いつもの通学路。また退屈な学校が始まるのかと思うと、
　　少し気が抜ける。正直、学校はおもしろくない。
　　気の抜けたまま通学路を歩いていると、途中で人とぶつかってしまった。
　　鞄の中身が、全部でてしまった。何やってんだと言いかけた。
　　しかし、誤りながら鞄の中身を拾ってくれている彼女は、
　　とても綺麗な人だった。
　　授業中、俺は彼女のことが忘れられなかった。
　　休み時間、俺は彼女にもう一度会ってお礼を言うため、いいや、
　　彼女に会うため、わざとらしく校内をふらついた。
　　また彼女に会えると思うと、心が躍った。
　　しかしその日、彼女に会うことはなかった。
　　よく考えれば、俺は彼女のことを何も知らない。
　　名前はおろか、クラスだって、いや、学年だって知らないんだ。
　　その日は石を蹴りながら、とぼとぼと歩いて帰った。
　　次の日の朝、すでに俺の瞳の中に光はなかった。
　　昔から、俺はあきらめるのが早い。よく言われたっけ。
　　またつまらない学校に逆戻りだ。しかし、次の瞬間、それは打ち消された。
　　担任が転入生を紹介すると言った。女だと言うことで、
　　周りの男共は騒いでいたが、俺は転入生なんて、どうせ期待はずれだと
　　思っていた。が、その転入生というのは、昨日の彼女だった。
　　今までで一番期待に応えてくれた転入生だった。
　　彼女は自己紹介をしたあと、こっちに気付いて微笑みかけた。
　　彼女は昨日、学校に挨拶しに来ただけだったらしい。会えないはずだ。
　　彼女のこの学校で一番はじめに出会った男のレールに立って、
　　俺の恋が始まろうとしていた。
　　
　

• すっごくありがちだけど、このシチュエーションが萌え - 紫苑レイ 97/8/28 17:29:46