愛の十五分劇場 『相川健太郎の場合』



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投稿者: 柏木耕一(旧・日光) @ p07-dn01kuki.saitama.ocn.ne.jp on 97/9/29 11:55:30

 屋上に続く扉が、がちゃりと開かれた。普段なら絶対開けられるはずのない、誰かがノブに触れることすらないはずの扉。
 それが軋んだ音をたてて開いていく。
「あ……」
 現れたのは一人の女生徒だった。名前も素性も知っている−−青海悠子(あおみ ゆうこ)。私立舞河学園一年蘭組、部活動は美術部に所属。同じく美術部に所属する俺とは、とりあえず先輩後輩の関係に当たる。もっとも、あまり親しくもないのだが……。
「……こんにちは」
「ちわ。どした、こんなところに何か用か?」
 何も用件などあるはずがない。それがわかっていて聞いているのだから、俺も相当意地の悪い人間なのだろう。
「……はい」
 しかし彼女は俺の予想を裏切る返事をした。短い髪をかきあげ、じっとこちらを見つめてくる。
 この眼−−相変わらずだ。これ故にこの子を嫌う人間が多い……それほど特徴的な眼差しだった。
 普段のこの子は勉強も運動も人並み、友人はあまり多くなく、休み時間になると一人で本を読んでいることが多いという、典型的な『内向的文学少女』だ。部活内でもこの子とまともに会話をしたことのある奴は少ない。何せ態度が義務的だ−−必要以上に喋ろうとせず、そしてこちらから話しかけなければ絶対口を開こうとしない。質問・他愛のないお喋りに対しての反応は示すが、あくまで『反応』の範疇を出ない。
 よくこの子は『アタマがおかしい』とか言われてる。時折ふらっといなくなったり、授業中突然立ち上がって「待ってるのに」とか一言呟いて気を失ったりしているからだ。
 でも……俺は、そんな彼女が嫌いじゃない。言葉が少なすぎるきらいはあるが、それは決して忌むべきことでもないはずだ。口数が少ないのは美徳だと思う俺にとって、彼女はまさしく友達としては最適の女性である。気が違っていても、俺に直接被害が来ない限りは我慢できるしな。
 それに何より、あの眼差し−−冷徹に全てを見つめるあの眼差しが、俺はたまらなく好きだった。
「……こんなところに、どんな用が?」
 尋ねる俺に、悠子(ちゃん付けするのは面倒くさい)は、相変わらずの眼差しを向け言った。
「先輩に、会いに」

 続く(のか?)

               ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

               −−あとがき−−

 十五分終了ーー! さてさて、次回登場する新キャラを大募集! 年齢性別外見性格家族構成から隠された設定まで何でもござれ、できることなら健太郎君との関係も書いてくれると有り難いですですー!
 ……ところでこの話、健太郎君が自己紹介してないのね(笑)。