投稿者: さすらい @ 133.65.41.10 on 97/9/25 12:39:59
(もうすぐだ・・・もうすぐヨーコの乗っているサイヴァーに近づける・・・) どどぉぉぉぉぉぉぉん現状を把握する暇もあればこそ。生々しい衝撃が僕たちを包み込んだ。 「ってぇ・・・・」 「きゃー、すみません〜」 したたか頭を打ち付けた僕は、座り込んで半泣きなアリスにため息をついた。 ・・そうだ、こんなことやってる場合じゃない。黒い船体とぶつかったのだから、このまま乗り込めるはずだ。 前方をよく見ると、床に男が倒れているのが見えてた。どうやら、操縦していてもろに衝撃が来たらしい。 いまがチャンスだ。もうしばらくすれば、あの男も立ち上がるだろう。その前にけりを付けなくては!! 「アリス、ここで待ってて」 「ええっ、、、私もいきますぅ」 そういうと、アリスはうるうるした瞳でこっちを見てきた。うっ、こういうのに弱いんだよなぁ・・・・・。いかんいかん、女の子を危険な目にはあわせられない。 「だめっ! 僕が戻ってきたらすぐに発進できるようにしといて、ね?」 「はいぃ・・・・・」 そういっても僕はにっこり笑うと、銃を片手に飛び乗った。 そして、振り返りざま、こういった。 「僕が打たれたら、すぐに逃げてね!!」 「っ!! そんなっ・・・」 アリスの顔を見ずに振り向くと、倒れている男に銃を向けた。 手が震えている。さっき打てなかった僕に、この引き金を引く勇気など残っているのだろうか。わからない。でもやるしかない。ヨーコを救い出さなくては。あんな子でも、やっぱり大切な幼なじみなんだ。 男のからだがぴくりと動く。 手が震え、自分の武器を取ろうとしているようだ。いけない!! 「動くなっ!!」 男の動きが止まる。自分でもこんな声がでるとは思っていなかった。とても押し殺した声。いままでの自分では出せなかったなにかだった。 呆然としてしまったのがいけなかった。僕は、こいつのほかに誰かいるだろうとは思いも寄らなかったのだ。 「・・・そのせりふ、そっくりそのままで返すぜ」 「!!」 「おっと・・・・動くなよ。銃口はしっかりおまえの方を向いている」 振り返りそうになった僕に、声が被さる。 絶対絶命、といったところか。前に倒れていた男も、頭を降りながら立ち上がった。 「手を挙げな・・・銃はポッケにしまってな」 言われたとおりにするしかない。子供だと思って、銃を取り上げられなかっただけましか。 「なぜ、この船に乗り込んだ?」 「・・・ヨーコを・・ヨーコを返せ・・・」 必死の思いで僕はこれだけ言った。そうさ、僕はこのために来たんだから。弱い自分を押さえてまで、ここまで来たのだから。 僕はしっかりと口を結んだ。意志の強さを見せるため。 しかし、男から返ってきた答えは予想外のものだった。 「ヨーコ?? そんなやつはいないぜ」 「なんだって!? 彼女がいない??」 思わず、振り返ってしまった。銃口を見てちょっと後ずさる。しかし、視線だけはそらさなかった。 「ああ、いない。ああ・・博士の娘か。あんな重要人物がここにいるわけないだろ」 そんな・・・決死の覚悟できたというのに。ここにはいない!? じゃあどこに・・・・。 ああ、もうそんなこと考えてもしょうがない。ここで殺されるだけだろう。つれていかれるほどの価値は、僕にはない・・・。 アリス・・・・。彼女だけには無事に帰ってほしい・・・・。 「ほら、船に帰りな」 「・・・へ?」 我ながら、素っ頓狂な声を出してしまった。だってそうだろ、死ぬ覚悟をしてたっていうのにさ。 「俺たちは見張りだ。賊でもないやつを殺せるか。死にたくなきゃ、さっさと行け」 「うん・・・・」 釈然としないまま、僕はアリスのいる船へと移った。 「お帰りなさい。無事でしたのね・・・あら、ヨーコさんは?」 「いなかった・・・・」 「まぁ・・・・・」 僕は、うつむくしかなかった。なんだか、訳の分からない衝動が僕の目をぬらし始めていた。 「・・とりあえず、帰りますわね」 「ああ・・・」 そういうと、アリスは元気よくアクセルを踏んだ。僕が落ち込んでるのを見かねてのことだろう。僕たちの船はがくんと動き始めた・・・・。 □ ■ □ ■ □ ワープした僕らは、リンギーのそばまで来ていた。 シュウさんの船の姿はもう見えない。 「でも・・・ヨーコさん、どこにいらっしゃるんでしょうね・・・」 「わからない・・・振り出しにもどっちまった」 わからないことだらけだ。コキアはどうしているだろう。シュウさんは大丈夫だろうか? ブラックドラゴンの砲撃を受けているのが最後だったっけ。 ああ、もう頭が鈍くしか動かない。何で、ヨーコを守ってやれないんだ、僕は。 そんなことを鬱々と考えている僕の耳に、アリスの声が飛び込んできた。 「まぁ・・・あれみてください!!」 やけに興奮している。僕はゆっくりと頭を持ち上げると、彼女の指す方を見た。 目の前に広がるものは、ブラックドラゴン。攻撃態勢から通常型に戻っている。 中央の司令室のところに腕組みして立っている男の姿が見える。さっきあった、劉ってやつだ。 「彼がどうかしたの?」 僕がぼんやりと答えると、アリスは怒った目つきでこっちを見てきた。 「違います!! もっと奥ですよ・・・ほら」 言われたとおりに目を凝らして、男の背後を見た。何かエンジンのようなものが見える。 幾重にも重なり、輝いている円。そこに法則なく走っている管。その中心には、黒い星が見えた・・・・・。 ・・・・!! 違う、あれは星なんかじゃない。人だ!! 「ヨーコ!!」 思わず叫んでしまった。目の前にあるガラスが、いまはどうしようもなく邪魔に思える。 「やっぱり・・・・」 「凄いよ、アリス。でも・・どうしてあれがヨーコだって?」 「私も昔・・まぁ、いいじゃないですか」 そういうと、アリスは暗い表情を無理に笑わせた。もう聞かない方がいいみたいだ。なんだか、とってもいやな思い出らしいから。 「ああ・・・じゃあ、あっちに向かって!!」 「それはできません」 「どうして!?」 静かに、しかしきっぱりとした表情で言ったアリスに、僕は心底疑問を投げかけた。 「あんなにそばにいるのに・・目の前にいるのに・・・・」 「落ち着いてください」 怒鳴りそうになった僕を、アリスは鎮めた。 僕は、ちょっと恥ずかしくなって口をつぐんだ。憤りは消せそうになかったが。 それを見たアリスは、静かに話し出した。 「考えてもみてください。さっきのシュウさんとの戦闘を見ても、私たちだけじゃとうてい勝てません。貴方がヨーコさんを助けたいのなら、もっと落ち着いていかないと。無駄に死んではいけないでしょう?」 「・・・・・・・」 「それに、私はあの船に行きたくないんです。すみませんけど、私はついていけません・・・・」 確かにそうだ。勝てっこない。アリスの言うことは筋が通っていて・・・・。 しかし、このいま沸き起こっている衝動だって無視できないものだ。 でも、アリスがこんなにつらそうにしているなら、いまは・・・・。 「わかった。戻って策を練ろう・・・」 「・・・はい!」 ほっとした表情で、アリスが操縦を再開する。 僕は、視線をブラックドラゴンの司令室に残したまま、その場を立ち去った。 いつかきっと助けに行く、と誓いながら・・・・・。 □ ■ □ ■ □ 「全く、こんなところであの坊やに出会うとはな・・・」 「全くだ、相棒。本部に連絡しなくては」 「ああ、わかっている」 男は、修理中の相棒にそう答えると、無線機のそばに歩み寄った。 マイクを取り上げると、ピーという音が聞こえた。 送信ボタンを押さえて、耳に構える。 「・・こちら巡視船124号。ただいまβと接触しました。・・・はい。しっかりとは確認しませんでしたがαも同情していた模様です。・・はい、はい・・・・引き続き監視を続けます」 かちゃり、と音を立ててマイクをおく。 「どうだった?」 修理をしながら男が聞く。報告をした男は肩をすくめた。 「どうもこうもない。接触したんだったら、見張れとさ」 「まったく・・ひらはつらいよな」 「まったくだ・・・・」 黒い船体はまだ動き出す気配を見せなかった。 あうぅ、、、記念すべき第20回を、こんな新入りがやって良かったのでしょうか(−−;;) しかも、なんだか短いし。小説の傾向、ってものがないし。 これで、どなたかがまた書きたいと思ってくだされば、光栄ですね。 ではでは。
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