狂える者の剣 第六話の3『Battle with Giant』



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投稿者: 日光(柏木耕一) @ p07-dn01kuki.saitama.ocn.ne.jp on 97/8/14 07:46:51

 巨人の絶叫は、美月とルリの耳にも−−当然の話だが−−届いていた。
 −−が、それだけのことでもあったが。彼女達は彼女達で、それこそ絶叫したいような目に遭っていたのである。
「くたばれぇっ!」
 美月の力場銃も、いい加減弾切れが近い。最も、ここで言う弾切れとは、つまり力場を発生させるだけの余剰エネルギーが残っていない、ということだが。
 赤い力場弾が、地虫の頭を吹き飛ばした。しかしまだ、地虫の数は増え続けるばかりだ−−視認できる限りの範囲で、少なくとも二十匹はいる。
「くっそぉぉっ!」
 次々と力場弾を繰り出すが、下手な鉄砲は数撃っても当たりはしない。破壊の足跡は、見当違いの方向に飛んでいく。
「……いやぁっ!」
 ルリは、手から発生させた光の槍で地虫を貫いた。超高温のそれは、貫くと同時に、虫の体を融解させる。嫌な匂いが地下に漂うが、それを気にしていられるような場合ではなかった。
 右手から襲いくる虫に重力波を打ち込み、地下に潜った虫を運動エネルギーの奔流で叩き潰す。
 しかしそれでも、彼女が一匹虫を殺す間に、向こうは二匹は増殖している。きりがないどころの話ではない。死の覚悟が必要な頃合いだった。
「良、平、様……」
 小さく呟くルリ。勿論それで彼が来ることを期待したわけではない。そんなことができると思うほど、ルリは御都合主義者ではなかった。
 しかし結果として、物語は御都合主義的に運ぶ。
「<攻撃>プログラム起動……エネミー・フルデリート……<撃滅>を最優先する」
 どことなく電子的な音が響く。
「り……」
 ルリと美月の顔が、歓喜に彩られた。
 通路の奥から、一人の男が姿を現した。
 鼠色のコートに身を包んだ、長身の男−−秋山良平が。
「良平様ぁっ!」「良平っ!」
 叫ぶ二人に、地虫が襲いかかる−−が、良平の腕から放たれた黒い球体は、虫のバリアを貫通しその体にめり込むと、それを自己崩壊させた。
「……こっちは終わった。ヘルダイバー計画……いや、インフィニット計画の意味が、わかったぞ……」
 良平は、口元を歪めたような笑いを浮かべ、そう言った。

 続く