撫でさすられるような悪寒が、この空間一杯に満ち満ちているのだ。

 僕は一度だけ小さく身震いすると、ほんの少しだけ歩調を速めた。目指す場所はもうすぐだ。こんなところでぐずぐずしていて、風邪でもひいたらまるで馬鹿じゃないか。

 真っ直ぐに続く道をひたすら進むと、突然目の前に三叉路が現れる。ここで左の道を選び、二分ほど歩いたところ……そこが僕の目的地だった(余談だが、真ん中の道や右の道が一体どこに続いているのか、僕は全く知らない)。

 頼りなげな明かりを投げかける街灯にちらと目をやってから、左の道に足を向ける。途中障害物が何もないので、もうここからでも“目的地”の外観を窺うことができた。

 古臭い木造建築に、お世辞にも綺麗とは言えない看板がかかっている。

 看板には、「夢見屋」とだけ記されていた。



◆ ◇ ◆ ◇ ◆



 店に入ると、途端にむわっとした熱気が体を包んだ。無数の書物が雑多に置かれるその奥で、今時珍しいダルマストーブが熱を吐き出している。そのストーブの上では、妙にレトロな形をしたやかんが、しゅんしゅんと音を立てつつ鎮座していた。

 ぐるりと店内を見渡すが、誰か人がいる気配はない。どうやら相変わらず、ここの店員達は姿を見せていないようだ。

 鞄を床に降ろすと、ストーブの前に置いてあった椅子に腰掛け暖をとる。しばらくして十分に手が温まったら、そこらに積んであった本の山から適当に一冊取り出し、頁をめくる。僕がこの店の店主になってもう一ヶ月が経とうとしているが、その間何をしていたかと聞かれたら、「こうして本を読んでいました」としか答えられない。本当にそれしかしていなかったのだ。店員が働きに来ないのも、まあ頷けなくはない。

 頁をぺらりとめくり、物語を読み進めていく。こうしていれば時間の流れは変えられる──普段はどれほど停滞的な流れだったとしても、本を読んでいれば時間はその速度を増す。退屈なとき、僕は必ず本を読んだ。ジャンルとかを気にしたことはない。低俗なエロ雑誌から専門店でしか売っていないような哲学誌まで、そこにあるものをひたすら読んだ。幸いこの店は、蔵書の数だけは──それこそ売るほど──ある。並の本屋など到底足元にも及ばないような数の本が、ここには集められているのだ。

 沸いた湯で茶を煎じると、僕はずずっと一口それを飲んだ。あまり上等な茶ではないが、そんなのはどうでもいいことだ。取り敢えず喉を潤す役に立ってくれれば、それ以上のことは期待しない。

「……ああ、そういえば」

 あれを、すっかり忘れていた。僕は読みかけの本に栞を挟むと、鞄の中から紙束を取り出し、店の奥の座敷に上がった。畳ばりの「いかにも」和風な部屋だ。もっとも畳の目は疎らで、それほど大したものでもない。真ん中には卓袱台が据え付けてある。部屋の奥には随分年代物なのだろうと予測させる桐箪笥が置いてあるが、その中には何も入っていないことは僕が一番よく知っている。障子の向こうの部屋に目をやれば、何かざわざわと騒いでいるらしい影が見える──僕の用事が、そいつに関することだというのは、まったく鬱にならざるを得ない。

「静かにしてくれよ」

 多分聞こえないだろうが、とりあえずぶつぶつと文句をこぼすと、がらりと障子を開ける。

 そこで『奴』が、いかにも損をしたと言いたげな顔でこちらを見ていた。

「何だい、君か。君ならいちいち障子を開けなくてもいいよ。そんな間抜け面見たって面白くも何ともない。それより君ね、少しはあの、店員、あれを店に呼んでくれ。君は顔はまるで葬式の受付係みたいな辛気くさくて不機嫌な面をしているが、それでなかなか見目麗しい女御を連れてくるのは得意じゃないか。私だってそりゃ難しいよ。だからねえ、その不機嫌そうな顔を見せることはないんだ、店員の方を連れてきたまえ。ああそうだ、いっそのこと店員の誰かに店主の座を渡しまえばどうだろう。そうすれば私はそれなりに幸せな隠遁生活を送れるってものだ」

「……静かにしてくださいよ、鴉さん」

 部屋の真ん中で羽をばたつかせて散々喋った鴉は、僕の方をさも嫌そうにちらと見やる。

「あのねえ、私は鴉の姿をしているけど、前はそれなりに美丈夫だったんだぜ?」

「わかってますよ、それだからどうしたんです。今は鴉でしょ」

 そう、この鴉が、こともあろうに夢見屋のオーナーなのだった。さすがの僕も、最初に鴉が人の言葉を喋ったときは、それはもう驚いたものだ。しばらく付き合った今でも、あまり慣れたとは言い難い。鴉にぽんぽん罵詈雑言を投げつけられると、怒るより先に困惑する。

 何でもこの鴉──もとの名前は藤城武人といったらしい──は、夢見屋の仕事の最中に、呪いをかけられてこんな姿に変えられたらしい。ちなみに呪いは「のろい」とは読まない。「まじない」と読む。科学先鋒の現代社会で何を言うかと思われるかもしれないが、目の前に鴉になっている人間がいるのだから認めるしか手はない。

「なあ、一体何の用かは知らないが、そこに呆っと突っ立ってないでくれないか。はっきり言っちゃあなんだから歯に衣を着せてやるが、君みたいな醜男を見てたって面白くもなんともないんだ」

「全然着せてないじゃないですか」

 部屋の内装は、先程と大して変わらない。粗い目の畳に古い卓袱台、それに年代物の桐箪笥。ただしこちらの部屋の箪笥には、雑多に物が入れられているはずだ。それの中身は知らないが、鴉の物なのだからどうせ光り物か何かだろう。

 僕は畳の床に座り込むと、卓袱台の上にばさりと紙束を置いた。

「今回の事件のあらましです。目を通しておいてください」

 鴉は何とも器用なことに羽で用紙をめくって一通り目を通すと、僕の方を向いて悪態をついてきた。

「……フン、君もいっぱしに店主の仕事がこなせるようになってきたじゃないか。しかしね武藤君。君が考えていることはわかっているぞ。この束の最後、最後のこの数枚の紙片、こりゃ何だ? 別に私はこんなものを読んだとしても何の感慨も抱かないよ。これは君の問題でも何でもないだろう?」

「……そうですけどね。夢見屋店主として、仕事ですよ、次の」

「嘘をつくなよ。正直に言ってしまえ。助けたいのだろう?」

 僕は何も言わなかった。最後の紙片……それを読んだせいで、どうも僕の頭の働きは悪くなっている気がする。

 それは日記だった。とりとめのないことが書いてある。いや……とりとめのないことが書いてある頁も、ある。他は全て……。


 助けて……助けて……

 誰か……助けて……


 あまりに悲痛な心の叫び。精神の傷跡が、至る所に刻まれている。

「ふん。私はね、これを書いたのが誰だかわかったよ。当ててやろうか?」

「いいですよ、そんなの。それより、お願いします、鴉さん。夢見の仕事、やらせてください」

 僕は頭を床にこすりつけるぐらいに下げて懇願した。これは……僕の仕事だ。

「それを頼みに来たのか? ふん、随分な入れあげようじゃないか。君ともあろうものが不甲斐ない。一人の女を救済することが、それほど大事かね?」

「はい」

 僕は即答した。そうだ……何よりそれが大事なのだ。

「……ふん、馬鹿め。いいだろう、夢見を許可しよう。“紬”を使うがいい。しかしな、武藤君。これだけは覚えておきたまえ。この少女が抱えた心の闇は、きっと君が想像している以上のものだぞ。しかも彼女は救済されることを拒んでいる。それなら──君に出来るのは、“破壊”することだけだ。そんなことをすれば、きっと君は今ある“愛”を失うぞ。それでもいいのか?」

 僕はしばらく答えられなかった。あの人に嫌われるのはイヤだ。無視されたら、それだけで僕は鬱病になりかねない。それほどに僕は彼女が好きだった。対等とか、そんなことを言うつもりはない。どちらが上でどちらが下でも構わない。彼女と一緒にいられるなら、僕はそれだけで幸せだった。

 秋の翳りのような少女だった。その少女の心が傷ついているのを知ったのは、つい先日のことだ。この日記……彼女から直接手渡されたこれを読んだ瞬間、僕は自分が馬鹿なぐらい迂闊だったことを悟った。

 彼女は僕の仕事を知らない。夢見屋店主──人の心の隙間、一般に言う“夢”を渡り……あとは依頼次第だ。破壊することもあれば、治療することもある。何にしろ僕は人の心を破壊したり癒したりする力を持っているのだ。これが大したことだとは思わない。むしろ忌むべき力だろう。例えどれほどの事情があったとして、他人の心に勝手にずけずけと入り込み、あまつさえ改竄するなんてことは、許されるはずはないのだ。

 ともかく彼女は、僕の仕事を知らない。だからきっと……“さらけ出す”つもりで、これを渡してくれたのだろう。問題は“さらけ出した”闇が、あまりに根が深すぎるということだ。彼女を形成する幾つかのものは、確実にこの闇に根差している。

(救われない──)

 救われるはずがない。闇に根差した心は、決して闇以外を生み出さない。夢見屋の店主として幾度か他人の心に触れたから、わかる──闇は闇だ。他に転化することなどできはしない。ましてや、そこから何か本人を救う可能性のあるものなど、本人の基盤になるものなど、生まれはしない。

 だから──。

「構いません」

 闇を払拭することで、彼女が少しでも救われるのなら──彼女を救う手助けができるのなら──。

「嫌われても構わない。僕は夢見屋の店主です。その力で何かできるのなら──」

「思い上がるな、武藤君。君には何もできない。できるのは“破壊”だけだ」

「それでもいい、僕は“剣”です。彼女を助ける“剣”です。“剣”は切り払うのみ。そして誰かを救う、そのための手段です」

「──わかっているならいい。好きにしたまえ」

 鴉さんはそう言うと、そっぽを向いてしまった。彼が僕のことを心配してくれるはずなどない──それはわかりきっている。

 それでも、多分、



 彼は僕を心配しているのだろう。



◆ ◇ ◆ ◇ ◆



 3.17



 心が寂しい。ぽっかり穴が開いている。他の人からは、そういうふうには見られてないみたいだけど。とっても寂しいのです。人には、自分が一番知って欲しいことが、伝わらなくて。だから、私は“孤独”なんだと思う。それは、辛い。辛いよ。



 3.21



 いなくなりたいけど、自殺なんてしちゃいけないと思う。



 3.23



 責任放棄、したくない。どんな重い責任だって。投げ出したらいけないと思う。



 3.26

 辛くなってる。辛くないけど。狂い始めてる。狂ってないけど。壊して、直して、元通りになって……。



 3.29

 イヤなこと、あった。心が勝手に決められて……それも、気になる……心臓を鷲掴みにされたみたいな、辛さ……ある。最悪だ……最低だ……。



 3.30

 助けて。助けて。助けて。助けて。助けて……(以下、幾度も繰り返し)。



◆ ◇ ◆ ◇ ◆



 荒涼とした世界だった。砂漠とも違う……満たされ、かつ、荒涼としていた。満たしているのは──闇だ。

 気が狂いそうなほど、その闇は深かった。今まで何度か人の心の闇に触れてきたが、これほどに強く具現した闇は初めてだ。闇は気配と形を為し、降り注ぐ涙の雨が言葉を紡ぐ。

(寂しい)

(私は一人。一人で大丈夫)

(辛い。助けて)

(辛くなんかない。入ってこないで)

(あなたを壊してしまえば)

(私を壊してしまえば)

(永遠に続く)

(刹那に終わる)

(助けて)

(心が)

(痛い)

(心に)

(入ってこないで)

「──さん! ──!」

 僕は必死で彼女の名を呼んだ。特別意味があるわけではない──そうしたところで、彼女の叫びが途切れるはずもない。ましてや彼女の心が真の姿を明らかにするなど、そんなことはあるはずがない。

 しかしそれでも、僕は彼女の名を呼んだ。

「どこだ! ──さん! 答えてくれっ!!」

 悲しすぎる記憶の群が、彼女の心の外側を殻として覆っていた。僕が今いるのは、彼女の夢の一部──ほんの入り口だ。そこですら、これほどに強い拒絶を受ける。精神の最秘奥にはどれほどの強い虚無が満たされているのか、僕如きには想像もつかない。

 それまでじっと無言を保っていた鴉さんが僕の肩から飛び立ち、頭上に滞空する。

「武藤君、これほど──これほど深い闇は……君の手に負えるものではない。大人しく帰り給え。恥ずべきことじゃあないぞ。この少女は“閉ざしている”んだ。救済の手を自らはね除ける強さを、“不幸にも”この少女は“持ち合わせてしまって”いる!」

「わかってます、そのぐらいのことは!」

 彼女は強いのだ。傷を内に向ける強さ、辛さを露出しない強さを兼ね備えている。だから──だからこそ、闇もまた、深い。

「わかっているのなら止し給え! いいか、武藤君、君の力は認めるよ。最盛期の私とまでは言わないが、それなりの“夢操り”の力を得ている。しかし所詮まだ未熟者なんだ、君は! 精神病患者の持つ闇より遙かに濃いものだぞ、これは。君がどれほど彼女のことを理解していようと、いや、理解しているからこそ、救うことなどできない!!」

「救うんじゃない! 僕には誰も救えない!!」

 そうだ──僕が目覚めた力、“剣”──ただ斬りつけ殺すだけの能力だ。こんなもので何が救えるというのだ? 救えない。僕には誰を救うこともできない。僕は破壊するだけ……心の闇を破壊するだけだ!

「その後は……彼女が、彼女自身を救うんだ」

 轟々と吹きつける風が、夢の終わり……現実へと僕を押し戻そうとする。放射線状に降る涙の雨が、僕の体を刺し貫いて不毛の心の大地へと染み込んでいく。痛みと絶望、言い様のない圧迫感を受けながら、それでも僕は前に進んだ。足を一歩踏み出す。そしてまた一歩、一歩……ゆっくりと、心の中に入り込んでいく。

(入ってこないで)

(助けてなんか欲しくない)

(一人で大丈夫)

(だから)

(私に触れないで!)

 狂気にも似た冷たい感情が、“毒”──彼女が持つ心の痛み──を乗せて吹き荒れる。皮膚を切り裂かれ、血がまるで花弁のように風に舞い散った。ほんの小さな傷なのに、何故か痛みだけは酷い。肉を一寸刻みにされたような──勿論そんな経験はないが──苦痛だった。

 拒絶されている……やはり、僕では彼女に触れることは許されないのか──?

「……もう遅い、武藤君。一度君は「やる」と言ったのだ。覆すな。心を翻すんじゃないぞ。ここで君が引き返してしまえば、彼女の心は閉ざされたままだ。いや、それどころか、もっと酷いことになりかねない。私達は何が目的であれ“侵入者”であることを忘れるな。私達は既に彼女の心を土足で荒らし回ってしまったのだ。傷跡をより深く苦しいものにすり替えてしまったのだ。彼女を救いたいのなら、決して彼女の闇に負けるな。闇を、傷を払拭するのが君の役目なのだ」

「……っ!! ──わかってます!」

 そうだ──許されようとするのは、僕の甘えだ。彼女にとって僕は“侵入者”なのだ。どこの馬鹿が、自分の家に押し入った強盗を許すというのだ? そんなはずはない。僕は結局、ここにいる限り“許されざる者”なのだ! 彼女の闇を切り払う以外の方法で、彼女を救うことは──許されるかもしれない、小さな要素……希望を手にすることは──できない!

「救済者は、許されない! 武藤君、理解し給え!! あの磔台の上の罪人が、一体どれほどの人に許されたのだ? 偉そうな世迷い言ばかりぬかす中国の学者が、奴隷解放を実行したアメリカの大統領が、誰に許されたのだ! 彼らは許されなかった。だからこそ人を救い得たのだ。しかし許したのはごく僅かな人々に過ぎない。君も同じだ! 君を許す者は──何をやったところで──結局、“たった一人”しかいないということを忘れるんじゃないぞ!!」

「あぁぁっ!」

 彼女の心の中心を守る防壁──それに辿り着いた。
 時間が交錯する。鴉さんが何かわめいたのは、辿り着いた後か? 辿り着く前か? 僕が絶叫したのは──。

「う・わ・あ・あ・あ!」

「これは君がしたことだろう! 君の為した罪だよ!! 君が──彼女の“壁”だ!」

 そう──彼女の心の中心部を守る防壁……それは……。


 “僕”だった。



 僕は──。



 ──あなたを守るよ──



 ──ありがとう──



 「守るよ」




「ふざけやがって!」

 掌の中に、細く長い剣をイメージする。想念は形と力を得……具現化する。僕の、夢見屋店主としての能力、“剣”だ。

「何様のつもりだ、この大馬鹿め!」

 剣を壁に突き立てる。無数の“僕”が、呪詛の如き呻きをあげる。血飛沫が体中にかかり、鉄臭さが鼻腔を刺激した。しかしどうでもいい──ただひたすらに、どうでもいい!!

「おまえは……おまえは、守ると言っておきながら──傷つけているだけじゃないか!」

 “僕”という壁は、確かに壁としての役割は果たしていた。しかしそれは醜悪で陋劣な代物だ。彼女の心に深く爪を突き立て、何とかその身を保っている……彼女を傷つけ、己を立てている!

「ふざけやがって! 壊してやる! 壊してやるぞ──!!」

「武藤君、落ち着け! これは壁だ──壁以外の何者でもない。これは彼女が造り上げたんだ──君は彼女の心になんか“入っていない”じゃないか!」

「壊してやる! 壊してやる! 壊してやる! 壊して……!!」

 壊れたCDプレイヤーのように、僕はそれだけを叫び続けた。

「壊してやるぞ、『武藤聡志』!!」



 続く