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日光と遼平 @ kuki5DU19.stm.mesh.ad.jp on 97/8/07 13:07:21
秋葉原・地下。旧日比谷線が通っていた線路は、今は廃線になって久しい。
錆びついた鉄の匂いと、どこからか漏れ出す水の音だけが、その空間唯一の音だった。
「……敵地に侵入するには、地下から−−ま、適当な選択肢ではあるわね」
「裏の裏でもかいて欲しかったか?」
ぶつぶつと文句を垂れ流している美月に、良平は振り向きすらせずに声をかけると、閉じた天井を見上げた。
雫がぽたりぽたりと落ちている。もとは複雑どころか簡単明瞭な道だったのだろうが、崩れたり埋もれたりを繰り返している内に、どう考えても迷宮としか思えない構造になったらしい。時折赤やら青やらの光が明滅したりもしていたが、実害がない限り放っておいたほうが賢いだろうと良平は思った。
「こっちです」
むっつりとしたふうに歩く二人の前を、何故か妙に楽しそうなルリが先導していた。彼女は良平と出会って以来、笑みを絶やしたことはない。少なくとも美月にはそうだと思えた。
(良平、女に興味ないと思ってたら、ロリコンだったなんてオチじゃないでしょーね……)
わたしは、6歳のときから彼の後をついて歩いてる。もう十二年も、彼の相棒として働いてる。まあ別に好きだったからとかそういうわけじゃないけど、それでも納得いかないわよ……。
心の中での呟きが聞こえたのか、それとも単なる偶然か(恐らくこちらだろうが)、良平は美月にだけ聞こえるような小声で言った。
「……俺とルリは、同じ施設で育った。言ってしまえば兄妹のようなものだ……おまえが気にしているような仲じゃない」
「誰が!」
良平は軽く顔をしかめた。踏まれた爪先を見やり、目を細める。
しかし美月はそれを無視すると、すたすたと先に進んでいった。そして自然、ルリと隣り合う。
「あれ? 道、間違えてます?」
無邪気そのものの声と顔で尋ねるルリ。美月は「ううん」とだけ答えると、彼女の隣に立って歩いていった。
史上最強のエスパー。伝説の超人。とてもそうは見えない……どこから見ても、単なる子供だ。それが、美月の率直な意見だった。ルリ自身そう思っているフシがあるのか、車の中では「わたし、童顔なんですー」と苦笑していた。
(地下に潜るには、この子の力を借りなきゃいけない……最強のエスパーの力を。でも今のところ、Eデテクターに反応も何もないし……)
Eデテクター−−超能力反応を察知する機械。これに反応するほどのエスパーの数は少ない。
(自分の超能力反応を隠す−−まさか、そんなこと……)
できるわけがない。……ただし、超人なら話は別だ。
(結局順々巡りか……)
美月は深い溜息をついた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
−−おまえが、何故ミスを犯すのだ?
−−おまえは魔王システム−−ミスなど、犯すはずが……
……マスター、私はミスに対応するための能力を身に付ける
ため、自らミスを引き起こしているのです−−
−−馬鹿な、システムに意志などあるはずが……
……そうか、それが進化か……
進化に対抗するために、進化を生み出さなければ……
−−今日からおまえが…………だ−−おまえの力が強ま
ったとき、あの進化をくい止めろ−−
我が名は……我が名はディス・P……
我は魔王なり
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