『なかよし』



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投稿者: ホキーヌ @ gateway.toyobo.co.jp on 97/9/25 17:13:46

In Reply to: 第3回メッセージ文コンクール

posted by バシル (臨時代行) @ ShibataK-dos2.s.fukuoka-u.ac.jp on 97/9/25 11:00:19

土曜日の午後の○×書店。
あまり大きくないこの書店には、帰宅途中の学生がほとんどで、他にはあまり客は居なかった。
その書店の手前の方で、Aは雑誌を立ち読みしていた。

プルルル…プルルル…。
Aの携帯電話が鳴った。
A「ん?…はいよ?」
B『もしもし、こちらBと申しますが、Aさんですか?』
A「あ?Bか?俺の携帯にかけたんだから、俺が出るに決まってんじゃん。」
B『もしかしたら、ついさっき落として、誰かが拾ったのかもしれないよ。』
A「そんなちっちゃな可能性の為に、長々と喋るなよ。」
B『はは、いいじゃん。』
A「いいけど…で、何?」
B『ちょっと買い物に付き合ってよ。暇でしょ?』
A「買い物?いいけど…何買うんだよ?」
B『色々と。そうそう、今どこ?』
A「○×書店。」
B『じゃ近いや。すぐ行くから待ってて。』
A「おう。すぐ来いよ。」
B『はは、分かったよ。』

…プツ。電話が切れた…と思った瞬間、
B「よう。」
A「…!?は、はえ〜な、おい?」
B「俺もこの本屋に居たからな。」
A「はぁ?なら、電話じゃなく直接声かけろよ。」
B「はは、そうだな。でもいいじゃん、別に。」

書店を出て、テクテク歩きながら、
A「別にいいけど…で、これからどこに行くんだよ?」
B「駅前まで。」
A「駅前ぇ!?」
B「どうした?もしかして、お前も今から行く所だったとか?」
A「違うよ、遠いよぉ…。」
B「はは、いいじゃん。トモダチだろ?」
A「違うよ。トモダチなら、そんなツライ事させないって。」
B「あ!ちょっと待って。タバコ買ってくる。」
A「タバコ?タバコってお前、誰かに見つかったらどうすんだよ?」
B「俺んじゃないよ。オヤジの。」
A「…お前のオヤジ、禁煙中だろ?」
B「だから買うんだよ。」

二人は、趣味でやっているような小さなタバコ屋へ入っていった。
B「おばちゃん、セブンスターを3つ、ちょうだい!」
おばちゃん「はいよ。…690円だよ。」
B「計算速いね。」
そう言って、1700円を渡す。
おばちゃん「そうかい?…はいお釣。」
タバコ屋のおばちゃんは嬉しそうに、お釣の1010円を渡してくれた。
B「ども。」
A「………。」
おばちゃん「ありがとね。」
二人はタバコ屋を後にした。
A「………。」
B「どした?」
A「別に…。」

突然。
B「1、2、3、4…」
A「何数えてんの?」
B「9、10、11、12…」
A「おいっ!?」
B「17…」
A「………飽きたら教えてくれ。」

Bに相手をしてもらえないAは、Bが数え間違えるように大きい声で番号をずらして言ってみたり、すれ違う若い女の子に点数を付けてみたり、森本レオのモノまねをしてみたりしながら、テクテクと歩いていた。

二人がコンビニの角を曲がると、数百メートル先に小さな駅が見えてきた。
A「そろそろ、駅前だぞ?」
B「2万7011…」
A「…おい、途中から聞いてなかったけど、…ズルしただろ?」
B「6万5535…」
A「やっぱり…。」
B「はは、あ!あそこだよ。」

そう言って、Bは駅のすぐ向かいにあるコンビニを指さした。
A「コ、コンビニかよ!?」
B「ああ。」
A「コンビニなんて、ここへ来るまでに3つも4つもあったじゃねぇか!」
B「俺、あそこのコンビニに入った事が無いんだよ。」
A「そんな理由で、あそこを選んだのか!?」
B「駄目か?」
A「駄目じゃないけど…疲れたよぉ…。」
B「はは、俺もスッゲー疲れたよ。」
A「………で、何買うんだよ?」
B「靴下とライターと肉まん。」
A「もう、好きにしてくれ…。」

しばらく歩くとコンビニに到着した。
二人は、コンビニのドアを開けて中へ入っていった。
A「たくさん歩いたから、腹減ったよ。何か食い物買おっと。」
B「はは、悪かったな。おごってやるよ。」
A「ホントか?んじゃ、カレーまんとピザまんとジャワティ!」
B「分かったよ。」

Bは『だから宇宙人は本当にいる!』と訳の分からないタイトルが付いた文庫と乾電池とシャンプーとジャワティ2本をかごに入れて、運良く他に客のいないレジへ持っていった。
A「おい!?靴下とライターは?」
B「欲しいのか?」
A「………。」
B「あと、カレーまん2個、ピザまん1個も下さい。」
店員「はい。」
若くかわいい女性の店員が、慣れた手つきで素早くレジに入力し、
店員「1816円になります。」
Bは財布からお金を取り出し、店員に渡した。
ジャラ…。
店員「2152円…?で、いいんですか?」
B「そのはずです。」
店員「………。」
A「………。」
店員は、今受け取った小銭の中からお釣を取り出して、
店員「…336円のお釣になります…。有り難う御座いました…。」
B「ども。」

二人は店を出て、軒先に座り込んで今買ったモノを食べだした。
A「あの店員、不思議そうな顔してたぜ?」
B「俺に惚れたな。」
A「………かもな。」

食べ終わると、また突然、
B「ゴメン。ちょっと駅のトイレ行ってくる。」
A「あ、俺も行く。」
Bは駅のトイレへ向かって、足早に歩いていった。
Aもそれにつられて、同じく早足になった。
駅のトイレは、新しくはないがマメに掃除されているせいか、意外と奇麗だった。
A「結構と奇麗じゃん?」
B「…。」
バタン!
何も言わず、個室に入るB。
A「…わははは、腹でも痛くなった?」
B「…。」
A「俺をこんな所まで連れてきたから、きっとバチが当たったんだよ。」
B「…。」
A「ま、これに凝りて、ちょっとは計画立てて行動するようにしろって事だよ。」
B「…。」
A「…ゴチャゴチャ喋ってたら、落ち着いて出来ないってか?わははは。外で待ってるよ。」
B「…。」

Aがトイレから出てきて、10分が過ぎた。
A「遅い!」
A「何してんだ!?…って、何してるかは知ってるが、何でこんなに遅いんだ!?」

更に10分が経過した。
Aはゲームボーイで遊んでいた。昔懐かしい『オクトパス』だ。
A「遅過ぎる!」

更に10分が経過。
Aは新記録を出していた。
A「がーっ!!!」

Bはゲームボーイをズボンのポケットにしまい込み、肩を怒らせてトイレに入っていった。
A「こらっ!B!いつまでしとんじゃ!」
B「…。」
A「おい!居るんだろ!?返事くらいしろ!」
B「…。」
A「………!!!」

ガタン!
AはBが入っている個室によじ登り、上から覗き込んだ。
A「お、お前はぁっ!!!さっき買った本読んでんじゃねぇよっ!!!」
B「…?」
A「しかも、ほとんど最後まで読んでやがる!」
B「…いい所なんだ。静かにしててくれ。」
A「…先に帰るぞ!?」
B「分かったよ、出るよ。そんなに怒るなよ。」
A「ったく…。ま、新記録出たから良いんだけど。」
B「だろ?」
A「だろ?、じゃねぇっ!」

二人はテクテクと、来た道を戻りだした。
A「さっき買った本、そんなに面白かったのか?」
B「ああ。あんまり面白かったんで、2回も読んじゃったよ。」
A「………。さっきは遅い、なんて言って悪かったな。お前、読むの速いんだな…。」
B「はは、いいよ、別に。気にしてないし。」
A「気にしろ………。」

しばらくの間、二人はなんとなく何も喋らずにいた。
またまた突然、Bが、
B「おっ!バスが来るぞ!乗らない?」
A「嫌。ここまで歩いてきたのに、今更…。勿体無い。」
B「嫌なんて言わずに…。たまにはいいモンだよ?」
A「良くない。」
B「いや、いいって。」
A「て…て…て…てぇ?…!てぇへんだ、てぇへんだ!バスが!バスガス爆発!」
B「ツマランぞ。」
A「ぞ…ぞ…ぞぉ?」

二人はテクテクと歩きながら、変なしりとりをしていた。
そうこうしているうちに、Bの家が近づいてきた。
A「やっとお前ん家に着いたな。」
B「ああ、有意義な休日だった〜。」
A「んじゃ、また誘うけど、その時はヨロシクな。」
B「おいおい、今日は俺が誘ったんだぞ?」
A「はは、いいじゃん。」

−終わり−