[ このメッセージへの返事 ]
[ 返事を書く ]
[ home.html ]
投稿者:
柏木耕一(旧・日光) @ p13-dn01kuki.saitama.ocn.ne.jp on 97/8/30 16:36:32
「久しぶり、良平、ルリ。封印大戦以来かしら?」
ディスプレイに映った女性は、美しい顔に典雅な笑顔を湛えてそう言った。良平は無反応だが、ルリは僅かに眉をひそめる。それもまあ、頷けない話ではなかった。彼女の持つ超能力は先天的なものではなく、この女性−−武藤美樹という名らしい−−の手で無理矢理開発されたものだからだ。
「そして、そちらのお嬢さんは初めましてかしら?」
「……通信システムを使ってるの?」
「いいえ、AIよ。カメラアイが私というプログラムに視覚的情報を与え、マイクが音を聴覚敵情法として私に与えててくれるだけ。武藤美樹本人は……まあ、多分死んじゃったんじゃない? 知らないけど」
呑気に言い放つ美樹。美月はしかし警戒を解かなかった。良平の言葉が真実だったとすれば、この女は間違いなく全人類にとっての敵なのだ。
「いやあねえ、怖い顔しないでよ。美樹も反省してたみたいよ? だから私というプログラムを組み立てたわけだし」
「それで済まされる問題でもないがな」
良平は冷たく吐き捨てると、美樹に向かって話しかけた。
「魔王の遺産があるという話を聞いた。本当にそんなものがあるのか?」
「魔王の遺産……あーぁ、あれでしょ、対魔王プログラムでデータローバーになった魔王が、さんざっぱら溜め込んだデータ類」
「「どこにある!?」」
良平と美月の声の二重奏。後ろでルリが密かに呆れていることなど、今の二人には関係ないらしかった。
「……金になるよーなもんだってわかった瞬間、凄い意欲を見せたわねー……でもほとんどは、対魔王プログラム……“ディス・バスター”にぶん捕られちゃってるわよ」
「そいつは今どこにいる!? データの隠し場所は!」
「怖いわよ、あんた……」
美樹の頬が、AIだというのに、何故かひきつった。
「私は知らないわよ。書き換えられた後の魔王プログラムならあるから、『囓り跡』から割り出せばいいじゃない」
「感謝する」
良平は拳を一度開き、そして握りなおした。
「“電子の騎士”の力を、見せてやる」
続く
|