愛の十五分劇場 『相川健太郎の場合』



[ このメッセージへの返事 ] [ 返事を書く ] [ home.html ]



投稿者: 柏木耕一(旧・日光) @ p07-dn01kuki.saitama.ocn.ne.jp on 97/10/22 17:44:20

「きりーつ、れーい……さよーならーっ」
 一斉の挨拶と同時に、学校での一日、終了。はー疲れた疲れた……ったく、今日は一体なんだってんだよ……。
 悠子ちゃんは相変わらずワケわかんねえし、何でか知らないけど京介は学校にいやがるし……。
 そういやあいつ、今度転校してくるみたいなこと言ってたっけな。大変だろうなぁ……あいつのことだから、馴染むのには時間かかんねえだろうけど(こういうとこが、俺とあいつの決定的な違いだったりするのだが)……勉強の進み具合とか、違うんだろうなあ。同情するぞ、京介。
「おーいっ、けんたろーっ。一緒に帰ろーっ」
 ……あんまり大声で呼ばないでくれ……。
「あんだよ、京介……」
 俺は険悪な口調で、ぐるりと声がした方を向いた。予想通りそこには、俺のイトコである京介が、何故かむやみやたらにニコニコして立っている。みんなが制服着てる中の一人だけ私服だから、目立つことこの上ない。
「一緒に帰ろうよ。どうせ部活なんて出ないんでしょ?」
「全くもって正解だが、そう言われると何かひっかかるものがないでもないぞ」
「あははは。冗談だよ、冗談。さ、帰ろ帰ろ」
 結局俺は、こいつに引っ張られるようにして校門を出たのであった。

               ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

「なあ」
 何か不可思議な現象に、俺は思わず間の抜けた声を出してしまった。
「なに? 突然。鳩が魔神ハンターミツルギに襲われたような顔してさ」
「いや別にそんなマニアックな例えはいらないんだが……」
 こほん、と咳払いを一つ。
「おまえは、家に帰るんだよな?」
 尋ねる俺に、京介はあくまで呑気な風に「そうだよ」と答える。
「で、おまえの家は、どこだ?」
「ここ」
 何度指さされても、そこが突然そうでなくなるはずがない。そこはいつまでもそこなのだ−−つまり、俺の家。
 ……どういうことだ!?
「お邪魔しまーす」
 俺の煩悶を余所に、爽やかな春風にも似た足取りで、京介は俺の家へと入っていった。
 ……何がどうなってるんだ……?

 続く

 −−−−−−15分終了−−−−−−−−