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投稿者:
日高 山色 @ um1-09.tokyo.infoPepper.or.jp on 97/7/26 23:29:35
僕は歩いた
僕は走った
僕は疲れた
僕は食べた
僕は入った
僕は寝た
僕は見た
夢を見た
浮いていた
セーラー服を着て浮いていた
「ねえ、はやくかおりんに告白しちゃいなよ」
「なにいってんだよ」
何も拘束するもののない教室、窓側の後ろから二番目の席で、上がっていく光を浴びながら、女子と男子がおしゃべりしてた
「好きなんでしょ、かおりんのこと」
「ま、まあ、そりゃ好きだけどさ、俺、そんなこと言える度胸ないよ」
「もう、それじゃあ、私が渡してあげるから、手紙書きなよ、それならできるでしょ」
「わかったよ、じゃあ今日、家で書いてくるから、明日渡してよ」
「うん、でも明日忘れたら、自分で直接言ってよね」
「忘れねえよ」
―おまえ、やめといた方がいいって、俺も同じことしてフラれたから………ま、でも人は人か、黙って続きを見てみよう―
二番目の引き出しが、開いたままの学習机に向かう、パジャマの少年
「ああ、ついに明日告白か。こんな時のために、今まで書き留めておいた、自己紹介文と出会ってからの思い出文が5枚、それに今日書き加えた、俺の愛の叫びと自作の詩が5枚、合計10枚にも渡る、俺の想いが伝わるんだな、江藤さん、いや、かおりに。でも、もしOKだったら、初デートは何処がいいかな。やっぱり映画かな、それとも動物園かな、ま、2人で行けば、何処でも楽しいか」
少年の月はまだ大きい
窓側の後ろから二番目の席に、女子が座っていた
「おはよう」
制服の男子が、声をかけ、隣に座る
「あ、おはよう」
「忘れずに持ってきたぞ」
「え、何を」
「何をっておまえ、おまえが今日持ってくれば渡してくれるって言ったんだろ」
少年は、ポケットからストローと、タバコのボックスと見間違えるほど厚みのある、
折り込まれたレポート用紙を取り出し、前者はポケットに押し込んで、後者を女子に見せた
「ほら、手紙」
「あ、そう持ってきたんだ。じゃ渡しておくから貸して」
「あ、お願いします」
賞状を渡すときと同じように、両手を手紙に添えて差し出す男子、左手で受け取る女子
「何あらたまってんのよ、でもこの厚みは何。何枚あるの」
女子の驚きを見て、自分の過剰さが恥ずかしくなり、口ごもりながら男子
「一応10枚」
「10枚。10枚って、何書いたらそんなになるの」
「いいだろ、何でも」
「見てもいい?」
「ダメ、絶対ダメだかんな、そのまま渡せよ」
「はいはい、わかりました。じゃあ部活で会った時に、渡しておくから」
「お、お願いします」
「またあー、何で急に敬語になるの」
「お願い事する時は、いくら気の置けない奴でも、丁重にいくのが礼儀ってもんだろ」
「なにが礼儀よ、田舎侍のくせして」
「何だと、おまえなんか、都会から島流しでここに来たんだろ、それよりはましだよ」
「島流しじゃないよー、父さんが、ここに家買ったから引っ越してきただけー、あんたなんか、この島の生まれじゃない、そんな奴よりはましよ」
「へーん、残念でした。ここは島じゃないですー、周りは山と田んぼに囲まれてますー」
「あんたが島だって言ったんじゃない」
「俺のはたとえ、おまえのは本気、陸つづきのここを、島だなんていってる奴と、一緒にされたかないね」
「なによ、ここ陸の孤島じゃない。それに、ピーナッツしかないじゃない」
「おまえ、バカにしたな、原住民怒らすと恐いよ、家の中、落花生の殻で埋め尽くされるよ」
「なにそれ、バッカじゃない」
「ああ俺はバカさ、バカで結構。カバよりはましだから」
「私がカバだっていうの」
「そりゃそうだろ、いっつも授業中でっかい口開けてるもん」
「もー、そんな事ばっか言ってると、手紙渡してあげないよ」
「え、すみません、お嬢さま、ワタクシが悪うございました」
「わかればいいのじゃ、わかれば。爺、肩がこったのー」
突然足を机の上にのせて、偉そうな態度を取る女子
「爺?俺のこと?おまえ、調子に乗んなよ」
「手紙はよいのか?」
“タバコのボックス”を男子の眼前につきつける女子
「は、お嬢さま、この爺、喜んで肩をもまさせていただきます」
男子は立ち上がると女子の後ろの席の机に腰掛けて、肩をきつくもみ始めた
「よかよか、うむ、もう少し肩甲骨の近くをたのむぞ」
「はいはい」
「返事は一回でよいのだぞ」
「はあーいー、ばあーぶー、ちゃあーん」
「何?イクラちゃん?じゃ私たい子さん?」
―もーいいよ、こいつらの漫才は、次いこ次―
音楽室の片隅で、コントラバスの練習をする女の子。夕日を浴びて、赤く染まるはずの彼女が、なぜか青白く輝いた。
(あ、あれ?さっきまで僕、浮いていたよな、なんでこんなところにいるの?あ、なんか体が女になってる。それにこのどデカいバイオリンは何?僕の体が縮んでるの?……でも、ここは何処なんだろう。なんで女になってんだろう。なんでこんなもの持ってんだろう。ねえ、誰か教えて)
―普通ならば「ここは夢の中だ」と自分に言いきかせる。しかし、夢の中で夢を自覚することは難しい。しかも、この男のように冷静に状況を考えることは、ほぼ不可能と言える。つまり、この男は確かに起きているのだ。そして自分が起きているということを瞬間的に肌で感じたのだ。―
「かおりん」
“窓側の後ろから2番目”の女子が、女の子に話しかけてきた。けれども女の子は反応せずに、心の中でこの状況の推測をしていた。
(あ、そういえばこのあいだ、こんなのテレビで見たな。えっと、幽体離脱して、異世界の別の人間に“転神”したっていう男の話。なんか、その人の話に似てるんだよな。僕も、この女の子に転神したってことかな?)
―“転神”聞きなれない言葉だ。だが、この男の話しから考えると、こちらの世界で言う“降臨”という言葉とほぼ同じだと思える。また、この文字から考えると、精“神”が“転”ずると言う意味だとも思える。―
「かおりんってば」
そう言って女子は、女の子の左肩をポンとたたいた。
「え、何?」
女の子は、不思議そうに振り向いた。
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第二回掲載予定日:7月28日(日曜日)
以降掲載予定日未定
作者の独り言:みなさんはじめまして。ではないんですね実は、本当はほかの名前で投稿しているんですけどこの作品に限ってはこの名前で行かせていただきます。なんで名前を変えたかというとこの作品の主人公(?)の名前が普段使ってるハンドルネームと同じなんでそれで混同するとまずいかなと思って名前かえました。次回で分かると思います。次回でなくてもこの名前アナグラム(文字を並び替えるやつ)になってるんでわかると思います。
ではここで問題です。私は誰でしょう?答えが分かった人はレスください正解は次回の小説を読んでください
それと感想もお待ちしてます。
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