投稿者: 柏木耕一(旧・日光) @ p03-dn02kuki.saitama.ocn.ne.jp on 97/11/27 17:17:22
In Reply to: 第5回メッセージ文コンクール
昔々、あるところにお兄さんとお姉さんがおりました。 シーバトラー川瀬と呼ばれておりました。全くそのままの名前でしたが、川瀬さんは英語の成績が見るも無惨なものだったので、バレることはありませんでした。さてそんな川瀬さんですから、パワーは尋常じゃありません。 大方の予想通り、川瀬さんが洗った洗濯物は、そのパワーの前にズタボロになってしまいました。 でも洗濯物の中に 見覚えのない女物の下着があったので、川瀬さんはそれを念入りにズタボロにしました。すると川上から、どんぶらこ、どんぶらこと栗が流れてきました。 「あら、栗の花の香り」川瀬さんはわかる人にはわかる危険な台詞を吐きました。 川瀬さんは栗を掴もうとしましたが、棘が痛くて掴めません。仕方なく川瀬さんは、ズタボロにした洗濯物を繋いでロープ状にしました。そして西部劇の要領で、そのロープをえいやっとばかりに栗に巻き付けました。 そして川瀬さんは、その栗を家に持って帰りました。 家ではお兄さん−−名前は真一さんとしておきましょう−−が、 勝手に他人の山で採った松茸を売った金を数えていました。その傍らにはさるぐつわを填められ麻縄で亀甲縛りにされた娘が転がっています。「あら真一さん、そこの女はなに?」 「いやあ、松茸取りを邪魔したから、拉致ってきたんだ」 ちなみにその娘は、山の正式所有者の娘でした。 「拷問はやめてくださいよ。うるさくて眠れやしないんですから」 「わかった、今夜はソフトSMにするよ」そういう問題でもないのですが、二人はそんなこと気にするタマではありませんでした。 「ところで川瀬、その栗は何だい?」 馬鹿でかい栗を指さして、真一さんは尋ねました。 「川を流れてたところをとったんです」 「よくとれたね、そんな棘々しいモノ」 「ロープが頑丈ですから」 「ロープ見せろ」「イヤ」川瀬さんはあっさり首を横に振りました。 「ねえ真一さん、今夜は栗御飯にしましょうよ」 「えっ、ひょっとして……君が作るの……?」 真一さんは恐れおののきました。ちなみに川瀬さんの料理は、第二次大戦中731部隊が五千万払ってでも手に入れたがったという驚異の兵器としての側面を持っていました。 「当たり前じゃないですか。久しぶりに手料理を食べさせてあげますよ♪」 やたらと機嫌のいい川瀬さんとは対照的に、真一さんは死の恐怖を通り越して死の覚悟すら決めたようでした。 「な、何にしろ、まずは栗を割ろう」 内心栗が腐ってたらいいなあなどと、真一さんは今まで祈ったこともない神様にお願いしていました。 「はい、じゃあ、どいててください」 川瀬さんはそう言って包丁を出しました。 その包丁たるや、刃渡り3mはある、ドラゴン殺しも真っ青な包丁でした。 「ぬぅえりゃああぁ!!!!」まるで「天地を食らう」の張飛のような絶叫を上げて、川瀬さんは包丁を振り下ろしました。 めぎがんというどスゲエ轟音と共に、包丁は栗を二つに分断しました。 するとどうでしょう、中から恐怖に打ち震え泣くことすら忘れた赤子が出てきました。 「あら、栗の中に赤ん坊が……これはきっと、いつまでたっても子供のできない私達への、神様からのプレゼントだわ」 川瀬さんは嬉しそうに言いました。 子供ができない真の理由は、真一さんがあまりに回数を求める川瀬さんに愛想を尽かし、 途中で玩具に切り替えてしまうからなのですが、川瀬さんはどうやら気付いていないようでした。真一さんはほっとしました。その赤子はクリ太郎と名付けられました。栗太郎でないのは両親の趣味です。 クリ太郎は、すくすくと元気に育ちました。 「あら真一さん、クリ太郎の方がナニが大きいわ」 「……切り落とせ」6歳のとき、クリ太郎はクリ子になりました。 「おい川瀬、クリ子の方が胸がデカいぞ」 「クリ子、あんまりあると垂れますよ」8歳の時、クリ子は強制的に幼児体型にされてしまいました。 そして6年の歳月が過ぎました。 14歳のクリ子は、ロリ好きなら一千万払っても手に入れたがるような女の子に成長していました。密かに真一さんもツバつけてます。 ある日突然、クリ子はこんなことを言いました。 「親父、お袋。あたし、鬼退治に行く!」 そんなことを言った真の理由は、 いい加減真一のセクハラに耐えられなくなったからなのですが、クリ子はそんなことお首にも出しません。丁度このころ、都はお姫様が鬼にさらわれたというニュースで持ちきりでした。 「クリ子、そんな危険なこと……」 「いいえ、行かせて。鬼に奪われた宝を取り返し、ついでに姫様も救いだし、必ず戻ってきます」 「姫は俺」「宝は私」両親のゲスぶりに、クリ子は言葉もありません。 「それならこの吉備団子を持っていきなさい。わたしの愛情がこもってるわ」 「えっ……」 ひょっとしてお手製なのではと思い、クリ子はそれを素手で触れるのはやめにしました。 死んではどうしようもありません。 クリ子は両親に見送られ、家を出ました。 内心 「ようやくあのゲスどもから逃げられる」とクリ子はウキウキしていました。あの二人を相手にするぐらいなら、鬼と戦っていた方が一万倍もマシです。クリ子は川瀬さんから戦闘訓練を受けていたので、その強さは海を割り天を裂き山を砕くほどのものでした。 途中犬と出会いました。 「ワワンワンワンワワワワンワン(訳:クリ子さんクリ子さん、お腰につけた吉備団子、一つ私にくださいな)」 犬が言いました。 しかしクリ子は犬語はわかりません。「ワンワンワンワンワワン……」 「うるさいわねっ、あたしにわかるよー喋りなさい!」クリ子さんは無茶なことを言いました。 クリ子はいい加減面倒になったので、飛天御剣流九頭竜閃で犬を斬り殺し、犬鍋にして食いました。 クリ子はこの調子で猿鍋と雉鍋も食いました。 さて、あっという間に鬼ヶ島です。見渡す限り鬼鬼鬼、右を見ても左を見ても上を見ても下を見ても鬼ばかりです。 「上と下……?」クリ子は疑問に思いました。 「うがぁぁぁぁぁ!」 無数の鬼達が襲ってきます。当然の話です。 しかしクリ子は慌てず動じず、川瀬さんから貰った吉備団子を(ゴム手袋を八重につけて)取り出しました。 クリ子は無慈悲にそれを鬼達に投げつけました。 「戦術兵器、零式神風!!」鬼達はバタバタと死んでいきます。さすがエボラも実はあいつの仕業だったと噂される川瀬さんの料理の腕です。 しかし目測を誤って、 ついでにお姫様も殺してしまいました。「親父への土産がなくなった……」 クリ子は焦りました。別に真一に義理があるわけではありません。ただ自分の貞操を心配しただけです。 そこでクリ子は、帰宅途中適当な村を襲い、めぼしい美人を百八人さらってきました。当然母親への土産は鬼の宝+村を襲って手に入れた宝です。 家になんか帰らなきゃいいだろうと思うかもしれませんが、そうはいきません。真一の嗅覚と川瀬のパワーがあれば、クリ子が例えアイヌに変装したって 七秒で滅殺です。「ただいまー!」 クリ子が家に帰ると、真一と川瀬はお盛んな最中でした。 「親父、いい加減玩具使うのやめなよ」「あっ、馬鹿、ばらすな!」 「……何ですって……?」 凄惨な殺人事件が起きる寸前に、クリ子は女と宝を差し出して父と母の気を引きました。 後にこの家族は、都と全面戦争に突入、破竹の勢いで京の軍隊を破り日本を制覇するのですが、それは別のお話。 よい子の民話 クリ子 お終い |