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投稿者:
広谷田 舞香 @ ppp-y109.peanet.ne.jp on 97/12/25 17:25:18
In Reply to: 第6回メッセージ文コンクール
posted by 高山 比呂 @ ppp-y065.peanet.ne.jp on 97/12/25 09:23:36
青、白い雲、赤い太陽。
こどもの空に、私は包まれていた。
都市と言うにはあまりにも寂しく、町と言うには騒々しすぎる、この街。
別に用事があったってわけじゃなくて、ただ、なんとなく通り抜けてみようかなって。それで、昨日買ったばかりのブーツを履いて、おもちゃの兵隊の行進みたいな不自然な歩き方で、歩き始めてから、えっと・・・もう20分も経ってる。
でも、まだ歩こっと。
そういえば、あの曲がり角を折れたところで、マフラーの温もりを感じ合ったんだっけ。お互いの距離が少し近付いただけで、ドキドキしてたな。
車のクラクションが遠くで鳴った。
そう、この電柱のとこで思い立ったように、ふたり巻き合ったんだよね、でも本当はタバコ屋の前の交差点から、ずっとソワソワしてたの知ってたんだよ。
ふたり乗りの自転車が通り過ぎる、後ろの女の子は、なにかを拝んでるかのような手に、息を吹きかけていた。
あ、ブランコが新しくなってる。じゃ、靴飛ばし競争した時に使ったのは、もう無いんだ。あの鎖の錆びた感じの手触り、まだ覚えているのにな。でも、あの時は本当に面白かったな。ふたりとも子供よりはしゃいじゃって、ケンケンで靴取りに行く時お互いに押し合ったりしちゃって、最後には彼のベージュのコート、泥だらけになっちゃって。・・・そう、無くなっちゃったんだ。
手押し車を押しながら歩いてくるおばあちゃん。すれ違う時、なぜか会釈してきたので、とりあえず私も頭を下げておいた。
このイレブン、よく帰りによったっけ。肉まんとあんまん、はんぶんこして、交換しあったり、彼が私のコーンスープ飲みほしちゃって、お返しに彼のおしるこ飲んじゃったりとか、してたんだよね。あ、オーナーさんだ。あの人、本当にいい人だったな。
ちょっと奥まったところにある脇道で、赤いランドセルに黄色い帽子をかぶった2人の女の子が、リコーダーで、不器用なエーデルワイスを奏でていた。
あの横断歩道で、佳世子と山村君カップルと一緒に、アビイ・ロードの真似したな〜。佳世子がジョージで、山村君がポールで、私がリンゴで、彼がジョンで、それで縦一列に歩いちゃってさ、ほんと、くだらないことしてたな〜。それで結局あの2人、結婚しちゃったんだよね。
向こうから歩いてきた幼稚園生を笑顔で送る、その子は満面の笑みを浮かべて横を抜ける。
は〜、ついに着いちゃった。う〜ん、この駅の、この掲示板の前でよく待ち合わせしたっけ。彼がいつもちょっとだけ遅れてきて、ごめんって言いながら向こうから走ってきたんだよね。私、彼が遅れるのわかっているのに、いつも約束の30分前には、ここに着いてたんだよね。そうそう、この柱に寄りかっかってさ、冷たくなった手をこすりあわせながら、彼のこと、待ってたんだよね。・・・もう、待つ必要、ないんだよね。
横から来た男子高生をよけながら、自動券売機の方に向かった。赤のダッフルコートは、無理な明るさで彼女を包んでいた。
あ、あのコート・・・。
黒のダッフルコートを着た男が切符を買っている。女の左足は、その場から動けなかった。
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